第43話 黒の森ダンジョン(2)
黒の森ダンジョンはこれまでと違った魔物の恐ろしさがあります。
黒の森はベルベンボネ市とベルン市の間に横たわる大きな森ダンジョンです。
森を避けるため南へ方向を変えて街道も川に沿って通り、船と馬車が並んで走る事もある、6月に旅をする人には風光明媚な景色です。
私は夜間無謀にもベルべンボネ市から真直ぐ東へ飛んでしまいました。
(当然ここは、黒の森ですよねぇ by小姉)
(昼なら、東へ飛んでもいいんじゃないかな by妹)
レタがこの先北へ1㎞の高度400m付近に飛空する生命体を発見したそうです。
まだどちらの方向へ飛んでいるのか不明なので、しばらく経過をみるそうです。
食堂でみんなと今後の打ち合わせを行うため自分の部屋から移動する。
先ずこの場所の位置を凡そで良いので決める。
レタは、帝国全土の地図を出し、昨日夜に出た、ベルベンボネ市にマークを付ける。
そこから東へ線を引いて、約30㎞の場所をチェックする。
「現在地はここら辺にいるでありまする」レタが点を指さして言う。
「確率を計算するでありまする」と速度と方向の誤差を適当に設定して計算しようとしたので、ナミがレタを拘束しておとなしくさせる。
「確率とかの計算は置いといてね、黒の森の中、ベルベンボネ市から東に30㎞の地点から考えるわよ」とレタを見ながら私。
(現在地から街道まで南下するには100㎞は飛ばないといけないのが問題よね by小姉)
(南下するよりベルベンボネ市まで西へ戻った方が良いのでは by大姉)
「そろそろベルン市が高度を上げればみえてくるのでは?」アイがベルン市までの距離を見ながら言う。
「見えれば有視界飛空でベルン市まで直線で行けますよ。」アイが続けて言う。
ナミはレタを解放しました。
レタは何か計算しているようです。
「ベルン市まで残り80㎞ぐらいでありまする、凡そ1㎞まで高度を上げれば見えると思うでありまする」 レタが地球の曲率で計算して言う。
見えるかしら、飛んで確認しましょう。
「レタ、先ほどの飛空生命体はその後どうなったの」
「はい、お嬢様北へ移動して現在把握範囲から外へ出ています。時速は50㎞/hは出ていると思われるであります」
「感知した質量分布から2本脚のワイバーン型生命体と推察するでありまする」
黒の森ダンジョンは魔物の数が多いですね。
把握できる範囲に百匹はいます、それも5級から10級まで幅広く存在しているようです。
家(神域の部屋)の周囲に魔物が居なくなる瞬間を選んで家を出ます。
家から枝へ出るとゆっくり飛空で上昇します。
昼3時(午前8時)頃(時間がもうはっきりわかりません、今は腹時計ですぅ by妹)
帝国式の不定時時計を切に求めたいですね、高価ですけどね。
(時計としてはゼンマイ式動力の振り子時計がありますが、毎日どこかで時計合わせをしないと直ぐズレますし、不定時法では無く定時法の時計ですから帝国式不定時法には合わなくて当たり前です by小姉)
(時計はカスミの手作りですしね by妹)
(いいえ、カスミ姉ねのガンギ車やアンクルの構造と知識が無ければ作れませんでした by小姉)
飛空服を展開しながら上昇を続けると800m程上昇したぐらいで黒の森の切れ目が東に見えてきました。
やがて黒の森の切れ目の遥か彼方に家々が見え始め城壁と思しき物が長い紐の様に見えます。
あれがベルン市でしょう、紐の様な市壁を目指して滑空を始めます。
1刻程飛んだ頃でしょうか、レタより北側からワイバーン型飛空生物がこちらへ向かって飛んでくると連絡が入りました。
空間把握で確認すると北の方に1.5㎞離れた場所でワイバーン型飛空生物と思しき物体を把握しました。
レタに速さを聞くと、55㎞/hは出ているらしい。
もう見えると言うので北の方を見ると北の上空から大きなワイバーンが口を開けて私を一飲みにしようと接近してくるでは無いですか。
思わず電撃を強めに出してしまいました。
手加減とか全然考えていない力いっぱいの電撃です。
すると私から伸びたイオン粒子線がワイバーンに直撃して更に真直ぐ空に伸びていきました。
ワイバーンは爆散しました。
ほとんど蒸発したと思しき残骸が塵尻になって黒の森にはらはらと散っていきます。
私はしばらく空中に浮いたまま呆然としていたようです。
(いや、すごい威力だったね by大姉)
(ワイバーンをパンチ一発だよ by妹)
(今の影響で風が出て来たよ降りた方がいい by大姉)
(はい分かりました by小姉)
近くに黒の森の終端が見えています。
風は北の上空から乱流と成ってこちらへ降りてきました。
飛空服を収納して、木々の間に飛び込み、大ぶりの枝に体ごと抱きつきます。
風が突風となり木々の枝を引きちぎりながら飛んでいきます。
私は大きな木の中ごろの一抱え以上ある枝に必死にしがみついて振り落とされないように頑張ります。
体に折れた枝がバンバン当たります。
打撲は聖域の結界で問題無く防げますが、慣性がわたしをほんろうして枝から振り落とされそうになります。
唐突に始まった風は終わりも唐突でした。
一気に弱くなった風に呆然と枝にしがみ付く私がバランスを崩して枝から落下してしまいました。
直ぐに飛空で落下を弱めゆっくり地面に降りていきます。
危ない所でした、ワイバーンもそうですが私のイオン粒子線って何なんですかSFですか電撃が強ければイオン粒子線に成る物なのでしょうか。
しばらく呆けていると、レタから危険を知らせる報告が来ました。
「お嬢様、魔物が来ますです、木の上から1匹蜘蛛型と枝伝いに1匹猫型の魔物でありまする」
「レタ、アイ、ナミ家から出て迎え撃つように」と命じます。
木に神域の部屋の扉を出し、扉が開いた瞬間ナミが飛び出てきました。
次にアイ、レタの順に飛び出てきます。
私も槍をベルトポーチから出します。
アイ、が風の魔術で上からくる蜘蛛と枝伝いに来る大猫を揺さぶります。
大猫は落下し、蜘蛛は蹲り動けません。
動けない蜘蛛にナミが近づくと胴体と腹の部分を切り離して倒します。
大猫は私が落下点に先行し、落ちてくる所を空中で串刺しにしました。
「レタ、他に近寄る魔物らしき物は居るかしら」
爆散してしまいましたがワイバーンは何級の魔物だったのでしょう。




