57話 営業再開の前に・・・・
アクセスありがとうございます。
リュートは目覚めと共に倦怠感に包まれていた・・。
(なんで寝起きから身体が怠いんだよ・・)
そう思いながら目を開け天井を見つめるリュートの視界の隅に何かが見える。
「ん?・・」
薄緑色と青紫色の髪がぼやけて見え僅かに頭を浮かせ胸元に視線を向けると、ルカとレナの寝顔があった。
「おぅ・・」
小さく呟いたリュートは、ルカとレナへと自身の魔力が僅かに流れている魔力を制御して止めると、2人がピクッと動きほぼ同時に目を開けて顔を上げる。
「起きたのですね、リュート様」
「おはよう、主様」
「おはよ。ルカ、レナ・・」
寝てる間にされた彼女らの一方的な魔力譲渡に小言を言おうとしたリュートだったが、ルカとレナの笑顔を見てその気持ちも消え失せてしまい、小さく溜息をついた。
今は3人部屋に4人が宿主の好意で寝泊りをしているため、ルカとレナが1人分足りないベッドを補うため2人で1台のベッドを共有していたが、リュート回復したことが嬉しいレナが先に潜り込んだ後にルカも我慢できず遅れて潜り込んでいたようだ。
目覚めた3人は、まだ夜が明けたばかりの時間帯だったためリュートが2人に静かに過ごすことを伝えミウが起きるまで待った。
そうして、窓から差し込む光が部屋に十分入ってきた頃にミウがモゾモゾと動き出し起きたため、3人も動き出し支度を済ませてから4人で部屋を出てやる気の無い宿主と会話を交わし、朝食をゆっくりと食べ終えた後に宿を出た。
「・・あそこの場所で店を開くのは、なんか嫌だから門前広場へ行くよ」
リュートは、ミーシャと出会った場所で店を開くのを避けたいためで、客数が少ない門前広場へ行くことにしたのだ。
宿屋を出て、しばらく大通りを歩くリュートにルカが声をかける。
「あの、リュート様」
「どうした?ルカ」
「じつは・・ですね。リュート様が目覚めるまでの期間の宿代が未払いでして・・」
「未払い?・・マジか・・」
「はい。リュート様のアイテムボックスに私とレナは、収納されている金銭を取ることは可能ですが、無断で取る訳にもいかず・・」
ルカは、申し訳なさそうに下を向いて歩く。
「ごめんな・・それなら、店を開く前にギルドに行って金を確保して未払金を払うことを優先しなきゃな」
門前広場へと向かっていたリュート達は、商人ギルドがある通りへと歩いてきた通りを戻りギルドへと向かったのだった。
「ポーションの買い取りお願いします」
前回の過ちを繰り返さないよう、リュートは納品窓口の男ギルド職員に声をかけた。
「あなたは、たしか・・・・数が多ければ、あちらのテーブルに置いてください」
「はい・・」
窓口からみぎへと少し離れた場所には大きな作業台のようなテーブルが置いてあった。ギルド職員は、リュートにそこに置くようにと伝えると席から立ち事務所の奥へと消えて行く。
リュートは、作業台へと移動しアイテムボックスからHPポーションを取り出しテーブルに置くとレナとミウが隅の方へ移動させ手際良く並べていく姿を、レナは背後から眺め2人の手際の良さに自分が入る余地は無く焦っていると、リュートがレナを見た。
「レナ、レナも俺のアイテムボックスに触れるから、MPポーションを出してくれる?」
「い、いいんですか?主様・・」
「もちろんだよ、レナ」
「ありがとうございます!」
1人だけ何もできないままでいたレナに笑顔が戻り、リュートの隣りに立ってMPポーションをテーブルへと並べ始めると、ルカとミウがHPとMPポーション瓶に作業を分担し並べていったのだった・・。
「あの・・本日は何本になるのですか?」
事務所の奥へと姿を消した男ギルド職員が5人の職員を連れてリュートの背後に立っている。
「あぁ、今日は300本ずつの600本でお願いします」
「「「「「「 えぇーーーーーー!!!!!! 」」」」」」
ギルド内に男女職員の悲鳴が響き渡り、今夜は残業だとか朝までに帰れないなどの嘆きの声が続いていた。
「とりあえず、今日の昼までにお金が欲しいから」
「・・・・わかりました。ですが、1つご相談が・・」
「俺に相談?」
「はい、昼までの査定は不可能です・・それで仮の査定を最低価格で先に支払いまして、残りの差額分は後日支払うという形でいかがでしょう?」
「う〜ん、そうだね・・ルカ?宿代はいくら?」
「はい、リュート様。金貨14枚です」
「14枚か・・ちなみに、最低査定価格はいくらなの?」
「はい、今日の相場であれば、中級品質のHPポーションが1本で銀貨2枚でMPポーションは銀貨5枚です」
男ギルド職員は、相場表をリュートに見せながら伝える。
「ホントだ・・ならHPポーションは、金貨60枚でMPポーションは金貨150枚ぐらいか」
「そうですね。どうされますか?」
「路銀も少なくなっていたし、その値段でお願いします」
「ありがとうございます。全額受け取りでよろしいですか?」
「ん〜金貨100枚でもいいですか?」
「はい。残りはギルド口座で管理させていただきます」
男職員は、1人で事務所へと戻り再びリュートの元へ戻って来た時には、麻袋を2つと紙を持っていた。
「この麻袋に金貨50枚ずつあります。それと、買い取りの証明書です。差額の支払いまでは必ず持っていてくださいね」
「わかりました」
リュートは麻袋をアイテムボックスへ収納し、書類の内容を確認してから収納すると男冒険者が引き続き話しをする。
「あの、空間魔法をお持ちのリュート様に依頼したい件がありまして」
「俺に?それってギルドの指名依頼ってやつですか?」
「はい。結果的には指名依頼扱いとなります」
「・・依頼内容は?」
「はい、とある貴族様の貴重品を他の街へと輸送する依頼です」
「とある貴族?」
「まだ契約前の話なので依頼人様のことを教えることはできませんが、今の屋敷にある大量の荷物を嫁ぎ先へと運ぶのですが、大勢を連れて行きたくないとの要望がありまして」
「さすが自己中思考の貴族様ですね・・護衛がつけば同じでは?」
「はい。空間魔法を持っている商人と契約しても、道中の安全を確保するため大勢の護衛する冒険者を雇えば同じことです」
「ですよね?・・でも、どうしてこの話しを俺に?」
「はい、ランオン学園の討伐祭に学園生の護衛として参加しているのをギルド長が見ていたからなのです」
「ギ、ギルド長が?」
「はい・・」
「そうですか・・・・報酬は?」
「報酬については、金貨10枚となります。それと別途追加報酬も用意してあるとのことです」
「・・・・あの、依頼主の貴族は俺達のことを知っているのですか?」
「ギルドを通しているので、まだ誰が受理するかも知らない状況です」
「少し考えさせてください」
「わかりました。私は、鑑定作業に行きますのでギルドを出る際には声をかけてください」
「はい」
リュートは男職員が去った後にルカ達に相談する。
「リュート様、この街を出るいい機会だと思います」
「リュートさん、私もルカさんと同じです」
「主様の危険は、私が排除します!」
3人の意思にリュートの気持ちは決まったようで、作業台でポーションの鑑定作業をしている男ギルド職員に近寄り声をかける。
「あの・・さっきの話しなんですけど」
「はい・・どうでしょうか?」
「依頼受理でお願いします」
「そうですか、ありがとうございます。それでは、ギルド長室へご案内しますね」
「え?・・今からですか?」
「はい」
男ギルド職員は笑顔で頷いて、鑑定作業を止めてリュート達を商人ギルド長室へと連れて行くのだった・・・・。




