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魔術師、異世界をソロで往く 帝国編  作者: 迷子のハッチ
第7章 終わりの始まり
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第64話・2 南への道(2)

行く手を遮るのは、帝国軍だけではありません、厳しい冬がカスミに襲い掛かります。

 聖域結界と環境コントロールの魔術付与をした新しいボディースーツを着て家(神域の部屋)をレタと一緒に出ます。


 右手には、灰色ガイルベアのコアに魔術陣を錬金して作ったゴーレムのコア、魔力は満タンに入れています。

 アイとナミがカスミ姉ねの作った部屋付きの軽車両を部品毎にドアから引っ張り出しています。

 ドアから出せないような大きさの物を出し入れする為の、大きな魔法袋を作らないといけませんね。


 あれから3日が立っています、帝国軍が近くから居なくなる迄待っていたからです。

 橋の下から出て冬の平原に出ます、ここから見える範囲どこまでも凍り付いた冬景色の平原です。

 空間把握では、人っ子一人いません、小さな生き物は地面の下や藪の中にじっと身を潜めています。


 アイとナミが軽車両の部品を組み合わせています。

 軽車両の部品は金属の棒を枠にして車輪を前後の2つ付けただけの物です。

 右と左があって、私達が乗る箱の両側に接続部品アタッチメントで繋ぎます。

 最後に接続した左右の枠同士を金属棒で何か所か繋げば組み立て終了です。

 (リアカーの応用さね by大姉)


 ゴーレムを作成します、起動の文言を唱えます。

 「その身に大地を纏え、ゴーレムベア」ゴーレムに付けた名前を呼びます。

 ゴーレムのコアを凍った地面に放ると、コアは冬の凍り付いた大地から土や石をコアの周りに集め四つ足の熊型のゴーレムが出来上がります。


 レタはゴーレムが作った穴に周囲の土を土の魔術で引き寄せて隠しています。

 アイ、とナミでゴーレムにハーネス装着して行きます、軽車両に引き綱を付け手綱を軽車両の部屋の中へ入れます。


 アイとナミを家へ送り、「行ってきますね」と手を振って家のドアを閉めます。

 「いってらっしゃいませ」とアイ、ナミは無言でお辞儀をしています。


 軽車両にレタと乗り込みます、座席は狭く高さも無いので前後に二人が座れば空間的に私の膝の上にレタの肩から上が来るようになります。

 私は後ろ席に、レタは御者席で手綱に接続した左右の操縦稈を持って、ゴーレムを操ります。

 「レタ出してください、前方の地面の状況は注意して見ていてね」

 「はい、でございます、注意深く把握するであります」


 最初はゆっくりと徐々に早くしていきます。

 目指すは、300ワーク(450km)先の南の海、途中にロマーネ山脈にある深淵の森ダンジョンの途切れる位置にある国境の町を越えないといけません。


 同じ南南西の方向に通る、ロマ街道の1つが在りますが、もちろんそんな街道通れるわけが在りません、私達は道無き道をいきます。

 と言っても通るのは畑や村道などで、今は地面が冷気で硬く氷り始めています。

 でも心配ご無用、ゴーレムはそんな凍り付いた地面でも関係ないとばかりに強引に軽車両を引いていきます。


 軽車両の車輪で滑るように移動します。

 それでもスピードは出せないので今は平均15km/hぐらいで移動しています。


 私は脳内でレタが表示している帝国の地図を見ながらみんなでお話をしています。

 レタが収集した資料には様々の事が載っていてまだ自分たちが読んだ分ぐらいしか知識は無いですが、3人寄ればなんとやらで話し合をします。


 (この先に山ってあるけど、通れるのか分からないし避けた方が良いよね by妹)

 (避けるには東へ曲がらねば避けられないよ by大姉)


 (ここは、進んで障害物は飛空で飛び越えながら行くのが良いよ by大姉)

 カスミ姉ねは突っ切るようです、私も賛成です。

 (ここの山どころかロマーネ山脈も突っ切る予定です by小姉)


 (深淵の森ダンジョンもあるし、通れる場所は帝国に見つかって、危険じゃないの? by妹)

 (まだ私達は見つかってはいませんが、私達の行き先ぐらいは予想しているでしょうし、帝国軍の動きから手配が国境の町まで伝わっていると思います、見つかるのは時間の問題です by小姉)


 (東への旅で見た駅伝には魔術師も魔道具も無かったが、宿泊所にはあると思うから連絡はしてるだろうね by大姉)


 (だとしたら、もう手配が帝国中に伝わっているの? by妹)

 (帝国中に通信するのは大金が掛かるからね、騒乱罪程度ならだいじょうぶかな? by大姉)

 (帝国の主要都市には中継されて魔通信が届いていると、考えて行動した方が良いと思います by小姉)


 「お嬢様、この先に街道が通っておりまする」とレタが言って来る。


 空間把握でもこの先に街道が通っているのは把握出来たので、この先の山を越える街道でしょう。

 「レタ、この街道に沿って少し離れて進みましょう」この辺りは丘陵地になっていて比較的平坦です、周りの地形も畑の様なので進みやすいでしょう。


 (街道の閉鎖とかあると思う? by妹)

 (国境では間違いなくそうしているでしょうね by大姉)


 (これから超えるロマーネ山脈なら国境の街道は12月にもなれば雪で通行止めになる日もあるそうよ by小姉)


 (東か西へ行けないの? by妹)

 (東は大アントナ山脈の南側は迷いの森ダンジョンが在ってそこが国境になっていますね by小姉)

 (さらに南の小アントナ山脈の麓なら通れますけど、南側から海までが呪いの森ダンジョンになっていて、そこから北へ呪われた魔物が出て来て、とても危険なんだそうです by小姉)


 (西へは帝国を横断する必要があります by小姉)

 (でも、ヴェラ大使と合流しなくても良いの? by妹)

 (今合流すれば、帝国にヴェラ大使一行を攻撃する理由を提供する事になります by小姉)


 (そうなのね、私達は南しか行けるところは無いのね by妹)

 (ええ、北か南へ行くと考えているでしょう by小姉)

 (え、北? by妹)

 (冬に旅をするには厳しいですが、 ヴァン国はその更に北にある国ですから by小姉)


 (しかし、北は帝国の中心地ベルン市があって、更に北には世界最大の闇の森ダンジョンがあるからね、考慮はしても実際には行かないと見ているさね by大姉)


 (じゃあ南に集中してるのね by妹)

 (そうさね、ロマーネ山脈も西は深淵の森ダンジョンだけど、東側は魔物もあまり居ないらしいから by大姉)

 (そうなりますね、東側は街道も通っていて国境の町もありますね by小姉)


 レタがゴーレムを止めて伝えてくる。

 「街道を北上する帝国軍部隊が居るであります」

 空間察知範囲より更に先10kmぐらいの所に規則正しく動く影が見える。

 「レタ、家(神域の部屋)へ撤収」

 ここは隠れてやり過ごしましょう。


 家からアイとナミが出てきて軽車両を手際よく分解して家へ運び込みます。

 私は、ゴーレムを解除します。

 「再び土へ戻り、起こされるまで眠るが良い、ゴーレムベア」

 ゴーレムの居た場所に土の山で出来ていますが、レタが再び周囲に均等にばら撒きます。

 畑の境界を示す石の側で家を閉じて隠れます。


 帝国軍は相変わらず一定の速度で行軍してきます、1刻半(3時間)ぐらいで側の街道を行軍していきました。


 「今どこら辺なの?」とカスミちゃんが聞いて来るので。

 「まだ今朝出発した橋から30km南下したぐらいですよ」と答えると。

 「やっと歩いて1日分ぐらい来た感じね」とがっかりしたような顔をしています。

 「あせっても良い事なんか無いからね、慎重に行動するさ」とカスミ姉ねが諭してくれます。


 今日の昼食はホットミルクとレタスときゅうりのサンドイッチにマヨネーズが塗ってありました。

 段々食事事情が良くなっています、こんなちょっとした事で幸せを実感します。


 そういえばお酢はいつ手に入ったのですか?

 「そいつはワインビネガーさ、ドワーフ共が酒を浴びるように飲んでいた時に村でブドウの種と一緒に手に入れた酢酸菌で作ったのさ」

 「もちろんブドウも栽培出来てるよ、2回程収穫もしたね」


 帝国軍が通り過ぎて1刻半まってから出ましょう。


仲間の助けを借りて、厳しい冬と帝国軍を乗り越えてカスミの冒険は続きます。

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