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39. 精霊の森は命がけ

俺は精霊の森に入るにあたって、懸念していたことがある。

いや、懸念だけだったら自称精霊王(笑)とか人造神様とかの存在も心配していたし、この面子を無事外まで連れ帰る方法についても苦悩していた。

では、何をもって懸念というのかというと、コリスがいるのが精霊の森の中心部だという事だった。


こうなるとさすがにトラックに降りて徒歩で行かねばならないだろう。

そうなると、中心部まで順調に行ったとしても二時間以上かかってしまう。

だから俺は倫理的に問題があり、俺しか移動できず、なおかつ俺的にも使いたくない移動手段を使うつもりだったのだが――


――ロティのトラックの性能が、俺の予想を超えた。


こいつ、森の中をトラックで突っ切るとは……予想外にもほどがある。

森の前で降ろしてくれと言った時、ロティに何言ってんのこいつ的な顔をされた時はどういう事だと思ったが、この運転の手腕を見るとどうやらなめていたのは俺の方らしかった。


「!!?」


ロティは急にハンドルを切った。

高速移動している訳だから自然、俺たちの体が慣性の力にもてあそばれる。


「うわわ、ごめんなさい」

「……いえ」


なんか後ろの方でアイズに寄りかかってしまってモニカが謝ってるが、むしろアイズにとってはうれしいトラブルである。いや、T○love(と○ぶ)るである。


正直ぶん殴ってやりたいが、俺は外に目を向けた。


十メートルくらいの炎の塊みたいなものが、俺達の後方、地面すれすれに浮かんでいる。

それはよく見れば頭があり、腕のようなものが八本伸びていて、各々不思議な形をした武器を持っている。

チート産業廃棄物の一体だろう。

……もう面倒なのでチー産物と略してしまおう。


先ほどの急ハンドルはあいつを避けたためだ。


「クソ、追ってくるぞロティ」

「わかってるが、この路面でこれ以上スピードは出せねぇ」


俺は対策を考えてみる。

不死身なだけの俺、不死身+生産系チートのモニカ、味方を巻き込む禁断の魔法(笑)のアイズ、トラック運転手のロティ。


「まともに攻撃できる奴呼べばよかったなこりゃ」


ソーイチ君とかアルダとかドロシーとか。


「オレを舐めるな!!」


ロティはそう言うと急にハンドルを切り、逃げるどころかドリフトして進路を反転。

炎の塊みたいな精霊に突っ込んで行った。


「ちょ、あいつに攻撃効くのか!!?」


何も分かってないアイズが悲鳴を上げる。

そして認識としては間違っているが、指摘としては正しい。


ロティのチートが精霊に効くかどうかは、ある理由で本当に未知数なのだから。


ロティは横転したりしないぎりぎりの速度で炎の精霊に突撃する。

これを好機と見た相手は、八本腕に持った武器の一つをこちらへと投擲した。


「うぉおらぁぁ!!」


ロティはそれをギリギリのところでかわした。

この手の飛び道具は彼女のチートにとって弱点だ。


しかし、俺はロティのチートに関して、攻撃力に限定すれば“アンダーワールド”屈指だと思っている。

なんせ、限定条件を満たした相手を一撃必殺する(・・・・・・)のだから。


「食らいやがれぇええ!!」


ロティはあやまたず、トラックを炎の精霊に突っ込ませた。

しかし、何の抵抗もなく炎の精霊は霧散した。


「物理攻撃効かないのか!!?」


アイズが悲鳴を上げた。

しかし、それはまったくもって的外れである。


俺は窓から後ろをのぞく。

背後には炎の精霊が跡形もなくなっている。


「ロティ、どうやら効くみたいだ」

「おう! やったぜ」


ロティは快哉を叫ぶと、進路を再び反転させた。


「……ど、どういう事なんだ?」


困惑するアイズに、俺は冷や汗をぬぐいながらも答えてやった。


「ロティのチートはな、“転生トラック”なんだよ」


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