十一話 鋼の心
ハジメがギルバートを倒した頃、オルタスとロバートはまだ睨み合いを続けていた。
「おいロバート、ギルバートが死んだぞ」
ロバートはオルタスから目を離さない。
「だからどうしたというのだ」
「ふぅん、薄情者だな、お前」
「騎士は死など畏れぬ労らぬ」
「だから嫌いなんだ騎士共め」
ロバートがランスを突き出す。オルタスはそれを避け、ランスの腹を殴る
「はは!何をしているオルタス!」
「バーカ、わざわざ武器に触ってくる奴ってのは、大体武器破壊狙ってる奴だって教えたろ」
言い終わると、ランスにヒビが入った。それがどんどん広がって割れた。
「なっ!」
「成長しろよ」
オルタスが懐へ入る。その寸前に、ロバートが何かを突き出した。
ヒュッ!という音を立ててそれは、オルタスのナイフによって辛うじて胸の前で止まる。
「エストック…か」
「はん!騙し討ちも通用しないかよ、ちょっとは油断しろよな」
オルタスはエストックを脇に逸らしながら上段に蹴りを入れる。ロバートはそれを難なく避け、エストックを引きすぐに顎を狙って突く。オルタスはロバートの肩に踵を落とし、反動で飛び上がる事によって回避した。そのまま足を引きもう片方の足で顔面を狙う蹴り。入ったと見えたが、しかしロバートは足を取って投げた。
「ぐぅ!」
オルタスは受け身を取って、投げの反動を利用しすぐに立ち上がる。
「オルタス、その技訓練の時何回されたと思ってんだ。いい加減対処法見つけたぜ」
オルタスは黙って右足で下段へ蹴り。ロバートは足を上げて避けながら脇腹を蹴る。オルタスは右足を戻さずに無理やり踏み込んでナイフで突く。脇腹への蹴りを受け止めながらの突きは、手を払われて当たらなかったが、体を捻って左足で顔面を蹴った。命中し、ロバートは二三歩後ろへよろめくが、踏ん張りエストックを突き出す。オルタスは右足でエストックを握る手を狙い蹴る。軌道は逸れ、ロバートは大きく体制を崩した。そこへオルタスが蹴りの力を利用し、体を回しながら逆手に持ち直したナイフを胸へ突き刺し抜く。ロバートは血を吹き出した。
「ぐあぁ!!」
「そんなものかロバート。その程度か。王の為に戦うのではなかったのか。ローズとメアリーは、貴様のようなチンケな男に殺されたのか。何のために殺されたのだ。浮かばれぬ、浮かばれぬぞロバート!なんだそのザマは!最期まで立って戦えよ!俺にできる限りの復讐をさせてくれよ!なぁ!なぁ!なぁ!!」
オルタスがロバートを殴りつける。するとロバートは倒れた。まだ生きてはいるが、出血量からそれほど長くは保たないだろう。
「オルタス……く……くそ……まだ、まだ勝てないのか……いや、もう……か」
「ロバート!まだ死ぬのは早いぞ!!懺悔せよ!ローズとメアリーに懺悔しろ!!」
「謝るものか……謝罪などしたところで許されるものではない……やれよ。さっさと殺せ」
「もう一度言う。懺悔しろ。お前に人として死ぬ権利をやる。己のしでかしたことを後悔し謝罪しろ。そうすれば騎士として人として殺してやる。さあ!懺悔しろ!!」
ロバートは最後の力を振り絞ってオルタスを殴りつけた。
「ぐっ……!ロバート!てめぇ!」
「はっ!ははは……いいザマだオルタス……なにもかも失ったな!俺と一緒だ……騎士団長の座を奪われ……マウロイ最強の称号を奪われ……最愛のローズを奪われた……。王からの信用も、部下からの信頼も
、ローズからの愛も、俺はお前に一つも届かなかった。俺は……お前の残りカスのような男だ……人として死ぬなんて……」
「ロバート。それでもだ。それでも人として殺してやる。お前はそんな奴でも、俺の友だ」
「俺はそんな風に思ってはいなかったよ……お前を見るたびに嫉妬の炎を燃え上がらせていた……そんな俺は……こんな死に様がふさわしい……『バーニング』」
ロバートの体が炎に包まれた。
「くっ……!ロバートォ!!!」
「くはははははははは!!!!!もたもたしてるうちに殺しそびれたな!!!!!はははははははははははは!!!!!!」
ロバートの体が焼け、灰になり、骨になった。
オルタスはロバートの骨を踏みつける。骨は崩れ、空に舞っていった。
「大バカやろうが……」
オルタスは空を見上げる。その灰色の空は、今にも降り出しそうで、しかし、一滴も降ってはこなかった。




