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魔術師、異世界をソロで往く 帝国編  作者: 迷子のハッチ
第7章 終わりの始まり
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第54話 東への旅

東への冒険の旅では無くて護衛の旅です。

 「カスミって脳筋だよね」いきなりカスミちゃんは何言っているんですか。


 「だって、セルボネのスリに始まり、ベルン市の冒険者とかオルカ男爵領に今回のミンスター騒乱の件」

 「どうも解決方法が脳筋なんだよね、先ずやっつける、それから考えるみたいな所あるでしょう」

 カスミちゃん、それはそうだったかもしれませんけど。

 「あ、ダンジョンの迷宮賊も居たっけ」


 カスミちゃん、それは言い訳するわけじゃ無いけど、仕方無かったのよ。

 ついかっとなって行動してしまうの。


 「それは、言い訳じゃなくて行動の解説のようだね」

 カスミ姉ねが酷いことを言ってるわ。


 「で、後先考えずに行動した結果、今こうなって居る訳だ」

 カスミ姉ねが、手を広げて行軍する一団を指摘する。


 ここは、一連の事件を経て、新しく家(神域の部屋)に作られた作戦指揮並びに情報統括室だそうです。

 (カスミ姉妹用の覗き部屋よ by小姉)。


 レタが新しく本や資料の書類や巻物などをスキャンして内容をコピーする方法を開発したので(帝国貴族年鑑の写しを作ろうとしたのが発端です)、もちろん私も手伝いました、主にスキャンしたデータを加工して情報として取り出す部分です。


 暇だった1月程の間に調べられる場所の本や資料から取り込んだ情報を整理するために作った部屋のはずなんだけど、カスミ姉妹に取られた様です。


 後ろから画像魔術付加水晶により投影され、今画面(壁の内側に張られたスクリーン)に映っているのは5千人の軍団とその馬車隊、さらにヴァン国馬車隊3台と私達護衛4名のうち3名です。


 映像は空を飛ぶ1羽の鷹、その目に映る景色を私達は見ています。

 この鷹は帝都で家(神域の部屋)に1月籠ってた間に作りました。

 大使館へ画像音声付与魔道具を運んだ鳥型土人形を改造した偵察バードです。


 この偵察バードは空からの偵察をするためだけに作られたものです。

 飛行航路を設定出来るので、偵察バードの見る画像を記録することも、又今の様にコントロールしながら画像をレタ達オーナ姉妹経由で此方へ送ることもできます。


 空から見る馬車隊は1列に並んでいます、この内ヴァン国火球砲部隊は馬車3台、うち2台が火球砲を装備したゴーレム馬車、残り1台が大使が貸してくれたゴーレム馬車で私達が寝泊まりしています。

 はぎ取った馬車の強化素材は帝都で手に入る板材の中から強さに定評のあるカシの木の板で張り直しています。


 今進んでいる街道は一般的に総称を「ロマ街道」と言われている神聖ロマナム帝国が帝国中に張り巡らしている街道です。

 10ワーク(15km)毎に駅伝施設が整備され宿泊施設も5か所に一つはあると聞いています。


 この宿泊施設は帝国官吏や特別な証明書(旅券)を持った人(主に皇帝の代理人)だけが利用できるので旅券を持たない人や私達外国人は利用できません。


 私が初めてこの世界に来た時見た街道はその一つになります。

 (あの時の道はこんな立派な道じゃなかったよ by妹)

 (ピンからキリまで街道と言ってもあるからね by大姉)


 通常この街道を利用して徒歩で旅をすれば1日に15ワーク~20ワーク(22km~30km)馬車だと25ワーク~27ワーク(37km~40km)を進めるそうです。


 この1日に進める距離ですが、これまで旅をしてきて感じたのですが、思った通りに行った事はありませんでした。

 体調とか天気とか色々出て来るので、計画する時は1日に進める距離は少なめに見積ると良いと思います。


 軍団はこの道路の右側を3列になって進んでいます。

 道幅は5ヒロ(7.5m)あり両端は歩道で1ヒロ(1.5m)幅なので人が荷を担いで歩けます。

 道路よりも少し高くなっている歩道を歩く人達とは別に、軍団は馬車道を行軍していきます。


 軍団の中程を3台の馬車を連ねて兵士の歩みに合わせ、私達はゴーレム馬車を進めています。

 一日20ワーク(30km)を進み軍団が野営するために設けられた広場にテントを張って休む、それがこの兵団の日課です。

 (凄いね20ワーク歩き通したよ、軍ってこんなに鍛えてるの by妹)

 (今は昼の時間が長いからね、それにやっぱり軍人は鍛えられてるね by大姉)


 火球砲部隊は馬車3台を三角形に止めて馬車の外側にゴーレムを配置しています。

 夜はヴァン国兵もカスミ達も馬車の中で寝ています。

 見張りの交代もあるので、そう装っているだけで実際には私達は家(神域の部屋)で寝てるけどね。


 朝と夜の食事は、止めた馬車の中心で魔道具の炉を使って、ナミが調理したスープやパンを兵士と一緒に食べています。

 (ナミが料理の腕を更に上げたよ 鋳鉄製の鍋で料理が出来る様になったよ by妹)


 軍団は近くの村や町から毎日補給が受けられるようになっています、このような仕組みを考えて実行できるとは凄いですね。


 昼は軍団に合わせて、朝焼いたパンを1個渡されてそれだけです。

 (ナミが工夫して、パンにチーズや肉を挟んだサンドイッチにしてるよ by大姉)

 (でも、昼の1コル(15分)の休憩で立って食べるんだよ by妹)


 大きな町の側を通る時は私とレタで馬車に乗って、町に行き食料品や日用品を買い付けることもあって、結構楽しい買い物です。


 今回の契約は軍事行動も含めてすべての費用は帝国から前金で貰っています。

 そのため途中で掛かる費用などは私達が貰った費用から出す必要があるのです。


 契約は一度傭兵ギルドを通して仕事を受ける形になります。

 そのためレタが傭兵ギルドでクラン『モクレン』としてこの仕事を受けてきました。


 私達も大使から前払で傭兵契約の全額、金貨500枚を受け取っています。


 それと傭兵契約とは別に馬車の改造込みの火球砲2門の支払いを魔鉱金属4種類合計で2グッシュ(約14㎏)程貰っています。


 更に、帝国への提供用に火球砲2門制作の材料と金貨2000枚を貰っているのです。


 軍団が野営する場所は街道沿いに、決まった場所に、決まった広さが用意されています。

 そのため軍団は一度動き出せば、豪雨だろうと吹雪だろうと構わずに20ワーク進むのです、そうしないと街道の途中には野営できませんし、補給も出来ないのですから。

 季節的にそのような天気はありませんけどね。


 トイレは軍団が纏めて作るので、そこを利用しても良いけど、カスミ達は女性が多いので馬車の間にテントを張りその中にトイレを作り利用しています。

 アイによる土魔術が活躍しています、エルフやドワーフの中にも使える人が居て重宝しています。


 夜の見張りもヴァン国兵と合同で、私も含めて3交代で見張りについています。


 夜の見張りは各馬車から一人ずつ出て3人で一組になり、時間を区切り夜を3分割して馬車毎に一人は一晩中寝れるように組んでいるのです。


 実はこの見張りは油断無く注意して行うように指示しています。

 これまでに馬車に侵入しようとした影を何度かナミが見つけたので、レタ、アイ共に闇魔術の見張り用魔道具(闇魔術や闇精霊術を使用していると音が鳴る。カスミちゃん製)を持たせている。


 ヴァン国兵の内訳は、

 1号馬車は妖精族(私達よ)で、カスミ、レタ、アイ、ナミ

 2号馬車はエルフ族で、アルフィン(アル)、エィナミア(エナ)、サーシャ(サシャ)、スーウェシャ(スー)

 3号馬車はドワーフ族で、ドボルーク(ドン)、エゼィガミル(エディ)、ロスピィア(ロン)、テルグオーネ(テル)

 です。


 順番に車長、ゴーレム操車、砲長、砲操者の順に並んだ名前です。

 名前で分かる様に2号車の乗組員は全員エルフの女性で、大使の護衛隊の半数だそうです、夜食後何時も楽器で演奏するので私達も参加させて貰っています。

 (カスミちゃんとしては、直接お話したいかな by妹)


 3号車は全員ドワーフの男性で、とっても陽気で夜はお酒ですぐ宴会をする困ったおじさん達ね、歌声は良く響きます。

 (ナミが何時もつまみを作るのが良く無いんだよ by妹)

 (ドワーフはお酒が無いと生きていけないのさ by大姉)


 10日程進んだ頃右手に雄大な山脈が見えてきました、これがずっと南東へ500ワーク(750km)続きやがて海に至る大アントナ山脈です。

 この山脈の南側が有名な迷いの森ダンジョンです、このダンジョンから北へ魔物が出てくることが在り迷惑しているそうです。


 これからはしばらくこの山脈に沿って軍は南東へと進みます。


 見渡す限り地平線までの広々とした麦畑です、ここは春は雪解け水で泥沼の沼地になりますが9月ともなると一面の麦畑に変わります。


 帝国はこの肥沃な大地を狙い東へ征服の軍団を派遣してきたわけです。

 200年にわたる征服の成果は帝都から東へ一月半、帝都から東へ約700ワーク(約1000km)の地点まで到達しました。


 帝国は南東の海に流れる大河ドミナの中流域にドミナント市を建設しこの地を治める中心地と定め、さらに多数のくにと呼ばれる従属国を作ってきたのです。


 ここから東へは多数の砦が築かれ東から来る蛮族と戦っているらしいと聞いています。

 (蛮族って呼ばれてるけど侵略者への現地の抵抗勢力よね by妹)


 ドミナント市は川から水を引き込み堀と城壁の要塞都市となっているそうです。

 この都市を治めるのは貴族では無く帝都より派遣された軍の東邦方面軍最高司令官アイザックス・コルネ・アント将軍(辺境伯爵)です。


 今回の火球砲の契約は飛竜と実際に戦いその有効性を証明する事と、有効であった場合火球砲を2台無期限に帝国に貸し出すとなっています。


 契約では火球砲であって馬車ではない事、有効性を証明出来たら火球砲を取り外すか新たに作って2台渡せば良い契約なのです。

 なので、ヴィラ大使と話し合い2台現地で作ったのを渡すことにしています。

 (作る材料はヴィラ大使から貰ってるから移動する間に作ったのさ by大姉)


 火球砲は固定台となる一本脚と砲、砲の防護用防盾2枚から出来ています、一本脚と砲は回転するテーブルで接続され一本脚の上で砲を回転することが出来ます。

 一本脚は周囲の地面にクイを打って縄で縛り固定する事を想定しています。

 (火球砲を運用する最小限の構成さね by大姉)

 (火球砲の魔術陣以外はカスミ姉ねが作ったからね by妹)


 ドミナント要塞に入った部隊は一旦要塞内の北側の堀沿いにある広場に駐留するようです。

 私達の砲兵部隊もその場所へ何時もの三角形に馬車を止め、休みます。


カスミは脳筋娘なのでしょうか。

売られた喧嘩は必ず買う、これまで襲ってきた敵は全て倒していますね。

全て力で解決する、謀略はレタとナミが行ってカスミは報告を受けるだけでしたね。

いつの間にか脳筋に育っていたようです。

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