87話 第1王子様の凶行・・
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リュートへ斬りかかるブレイドの行動に、ルカが叫びレナは帯剣している片手剣を握り1歩前に踏み出すと、リュートは右手を2人に向けて制止させた。
「リュート様!」
「主様!!」
反射的に足を止めたレナは、3歩目で踏み止まりリュートを注視すると僅かに頷いたことに気付き耐える。レナが止まったことに安堵したリュートはブレイズへと視線を戻し、右手をアイテムボックスへと忍ばせる。
左手で持つ木剣を構えつつ右手で愛剣である片手剣を掴み取り出そうとしたところで、相手は国の王子だったことを思い出しこのまま斬り倒すと罪人扱いになると気付いたリュートは掴んでいた愛剣を手放し木剣で対応する。
ガッ!!
鈍い音が響き渡り、木剣を振り抜いたリュートはギリギリのタミングでブレイドの両手剣を左へと弾き飛ばす。
「くぅ・・動きは雑でも正確だね・・でも反応はギリギリ。これなら・・・・」
余裕の笑みを見せるブレイドは、僅かに痺れている両手を悟られないようゆっくりと体を動かしリュートに正対し構えた。
「ブレイド第1王子様、ここまでにしませんか?今なら互いに怪我をせずに済みます」
「リュート君、行商人のくせに冷静だね・・怖くないのかい?剣を向けられても・・」
「・・・・これでも、元冒険者ですから。対人戦闘は慣れています」
「元冒険者だって!?」
ブレイドは、思わぬ経験者と知り動揺が隠せないでいる。
「はい・・」
「ランクは?」
「・・・・Fランクです」
「Fランク!?・・なんだ、駆け出し冒険者じゃないか・・驚かせないでくれよ」
ブレイドはリュートが元Fランク冒険者だと知ると、落ち着きを取り戻したようだ。
「なら、さっさと続けて終わりにしようリュート君!」
ブレイズは自信を取り戻したのか、初撃より速く踏み込んでリュートに襲い掛かる。
ザッ!
地を強く蹴り、一直線に飛び込んで来るブレイドの上段斬りを見切り半歩右後ろに後退したリュートの僅か手前を切っ先が空を斬り、ブレイドはリュートに大きな隙をみせる。
「剣が素直過ぎますね・・」
リュートは小さく呟きながら躱して、反撃はせずブレイドの斬撃から避けることに専念する。
「クソッ!なんで当たらない・・なんで反撃しない?」
思い通りの結果にならないブレイドの額から汗が流れ落ち、右目の視界を奪われ一瞬動きが止まった・・。
「終わりです、ブレイド王子様」
リュートは一瞬の隙をついて、木剣をブレイドの喉元に突きつけ軽く圧する。
「グゥ・・」
完敗したブレイドは、持っていた両手剣を地面へと落とし負けを認めた仕草を見せると、リュートは喉元に突き付けていた木剣を離して視線をルカ達に向ける。
「バカめ!・・ファイヤ!」
気を抜いてしまっていたリュートは、まさかブレイド王子が山賊のような卑怯な事をすると思っていなかったため、不意打ちを受けてしまう。
「がぁっ!」
ブレイドは、リュートの鳩尾から左肩へと火魔法ファイヤーショットを放ち、リュートの身体に火弾が直撃し爆散しその風圧でブレイド自身も後方へ転がる。
「・・あっちぃ〜!やっぱ火魔法は近接戦闘に向いて無いな・・」
そう呟くブレイドは、シャツを燃やし上半身を黒く焦がし倒れているリュートに視線を向けて呟いていると、リーヴス達が倒れ動かないリュートの元へと駆け出す光景に苛立ちを覚えていた。
「クソッ・・勝ったのは僕だぞ・・」
上半身を黒く焼けたリュートを見たリーヴスは、離れたところで座り込み視線を向けている第1王子の姿に舌打ちをして治癒士達がいる騎士団の医療班へと全力で駆け出す。
「リュート様!」
ルカは涙ながらにリュートを抱き抱え、治癒魔法ハイヒールで炭化したリュートの上半身を懸命に治癒させている横で、レナは右手を強く握り締め睨みつけるようにブレイドに視線を向けていた。
ミウは、容姿端麗な第1王子ブレイドに心を奪われそうになっていたものの、目の前でリュートを卑怯な手口で傷つけたことでそんな想いは吹き飛びレナの横で同じくブレイドを睨みつけている。
そんな2人の反抗的な態度を見たブレイドは、ゆっくりと立ち上がりレナとミウへと歩み寄る。
「・・なんだい?そんな反抗的な瞳は?僕は、この国の第1王子であり王都高等部学園で最強の人間なんだぞ?」
「・・・・その力で、学園最強?・・・・最弱の間違いでは?」
「なんだと?・・僕が最弱?行商人の使用人が舐めた口を聞くんじゃない」
レナとミウそしてブレイドの対立する構図が出来上がった頃に、鍛錬場にリーヴスと治癒士らしき白服の女性2人がリュートの元へと駆け寄って行く。
「リュート殿!治癒士が来ましたので治療を・・・・」
「リーヴスさん、リュート様の傷は完治していますが・・どこかゆっくりと休める場所を貸していただけないでしょうか?」
「えっ?か、完治?・・なんと・・あの傷が無い・・」
「あの、近衛兵長・・」
白服の青髪の女性が近衛兵長リーヴスに問いかける。
「・・あ、治癒士長殿なんでしょう?」
「少年を、とりあえず休養所のベッドへと運びませんか?」
「そうですな、申し訳ないがよろしく頼む」
「はい・・」
リュートは、ルカに背負われて休養所へと運ばれて行くのをリーヴスは見送り、レナ達と対峙する第1王子ブレイドへと近付いた。
「ブレイド様、民を無用に傷つけるのは王族としてどうかと思います」
「・・何が言いたい?」
「この件につきましては、陛下に報告させていただきます」
「・・・・勝手にしろ」
ブレイドは踵を返し逃げるように立ち去ると、レナ達が逃げるなと大声で発するものの反応することなく鍛錬場から姿を消した。
「お二人も、休養所へ案内します」
どこにもぶつけることができない感情を目の前に立つ近衛兵長リーブスを睨みつけると、2人の殺気にリーブスの足は小刻みに震えた。
(こ、この娘2人と敵対してはならない・・)
そう思いながら、覚束ない足取りで休養所へと2人を連れて行ったのだった・・。




