37. その選択は命がけ
結局、俺は神様からの申し出を辞退した。
コリスの命が心配でないと言ったら嘘になるが、神様に選択を誘導されている気がして気に食わなかったのだ。
「それじゃ、君は“知悉の特赦”を持ってるんだから、いつでも使ってね」
そう言って、神様は消えていった。
意地なんて張らなければよかったんだろうな。
俺は絶望に打ちひしがれる。
何てこった。
コリスが神様に転移させられてしまった。
どうすればいいんだ、と思いながらも、俺はとぼとぼとニルデアの町へと歩き出した。
その足取りは、まるで定まらず、ふらふらとしている。
俺は頭の中で方法を考えながらも、思わず叫んでしまった。
「よりによってなんで、こんなとこに飛ばされてるんだよコリス!!?」
俺は軽く頭が痛くなった。
ところで、コリスが転移させられる際、俺の体に変な魔法を打ち込んだのを覚えているだろうか。
あれは俺の体を回復させる魔法ではない。
というか、あれのせいで一回絶命し、数万分の一秒後に『リスタート』で復活したのだ。
どうやら、コリスの位置を補足する術式を打ち込んでくれたようなのであるが、神様の目を欺くためか、それとも単に俺の体が術式に耐えられなかったのか、一度絶命するはめになった。
全く、くだらない意地を張らずに、素直に助けてくれと言えばいいのに。
どういう心境の変化かは分からないが、助けないわけにもいくまい。説教一つできずに転生されては、後味が悪すぎる。
ただ、その行先は予想外のもので、俺は軽く絶望していたのだ。
しかしそのことよりも、俺は神様の行動について考える。
神様は一体何のために俺にあそこまでいろんなことを話したのだろうか。
特に、“知悉の特赦”を無理やり消費させようとしていた点が、俺には理解しかねる。
心当たりがあるとすれば、そう。
俺が使おうとしている方法で、何かが起こるんじゃないか。そう思うのである。
俺の死因がどうなっているのかは知らないが、何やらキナ臭くなってきた。
……まさか、俺が本当に神様のミスで転生してきたわけでもあるまい。
さらに言えば、コリスの偽装を神様が気付かなかったかどうかも怪しい。
本当に気づいていなかったのか、単に面白そうだから気づいていて見逃したのか。
神様ならどうとでも動きそうだと思ってしまうあたり、読みづらい。それとも、人間には読めないからこその神の意志なのであろうか。
俺は考えても仕方ない事は置いておいて、とりあえずコリスの行き先について考える。
“アンダーワールド”にいる者なら一度は耳にしたことのある、ある意味例外的な地域について。
正式名称、精霊の森。
しかし、この名前で呼ばれる事は滅多にない。あまりにも有名な、あまりにも残念な、通称があるためだ。
そう、通称――
――チート産業廃棄物処理場。
そこは、無数の精霊と人造神様のひしめく、とんでもない場所だった。




