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第1話 引きニートの転生

 俺、生島裕貴は死んだ。

 医大受験で失敗し、十年以上引きこもっていた。

 ある日、部屋の中でネットをしていたら、家にトラックが突っ込んできて、そのまま押しつぶされた。

 でも、只の穀潰しで家の恥でもあった俺が死んだのは、家族にとっては良いことだったのかもしれない。

 最早、存在すら無視されて、家政婦さんが食事と欲しい物を用意してくれる。

 そして、日々、ただ時間とお金を浪費だけしていた。

 そんな俺が死んで、一体、誰が悲しむって言うのだろう。

 さて、死んだわけだけど、何故か俺は畳の上にいた。

 正確に言えば八畳間の和室で、ドアの横には台所がある一室だ。

 古いアパートの一室にしか思えないような部屋だ。

 はて、俺、死んだよな?

 どうして、こんな場所にいるのだろうか。

 そして、目の前には、一人の女性がいた。

 白いワンピースを着て、金髪碧眼、美人だ。

 まるでモデルみたいだ。

 だが、何故か、その顔には焦燥が見て取れる。


「えっと? 誰?」


 そう言った瞬間に、女神が飛び上がった。

 空中で一回転して、バタンと畳の上に着地。

 その姿勢は、土下座のポーズそのままだ。

 えっと、ジャンピング土下座?

 まじかよ、初めて見たよ。


「この度は、申し訳ありませんでした!」


 透き通るような綺麗な声での陳謝だった。

 一体、何事だろう?

 っていうか、見た目外人ですけど、日本語喋ってる?


「あの、すみません。何がです?」

「この度、ターゲットを間違えて、貴方を殺してしまったのです。何卒示談を! 示談をお願いします! 起訴だけは起訴だけは勘弁してください!」

「はぁ? あのとりあえず、説明お願いします。意味が分からないです」


 本当に、どういう事なのかさっぱりだ。

 目の前の女性は、立ち上がって、スケッチブックを取り出した。

 まずは一枚目をめくると、『今回の事情』と書かれ、下手くそなウサギがマジックで書かれている。

 そのウサギは果たして、必要でしょうか?


「えー、私は転生を司る女神でして、今回、貴方の家のお向かいに住んでいるおじいさんがターゲットでした」


 近所つきあいも無いから、向かいにそんな人住んでいたことも知らなかった。


「ターゲットっていうのは?」

「転生させるターゲットです。転生させるには殺さないといけないので、今回は無人のトラックを遠隔操作したのですけど、間違えて貴方の家に突っ込んでしまいました」


 スケッチブックをめくると、家? らしき物が二つ書かれ、一つにトラックが突っ込んでいるようだ。

 いや、そのスケッチブックは必要なのか?

 画力も低いし……。


「……むしろ、殺し屋に思えるのだけど?」

「いえ、そんな、まさか、転生神です。寿命がそこそこ無いひとを殺して回っているだけでして」

「むしろ死神?」

「いえ、ですから、転生神ですよ?」


 いや、転生神だかなんだか知らないが、殺して回る必要があるのかと。

 えらく物騒な女神だ。


「はぁ、とりあえず、手違いは分かりました。ところで、ここはどこですか?」

「地球とは異なる次元です」

「見た目、古いアパートなんですが?」

「給料が低くて、駅の近くだとこんな物件しか……」


 いや、違う違う、そういうことが聞きたいんじゃない。


「えっと、次元が違う?」

「違いますよ?」

「証明は?」

「照明は百Wです」


 違う、そうじゃないそうじゃない。


「いや、見た目、完全に日本の古いアパートなんですが、本当に別の次元?」

「逆に聞きますが、なんだったら、別の次元だと信じるのですか?」


 そう言われると返答に困る。

 どんな空間だったら別次元だと信じれるだろうか?


「宇宙とか?」

「空気無くて死んじゃいますよ」

「あ、はい」


 そこはもう置いておいた方が良さそうだ。

 さて、先ほど、示談がどうこうって言っていたけど、どういう話になるのだろう?


「えーっと、示談って言うのは?」

「それですね。ええ、記憶を受け継いだまま特殊な能力を持って、転生ぐらいしかできないんですが、それでいいでしょうか? 通常は死んだ場合、記憶を失って転生になるので、かなり優遇はしているのですけど?」

「いわゆる、転生チート?」

「いわゆる、転生チートです」


 ネット小説で、最近よくあるパターンのか。

 本当にあるとは思ってもいなかった。

とりあえず、ここでグダグダしていても仕方ないだろうし、転生するのでいいのかな。


「じゃあ、お願いします」

「では、こちらを」


 とダーツを数本渡される。

 ダーツバーにある、あのダーツだ。

 不思議に思っていると、女神が押し入れからなにやら丸い板を取り出してセットし始める。


「えっと?」

「まずは転生先ですね」


 その丸い板には、剣と魔法のファンタジー異世界、中世ヨーロッパ、江戸時代、原始時代、ディストピア近未来、白亜紀、男女貞操逆転世界、宇宙世紀等など、色々と書かれている。

 まさか?

 もしかして?


「ダーツで決めるの?」

「基本的にそんな感じです」


 えー、雑ぅ。


「選べないんですか?」

「選べないんですよ。弊社はそういうシステムでして」


 会社なの?

 転生女神って社会人なの?


「では、どうぞ!」


 と女神が板を回した。

 しかも、回されるのかよ。

 これは、問題だ。

 原始時代どころか白亜紀に転生して生きながらえる気がしない。

 できるだけ、生きやすそうな……世界に行けますように。


「ええい、ままよ!」


 ダーツを放り投げた。

 そこで、気がついた。

 的から外れた場合、どうなるのだろうか。

 だが、それは杞憂に終わり、ダーツは的に刺さった。

 徐々に回転が収まっていき、女神が手で止めた。

 果たして、ダーツはっ!

 

「おめでとうございます。剣と魔法のファンタジー異世界ですね。要はラノベっぽい感じですね。モンスターとかもいますけど、割かし人気のあるコースですね」

「あー、やっぱり、人気あるんだ」

「ええ。では、次は種族ですね」

「種族?」


 えーっと、自動的に人間に転生するわけじゃないのだろうか?

 女神がダーツを抜いて、的の紙をぺらっとめくった。

 今度は、人間、エルフ、ドワーフ、オーク、リザードマン、スライム、魔族、剣、スクール水着、リコーダー等など人間系のスペースが多いがモンスターや無機物までのっている。

 だが、それ以上に二カ所ほど気になる点があった。


「回す前に、すみません」

「なんですか?」

「的の真ん中にタワシって書いてあるんですが?」

「書いてありますね」

「当たると、タワシに転生するんでしょうか?」

「タワシに転生します」


 女神がにっこりと微笑みながら応えてきた。

 その的、どっかで見たことあるぅ。

 っていうか、タワシに転生して、どうしろと?


「あと、一番細いスペースにパ○ェロってかいてあるんですが、貰えるのでは無く?」

「パジェ○に転生します」

「東京○レンドパーク!?」


 もう何年も前に放送終了しているのですが?


「では、張り切ってどうぞ!」

「ちょっと待って、まって!?」


 俺の叫びもむなしく、的が回転し始めた。

 今回も非常に重要だ。

 出来れば人間がいい。

 次にエルフ辺りだろか。

 いや、最低でも生物だ。

 無機物なんかに転生したくない。


「パジェ○! パ○ェロ!」


 女神が某番組のように○ジェロコールをし始める。

 いや、今の場合、そこは当たりじゃないだろう。


「えい!」


 今回も覚悟を決めて投げた。

 タワシだけは避けなければ。

 的の回転がゆっくりとし始め、女神がまた的を止めた。

 果たして、ダーツは!?


「人間ですね。無難ですけど大丈夫ですか?」

「よしっ!」


 今のところ、無難オブ無難で来ている。

 順調だが、これはまだ続くのだろうか?


「では次ですけど、立場です」


 また女神がパラリと的の紙をめくった。

 今度は、農民、商人、兵士、勇者、賢者、女騎士、魔王、四天王、悪役令嬢等など書かれてる。

 女騎士、悪役令嬢の場合、女性として転生するのだろうか。

 あまり、性別が変わるっているのは受け入れにくそうだ。

 が、またしてもそれ以上に二カ所ほど気になる点がある。


「パ○ェロとタワシが残っているんですが!?」

「いやー今月のコースは予算の都合上、こうなってしまいまして」


 人間に転生するのに、立場がパ○ェロとかタワシってどういうことだろうか?


「まぁ、立場はレベルが二十まで上がれば神殿で転職できますから」


 それってド○クエ?


「タワシのレベル二十ってなんなの?」

「では、どうぞ!」

「だから、まってよ!?」


 俺の叫びもむなしく、的が回転し始めた。


「○ジェロ! ○ジェロ!」

「だから、○ジェロコールすんな!」


 結局投げたけど。

 突き刺さったのは、○ジェロ、の隣の農民だった。


「いやー、惜しかったですね」

「何故、そこまで○ジェロを押す?」


 俺の疑問とは裏腹に、女神がさらに的の紙をめくる。

 え、まだあるの?


「最後は、能力ですね。祝福とかチートとも言いますが」

「あ、はい」


 今度はパジェ○とタワシは無くなっていた。

 しかし、書かれている能力だけど、死に戻り、時間停止、回復魔法、究極破壊魔法、能力奪取、努力せずにちやほやされる、鬱展開自動回避、完全記憶能力、未来予知、ウィキペディア知識持ち、無機物を食材にする能力、ゴム人間になる能力、ウナギの完全養殖等など。

 今回に関しては、うん、当たり外れが多い印象ではある。

 どこかで見たことあるような能力が混じっているけど、パクったのだろうか。


「ではどうぞ!」


 再び回り始める。 

 とりあえず、剣と魔法のファンタジー異世界に人間の農民として転生するのは確定か。

 無難オブ無難にまとまっているあたり、俺らしいと言えば俺らしいが。

 あとは、能力だけど、とりあえずあっても困らない物ばかりだから、少しばかり気楽にダーツを投げた。

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