115話 貴族令嬢ミーシャの凶行3
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「ミウ!」
リュートに声をかけられたミウは、思わず視線をリュートに向けてしまい対峙していたミーシャに隙を見せてしまい細剣を喉元に突き刺され・・。
ガキィン!
衝突する金属音と共にミーシャの細剣は、ミーシャの桃色の髪をわずかに切り落とすだけでミウの命は助かった・
細剣をミウへ刺突した姿勢のミーシャの横顔にリュートは叫ぶ。
「ミーシャ!」
目の前でミウを失いそうになったリュートは、細剣を弾き飛ばした片手剣を手放し右手の拳を強く握りしめミーシャの頬を全力で殴り飛ばす。
ガゴッ・・
鈍い音と共に吐血しながらミーシャは吹き飛び表通りに数度バウンドしながら転がり止まる前に追いかけていたリュートは無防備なミーシャの腹部を蹴り飛ばし宙に浮いたところで、もう一度彼女の顔を殴り地面へと叩き付けた。
「ごふぅ・・」
激しく吐血しながらもミーシャは全身を震わせながら四つん這いとなっている姿を見たリュートは踵を返しミウのもとへと急ぐ。
「ミウ!」
「・・リュートさん」
「動けるか?」
「私は平気です。でも、ミヤちゃんが・・」
ミウの言葉に気配探知スキルにミヤの反応が無かったことを思い出す。
「ミヤはどこに?」
「あそこです・・そこにカナちゃんもいます」
「わかった・・」
いまだに動けずにいるミーシャを横目にリュートは裏路地へと急ぐと、座り込むカナの隣でミヤが力なく倒れている姿を見て思わず足が止まった。
「・・ウソ・・だろ?」
駆け付けたリュートに気付いたカナは、涙を流しながらリュートを見上げ呟く。
「んぐぅ・・リュート兄様・・ミヤちゃんが・・ミヤちゃんが起きないのです」
「カナ・・」
泣きじゃくるカナを膝をついて抱き締めたリュートは、動かないミヤに顔を近づけ頭に触れるとヌメっとした感触を感じた指先を思わず見た。
「怪我しているのかミヤ?」
ミヤを抱き起こしたリュートは、彼女の首筋あたりから背中へと流血していることに気付きアイテムボックスからHP回復ポーションを取り出して頭からふりかける。
ミヤに振り掛けられたポーションは後頭部の傷を治しながら血で汚れた銀髪を元の輝きへと戻し綺麗になっていくもののミヤは目覚めなかった。
「カナ、ミウと家に戻ってミヤをルカに診てもらって」
「はいです・・でも、リュート兄様は??」
「俺は、ミヤとカナを傷つけた本人と話しをつけてくる」
「・・はいです」
「良い子だ」
リュートはミヤを抱き抱えミウに預けて2人を家に帰るのを見送ってから、まだ動けないでいるミーシャに音も無く近寄った。
「無理に動こないほうが身の為ですよ、ミーシャ様・・」
「ゴホッ・・っふざけないで・・貴族の私に手を出すなんて愚かだわ・・」
「あの・・今の貴方様の立場を理解していますか?狩られる側にいるんですよ?」
「・・・・殺すの?・・あの時みたいに?」
「・・ガイアス」
リュートは、レナは命乞いをするガイアスの首筋に剣を沿わせ、ミーシャが止めようとする中で躊躇うことなくガイアスの首を斬り落とした光景を思い出す。
ズザァッ!
「ならば死ねばいい・・」
着地音と共にミーシャへと片手剣を首筋に食い込ませるレナが突然姿を現したことに、リュートとミーシャは遅れて気付く。
「ひっ・・」
目の前に現れた死神の冷え切った刃を首筋に当てられたミーシャは、自らの死期を肌で感じ言葉にならない悲鳴を漏らし僅かに震えたことで切り傷を首筋に作り今まで作り上げていた強さの虚像が崩壊して涙を流す。
「レナ・・」
「主様、遅くなり申し訳ございません・・帰ってきたミウとカナから、全てを聞きました。今すぐにでもこの女のに死を・・・」
「うっぅぅ・・」
ミーシャの視線は、レナの持つ片手剣へと凝視している。
「女・・この剣は、ガイアスという男の首を斬り落とした剣と同じだ・・首筋に触れている刀身がちょうどあの男の首を切り捨てたところと同じ・・わかるな?この意味を・・」
レナの冷淡な言葉にミーシャの震えは大きくなり首筋から赤い血が垂れて服に滲んでいく。
「ミーシャ様、このまま死を選んでくれますか?」
「ぃぁ・・・・ぁぃ」
ミーシャは貴族のプライドを捨てて命乞いをする。
「女、貴様に選択肢は無い・・」
レナはグッと片手剣の刀身を押し込む。
「んぐぅ・・・・ぅぃ」
「レナ、剣を離して・・」
「・・はい、主様」
ミーシャの首筋に押し当てていた片手剣を離し、レナはリュートの隣りに立つ。
「ミーシャ様、ここで貴方様の命を奪うのは簡単です。ですが、それではもったいないと俺は思います。ですから、取り引きをしませんか?」
「はぁ・・はぁ・・私と取り引き?」
「はい、取り引きです・・」
リュートはミヤとカナを傷つけたミーシャへの復讐心を押さえ付けながら笑顔を見せる。
「と、取引って何を・・もしかして、私のカラダを・・」
「いえ、貴方様のカラダに微塵も興味がありませんが、ただ・・」
「ただ?・・ただ何よ?」
「ミーシャ様の生殺与奪権を私が握ります」
「・・それって、わたしを奴隷にするってこと?」
「奴隷堕ちにはしません。色々と面倒なので・・ですから、今まで通り生きてください。そして、私の商店の資金を無償で定期的に提供してくれれば良いのです」
「なっ・・」
「貴族令嬢の貴方なら可能ですよね?毎月金貨200枚を永遠にで良いですから」
「永遠に金貨200枚を毎月?」
「そうです。貴方様の将来生まれてくる子供達や孫達・・そしてその先の末裔に引き継がせてください」
「む、無理よ・・そんなことできるわけないわ」
「そうですか・・残念です、交渉決裂になるとは・・・・」
「えっ?交渉決裂?」
「はい・・レナ、ミーシャ様の肺に小さな穴を・・」
「はっ!」
レナは持っていた片手剣を鞘に収め、自身の右手を細剣へと変化させた。
「な、何よそれ・・」
「女、チクリと一瞬痛むだけ・・」
ズプッ・・
ミーシャの右胸に細長く鋭いモノで突いたレナは、細剣に変えた右手を元の形に戻す。
「いっ・・何をしたのよ!」
「ミーシャ様、そんな大声を出して息を吐くと苦しくなりますよ?」
「何を言って・・クフッ・・すえ・・吸えない・・苦しい・・どうじで?」
「レナにミーシャ様の身体の一部に穴を開けました。呼吸がうまくできず、苦しみながらゆっくり時間をかけて死にます。私だったら、素直に首を斬り落とされる方を選びますよ。それぐらいの苦しみが今からミーシャ様を襲います」
ミーシャは目を見開きながら涙を流し、呼吸を懸命にしようと大きく開けた口からは涎を垂らしもがき苦しみ始める。
「主様・・女の最期を見届けない方が良いかと・・」
「レナ、これは俺の責任でもある・・だから、彼女の最期を見届けるよ」
「ならば、私もお傍に・・」
「ありがとう、レナ・・」
少しづつ動きが鈍くなるミーシャが動かなくなっていくのを見届ける2人に、夜の街からミーシャを呼び声が聞こえた。
「主様・・」
「あの声は、リックスだな」
「どうされますか?」
「ん〜俺は、もう彼女を蘇生できるチカラを持って無いしな・・死んでからアイテムボックスに収納するしかないか・・」
足元で命の灯火が消えようとしているミーシャを見ながらレナと話しをしている2人の背後に声がするリックスより先にルカが姿を見せる。
「リュート様!・・ってやはりミーシャさんだったんですね」
「ルカ・・」
「リュート様、今ならまだ間に合います!」
「ルカお姉様、これは主様が決断したことです」
「リュート様!」
ガシッ
足元で動かなくつつあったミーシャがリュートの足を掴み、輝きを失っている瞳で見上げ口を動かしていた。
「ん?なんて言ったの?」
「・・ぇ・・ぁぅ・・」
「ルカ、頼んだ」
「はい、リュート様。エクストラ・ハイヒール!」
ほぼ死にかけていたミーシャは最後の力を振り絞り生き延びるためにリュートとの契約を誓い、ルカの治癒魔法エクストラ・ハイヒールで瞬時に全回復し全ての苦痛から解放され、そのまま意識を手放した。
「主様?」
「大丈夫・・気を失っているだけだから」
「リュート様・・」
「気にしなくて良い・・彼女を生かすことで、俺たちにメリットはあるから」
「「 はい 」」
それからミーシャを探すリックスに気絶しているミーシャを預け別れた後に、リュートは家に帰るとベッドで横になるミヤの横に座る。
「リュート兄様・・」
「カナ、最初にミヤの異変に気づいてくれてありがとうな。これからは、自分たちを傷付けようとする奴らには容赦無く反撃して良いから。その後のことは、俺がなんとかするよ」
「リュート兄様ぁ・・」
泣きじゃくるカナはリュートに抱き付いたまま疲れたのか休止状態へと移行し眠りについた。あとからルカに聞いた話しでは、ミーシャに痛みつけられていたミヤは、途中から自ら活動休止状態へ移行し魔力の損失を少なくしたため、双子のカナはミヤの異変にすぐ気付くことができなかったと・・・・。
「幼いながらも、精神はもう大人なのか?・・まるちどぉーるってのは、謎ばかりだよ・・まったく」
眠るカナをミヤの隣りに寝かせたリュートは、一晩2人と同じベッドで眠ることにしたのだった・・・・。




