第47話 帝都ミンスターへ(2)
ピクニックを楽しむカスミです、こう言う行事は準備も楽しいですね。
今日はピクニックへ行く日だ。
と言っても朝ごはんの後で、近くの村へ行くことになっている。
村へは、神域を離れられないカスミ姉妹以外のレタ、アイ、ナミと私の4人で行く。
カスミ姉妹は無理をすれば神域を離れても大丈夫だと思うけど、無理をする必要を私達3人は感じていない。
3人は一人だから、当然3人は個々に違う個性を持ってると理解している、しかし矛盾するようだけど3人は一人だとも思う。
私の中に存在しているため3人とも別人格の私と言える。
私が神域を移動できるようになったら、3人で神域内をあちこち行く予定になっている。
何時ものボディースーツとミスリルの鎧と言う恰好で、家(神域の部屋)を出て村へ向かう。
今いる場所は丘の中腹なので下っていく。
やがてちょろちょろ流れる川と草原に行きついた、そこから村がすぐ下に見える。
朝の支度の煙が煙突から上っているのが見えた。
今昼1時(午前6時)ぐらい、家を出たのは夜12(午前5時)時過ぎぐらいなので1時間弱歩いた事になる。
ちらほらと人が見えるので、農作業に出かける姿かもしれない。
あ、今鐘が鳴ったので昼1時(午前6時)になった。
村へ向かって歩いて行くと何人か私達に気が付いて、戸惑いが広がるのが分かる。
急いで手を振って村人に私達が敵対的な集団ではないことをアピールする。
声が届く所まで近づいたのでレタに声を掛けさせる。
「おはようでございます、お聞きしたいことがあってこの村へやって来たのです」
「村の長殿か周りの土地の事に詳しい方がおられませんですか」
「私はレタ、こちらのカスミお嬢様の執事でございます」
「左はアイ、右はナミ、2人ともお嬢様の従者なのです」
とレタが村人へ私達を紹介しながら村人の反応を見ます。
私たちの立ち位置はレタが三角形の先頭、左はアイ、右はナミで私が三角形の真ん中。
4人とも武装はしていますが、全員女性ですし武器も手にしていませんから村人達も安心したようです。
「ワシがこの村の乙名の一人でオットーち言う」
「あんた達の話が良くわからん、何が知りたいんじゃ」
「そうですね、あちらに見える丘あの一番高い所へ登ったとしてであります」
と大きな木が丘の上まである村の奥の丘を指さす。
「それでお咎めを受ける事は無いですか?」
「と聞いているのであります」
噛んで含めるようなレタの問にオットーさんは考え込んでしばらく無言でしたが。
「あそこら一帯は御留林じゃ森番の許可がなきゃ入るとお咎めがあるのは必定じゃ」
と答えてくれた。
「ありがとうございます、他にもお咎めがある場所を教えてほしいであります」
「お礼は銀でしますです」
お礼に銀貨を出すと話した途端、村人たちが一斉に話し出したのでオットーさんと話し合って村人が知っている情報以外に農産物も買うことになった。
私とアイの二人で一度森へ帰って、家からリヤカーを持ち出す、一々人目を避けるのは仕方がありませんが、面倒です。
アイとリアカーを引きながら村へ帰ると、レタとナミの後ろに農産物の山と子牛や子豚までが居た。
レタが執事をする時「仕入れはレタの仕事であります」とか言ってお金の管理はレタがすることになってしまった。
今の私はお小遣いで買い物をする程度なので村での買い物は全てレタが取り仕切っている。
(ベルンで金貨を持って無かったのはお小遣いは銀貨3枚までだからなのよ、値上げを要求するわ by妹)
銀貨3枚はお小遣いとして十分多いと思います、銀貨1枚で物に寄りますけど千円~1万円ぐらいの価値がありますよカスミちゃん。
(それは知ってるわよ!でもそれでいいのかって問題なのよ by妹)
(いいんじゃない、レタはしっかりしているよ by大姉)
色々ありましたが、一度森に引き上げ買い込んだ農産物を整理することにした。
整理しながら村人の情報から、ピクニックに良さそうな場所を皆で選んだ。
ピクニックに行く準備が終わって、何時ものメンバーでいよいよ出かけます。
ピクニックの場所は、街道近くの小川で旅人の憩いの場所に成っていると言う、今の季節だと木や草の花が咲いていて岸辺まで街道からしっかりした道が出来ているそうです。
レタ、アイ、私、ナミの順番で一列になって街道を歩いて目的地まで行きます。
これは遠足ですね、お母さんの時は春の遠足で車の多い道を歩いていったって聞いて、楽しい遠足なのにバスでは無くて歩いたのって思っていました。
今こうして皆と歩いて楽しいなって思います。
晴れた空に暖かい風、砂利道は良く整備されて歩きやすく、小川が街道に沿って流れています。
街道には所々木が植えられていて、夏には道に影を落として暑さを和らげてくれるのかなって思います。
6月は春から夏への季節の変わり目、道の周りに花が沢山咲いています。
花の色だけでも赤、青、白、黄色、紫、ピンクと色も形も様々な花が咲いています。
昼5時(午前10時)ごろ、河原へ降りる馬車が通れる大きな坂道が見えてきた。
目的地に違いないと思う。
街道は丘の中腹を通っていて川原に降りるための道が分岐している。
川原には木と草花が今を盛りと花を咲かせ、一面の緑の草原に生っている。
広い川原は川の大きく曲がった部分に出来ていて。
ここで休む旅人が多いのか石などで囲った簡易な竈や座りやすい石があちこちに、草のなかから姿を覗かせている。
川原の奥に丁度良い木陰が出来ていて、木陰を作ってくれている大きな木のしたで、用意した敷物を広げピクニックの拠点とした。
私は真先に敷物に伏せて、ゴロゴロと転がり敷物の下の草や河原の丸い石の感触を楽しんだ。
レタは私の側に残ったが、アイとナミは川へ移動して川の生き物を探す様だ。
初夏の太陽のホカホカと暖かな日差しに段々眠気を催した私は、レタの「お嬢様このまま寝てしまわれるとお昼食べそこなってしまいますですよ」と言う言葉を子守り歌に、寝たようだ。
『お嬢様、起きて下さい、不審な者達がやってきますです』
とレタの念話で起こされた。
起きた私は少し寝ぼけて「レタまた迷宮賊ですか?」と聞いてしまった。
「いえ、騎馬の集団31名と荷馬車1台御者1名でございます」
「そうなの、レタ撤収の用意を」目が覚めてきた私はレタにここを退散する用意をさせる。
アイとナミが戻って来る。レタは広げていた敷物に用意した篭や茶器に水差しなどを纏めてベルトポーチへ入れた。
「レタ、騎馬隊からこちらは見えていると思う?」と聞く。
「はい、騎馬隊からは高低差があり、こちらは丸見えでしょう」
「騎馬隊はこちらを見つけてから河原に降りで来たの?」
「いえ、ここで昼を取る積りの様でした、途中でこちらに気が付いたようで、視線と伝達の声がしていました」
「騎馬隊が降りてきたら、私達は川の土手を上がって騎馬隊を避けるわ」
ここは危険を少しでも避けたいので、レタに指示する。
(そうね、貴族は避けたほうがいいね by大姉)
「ナミ少し先の土手が上りやすそうです、確認しなさいです」
「アイ、必要になったら溝に川の水を引いて堀を作るのも有効な防御でありますよ」
指示を受けてレタがアイとナミに指示を出します。
ナミが土手に近づくと、行動を阻止するように3騎が本隊から別れ土手沿いに移動する。
「レタ、馬が超えられない堀で囲いなさい」
騎馬隊の行動を見て、敵対的行動と見た私はレタに防御を命令する。
「アイ、野戦築城なのです」
アイが私達の周囲20mを円形に土魔術で幅3m、深さ2mはある溝に掘る。
掘った土砂を内側に盛り上げると、さらに土魔術で溝を固めて堀にしていく。
アイの野戦築城を見て騎馬隊は馬の脚を止めてこちらを注視している様だ。
「レタ、馬の足止め位で良い、盛り上げは硬めないで」
と本格的な要塞を作ろうとし始めたアイを止める様にレタに指示を出した。
この辺りは木陰になっていて石より土が多く、周りより少し高いので溝があれば騎馬を止めるのに十分だと思う。
ナミは騎馬隊がアイの魔術を見て唖然とする、其の隙をついて姿を消した。
不穏な騎馬隊です。




