表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫男は俺様アイドル  作者: 陽芽子
PR
1/24

家が火事になりまして




“ドォーーーン!!!!”




なななな何事?!?!




突然の爆音で、寝ていた私は一気に目が覚めた。




“バリーーーン!!!!”




何かが割れる、すさまじい破壊音。




「火事だぁ~~~!!!!」




その後に聞こえたのは、慌てふためくお父さんの声。




火事って??


どこが火事なの??




疑問に思うのも束の間。




焦げた臭いが、私の鼻を通り抜けた。




火事って……


もしかして……


私ん家?!?!




“ゴゴゴゴゴ……”




気付いた瞬間、家自体が傾いていくのが分かった。




「やっ……やだっ!!!!

お父さぁ~んっ!!!!

お母さぁ~んっ!!!!」




必死に呼ぶ私の声も虚しく、無駄に響く。




「莉子ぉーーー!!!!」




「どこにいるの?!?!」




お父さんに続き、お母さんも必死に私を呼んでいる。




気付けば私は、数センチしか開かないドアの隙間から、身をよじらせて廊下へと出ていた。




「ここっ!!!!

私はここだよっ!!!!」




よろける足で階段を下りると、玄関にいた両親と鉢合わせる。




「良かった!!」




「早く逃げるわよ!!」




靴も履かず、私たち家族3人は、玄関の外へ。




“ウーーー!!!!”


“カンカンカンカン!!”




駆け付けた消防車から、次々と消防隊が出てくるのを、ただ立ち尽くして見ていた。




ボォーッと家を眺める。




お母さんによって綺麗に手入れされた庭は、ただの荒れ地に。


お父さんが30年ローンで買った、真っ白の外観が特徴の家は、最早ただの炭となってしまった。




「俺の…マイホームが…」




ガックリと、肩を落とすお父さん。




「これからどうしたら…」




そんなお父さんの隣で、同じようにお母さんも肩を落としている。




「………。」




私にいたっては、言葉を失う程のショック。




「危ないから下がって!!」




消防隊のそんな声を聞きながら、私たちは燃え盛る家をただ見つめて一夜を明かした。
























◇◆翌日◆◇




「取りあえず、ホテルを借りよう。」




お父さんの提案でホテルへ身を移す事に。




「貯金もあるし、当分は大丈夫だと思うけど…」




お母さんが眉を下げながら言うと、次に力無く声を発したのはお父さん。




「莉子。暫く学校を休みなさい。

静岡のおばあちゃんの所へ行くんだ。」




「えぇっ?!?!」




学校も行けない上に…


静岡のおばあちゃんの所って……




「ごめんね、莉子。

そうするしかないの。」




私を心配したお母さんの申し訳なさそうな顔を見ると、もう何も言えなくなる。




でも……


これだけはハッキリさせておきたい。




「私……転校するの??」




問い掛けると、お父さんが弱々しく笑う。




「なるべく……そうならないように、お父さん達も頑張るから。」




そう言ってくれたものの、いつもよりお父さんの背中が小さく見える。


それを目に映すと、とても不安になる私だった。
























───……




「大変だったね。

ゆっくりするといいよ。」




静岡へとやって来た私は、優しいおばあちゃんに迎えられた。




「おばあちゃん……

…ありがとう。」




初孫の私を、とても可愛がってくれるおばあちゃん。


そんなおばあちゃんが、私は大好きだ。


大好き……


大好きなんだけど……




「おやおや。どうしたんだい??

悲しいのかい??」




私の涙に気付いたおばあちゃんが、顔を覗き込む。




「こんな風に……

おばあちゃんと再会すると思ってなかったから…」




お正月、お盆休み。


いつも来ていて癒やされるはずのおばあちゃんの家が、不安で押し潰されそうな今の私にとっては、何となく居辛い…。




そんな時……




「莉子ちゃん!!!!

会いたかったわよぉ~!!

アタシの可愛い姪っ子♪」




強烈な勢いで、私の背中にダイブしてきたのは……




「玲子叔母さん?!?!」




お母さんの妹の、玲子叔母さんだった。





「やぁね。“叔母さん”はやめてちょうだいよ。

“玲子ちゃん”って呼んでって、いつも言ってるでしょ。」




口を尖らせて言いながら、私の髪の毛をクシャリと掻き混ぜる。




「あ…ごめんなさい。

会うのは何年ぶりかだし、“玲子ちゃん”は失礼かと思って…」




曖昧な笑みを浮かべながら、私は言葉を返した。




「莉子ちゃんとは姉妹のような関係でいたいのよ。

それに、アタシはまだ、“叔母さん”なんて歳じゃないわよ。」




え……??


確か、38歳なんじゃ…??




「あははは……」




乾いた笑い声を出して、玲子叔母さん……もとい、玲子ちゃんを見る。




「ねぇ、莉子ちゃん??」




玲子ちゃんは、ズイッと私に顔を近付けると、なぜか疑問形で私の名前を呼んだ。




「はい??」




ビックリして目を見張りながらも返事をした私。




「家も火事でなくなっちゃったし、住み込みのアルバイトやらない??」




住み込みのアルバイト??





キョトンとしていると、玲子ちゃんは言葉を続ける。




「ちょっとねぇ……

人手が足りないというか、何というか…

困ってるのよ。」




最後の言葉は、苦笑して言った玲子ちゃん。




「玲子。莉子を変な事に巻き込むんじゃないよ。」




見ていたおばあちゃんが、私と玲子ちゃんの間に入る。




「失礼ね!!アタシの仕事を変な事って言わないでよ!!」




そう言って、おばあちゃんを“キッ”と睨んだ玲子ちゃん。




…玲子ちゃんの仕事を、手伝うって事なのかな??


それより、玲子ちゃんの仕事って何なんだろう。




「あの……玲子ちゃんの仕事って……」




「てなワケで、莉子ちゃんはウチで預かるから!!」




私の言葉を遮って、質問さえもさせてもらえないまま、玲子ちゃんに手を引かれる。




「コレ!!玲子!!!!」




おばあちゃんが引き止めるのもお構い無く……




「姉さんには、アタシが連絡しとくから~♪」




明るい声で、玲子ちゃんはおばあちゃんに手を振った。





“バタンッ……”




玲子ちゃんが乗って来た車に、有無を言わさず乗せられる。




「玲子……ちゃん??」




助手席に座る私に、玲子ちゃんは終始笑顔。




「走りながら説明するわね♪」




その笑顔に、ゾクリとしてしまった私は、この後聞かされる衝撃の真実を、予知していたのかもしれない……。




“ブォン……”




車が、砂利道を走り出した。




「………。」




黙ったまま、玲子ちゃんの様子を窺うものの、当の本人は笑顔のまま。




「莉子ちゃんと一緒に仕事ができるなんて、夢みたいだわ♪」




えっと……


私はさっきから、その仕事とやらが気になってるんですが…。




「玲子ちゃん。」




「~~♪~♪~~♪」




呼び掛けても、玲子ちゃんは、鼻歌を歌い続けている。




……説明するって言ったじゃん。




私の困惑とは反対方向に、どんどん車は進んで行くのだった。




















―――暫くして……




「着いたわよ。」




玲子ちゃんに言われ、私は一軒のビルの前に降り立った。




「…ここが……玲子ちゃんが仕事してる場所??」




「そうよ♪」




玲子ちゃんは“バチン”と音が鳴るくらいのウインクを、私に向ける。




東京のど真ん中。


それ程大きいとは言えないが、立派なビルだ。




「……私…中に入ってもいいの??」




緊張感たっぷりで玲子ちゃんに言うと、明るい声が返ってくる。




「もちろんよ♪

莉子ちゃんは、今日からここで働くんだから♪」




ん……??


今日……から??




疑問を抱きながら、玲子ちゃんに続いて中に入ると……




「お帰りなさい、社長。」




「お帰りなさいませ。」




「社長!!お帰りなさい!!」




このビルの社員であろう人たちが、次々に玲子ちゃんに向かって頭を下げる。




それも……


“社長”って言ってるし。




……って…




「……玲子ちゃん、社長なの?!?!」




当たり前だが、何も知らなかった私は、驚きの声を上げた。




「まぁね。アタシがこのビルの経営者。」




一つの部屋の前に立つと、玲子ちゃんがその扉を開け、私を中に入るようにと促す。




「失礼しま……」




最後の“す”がいえず、私はそこで固まった。




「遅せぇんだよ。」




上等なソファーに座る、一人の青年に目を奪われる。




「コラ流星!!!!

お客様が来てるのよ!!

挨拶くらいしたらどうなの!!」




機嫌悪そうにして、顔をしかめる青年に向かって、玲子ちゃんが一喝した。




「はぁ??」




青年は、反抗的に言って、足を組み替えている。




「莉子ちゃん、ごめんなさい。

コイツ、沖田(オキタ) 流星(リュウセイ)っていうの。」




沖田 流星……。




「知ってる!!!!

テレビで見た事ある!!」




ドラマや雑誌……


CMでも引っ張りだこ。


彼を見ない日なんて一日たりともないほどだ…。





……で??


なんで??


…何で沖田 流星がここに居るの??




ますます疑問が生じる私の頭は、パニックを起こしかけている。




「ここだけの話なんだけどね……」




玲子ちゃんはそう言って、私に耳打ちするように、耳元へ口を寄せた。




「え??」




“ここだけの話”と聞いた私は、尚更緊張してしまう。




「この馬鹿アイドルがね、ワガママ過ぎて、誰もマネージャーに付きたがらないの。」




言い終えた玲子ちゃんの言葉の後……




「…オイ。全部聞こえてんぞ。

誰が馬鹿アイドルだ。」




沖田 流星を見ると、先程よりも不機嫌さが顔から滲み出ていた。




「あら、本当の事でしょ。」




玲子ちゃんは何食わぬ顔で彼にそう言うと、再び私に向き直り、話を続行する。




「…莉子ちゃん、流星のマネージャーになってくれない??」




「え゛ぇ~~~~っ?!?!」




こうして……


火事によって家を失った私は、住み込みのアルバイトと称し、沖田 流星のマネージャーをする事となった…。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ