十話 騎士の誇り
ハジメがつくった屍の山に、1人生き人が混じっていた。現王立騎士団副団長ギルバートである。
(なんて強さだ。仲間が皆やられてしまった。だがあの剣なら見える。あの不思議な剣術も見切った。俺なら勝てる。俺なら殺せる。)
そう思い、ギルバートは立ち上がった。もとより騎士に不意打ちや騙し討ちなどという考えはない。正々堂々正面から戦いを挑む。これは騎士の誇りであった。
背後で、物音がした。振り返ると、大柄な男が立っていた。男は言う。
「貴様、強いな。だが、俺の敵ではない。貴様の革命はここで終わるのだ」
「革命?なんだそりゃ、俺は襲われたから自分の身を守っただけだぜ」
ギルバートは剣を構え言った。
「我は王立騎士団副団長ギルバート、貴様がどんな理由であれ王に逆らったことは明白。今ここで殺さねばならぬのだ。死んでいった同士達の為にも死んでくれ」
「俺はハジメ。ハジメ・クロイヤードだ。あいにく俺は魔王を倒しに行かねばならん。ここで死ぬわけにゃいかねぇんだ」
俺も刀を構える。
こいつはただのバカだろうか?それとも自信があって勝負を挑んできたのか。俺なら、圧倒的数の差を覆した強敵相手に、わざわざひとりになってまで戦おうとは思わない。騎士の誇りというやつか?
ギルバートは何の勝算も無しに仕掛けた訳ではなかった。
(あの剣、我らの強固な魔法鎧を事も無げに切り裂いた。よほどの怪力か、いや、そうは思えぬ。オルタスに魔法強化される前も斬っていた。強化前は大した体力もなかった。おそらくは切断魔法。しかも相当強力なやつだ。何でも斬って意外なところから斬撃が飛ぶ。だから避けられなかったのか。しかし、俺の技ならどうにかなるぞ、これは。あくまでも物理的な切断だ。魔法までは斬れないんじゃないか?だとしたら勝てる。十分に勝機はある。ただし賭けをしなくてはならんな。しかも全て賭けねばならん。ふふっ、久し振りに恐ろしいよ)
先に仕掛けてきたのはギルバートだった。
刀が青白く発光している。エンチャントが施されている。
長刀で横に薙いだ。ギルバートはそれをガードする。お互いの刃が触れ合った瞬間、俺の身体を激しい電撃が襲った。
「う、うぅううう…」
後方に弾け飛んだ。まだ身体がビリビリ痺れてる。
「どうかな、俺の剣は?ちょっと欠けちまったよ。喰らってわかったろうが、雷撃だ。俺は雷系の魔法が得意なんだ」
バチバチと、ギルバートの剣が唸る。どんどん近づいて来ている。
どうする、身体が思うように動かない。このままではまずい。殺されてしまう!何とかしなきゃ!どうにかしなきゃ!死ぬ!死んでしまう!どうすりゃいい?どうすれば状況を打破できる?考えろ!最後まで諦めず思考を巡らせろ!必ず勝利の糸口がある!
「はっ!あの最強と謳われた東方不敗がこのザマとはな。所詮は伝説、百年前のおとぎ話」
ギルバートはもうすぐそこまで来ている!もう少しであいつの剣が届くところまで迫っている!あれ?なんかこんな状況前にも…えぇと、いつだったっけ?まあいいや、そうだ、そうだった。こうすりゃいいんだ。
「さぁ、もう死ね」
ギルバートが剣を振り上げる。俺は必死で太刀の柄を掴んだ。その瞬間身体の痺れは消え、力が抜けた。
「くっ!」
太刀を払う。ギルバートの剣を受け止めた。
「はっ!バカめっ!」
「俺がバカ?ははは、そりゃ面白い冗談だ」
ギルバートの剣は光を失った。そしてさっき長刀で切り込みを入れたところに上手く刀が入り込み、剣を折りながらギルバートの首を半分ほど斬った。
「ぐっ!ぐあぁあぁぁ!!」
血飛沫が飛ぶ。返り血が降り注ぐ。
「な、なぜだ!なぜ俺が負ける…?」
「そりゃ、弱いからさ。俺よりも弱いからお前は負けたんだ。簡単なことだろう?」
「あ、く…クソ…クソガアアァアァア!!!」
ギルバートの命が消える寸前の、渾身の力を振り絞った一撃。ヒュン、という音がした。斬ったところはなにもない。ただの空。
「避けられた…俺は…命かけても一太刀も浴びせられないのか…俺の…俺達の訓練はなんのためだったのだ…これでは全て…無駄…ではないか……」
ギルバートは死んだ。一瞬でも俺を殺せる所まで到達した男。俺は敬意を持って、その首を完全に落とし、手を合わせた。
「あれ?俺、真っ赤だ」
気がつくと、全身が返り血で染まっていた。俺の周りには沢山の屍の山。その下には血の川が流れていた。
魔王10人もいるのにまだ人間同士戦ってる。ラストだけ考えて適当に設定しちゃダメってことだな!!




