97. 幻流の剣士③
「我が裁きの雷を避けるとは、少しはできるようだな」
暗闇から現れた男が静かに言った。
仄暗い月明かりに照らされるその姿は、立ち枯れた細木のようだ。
その右手には抜身の曲刀が握られていた。
男の出現に合わせて、暗闇からわらわらと男の部下と思しき者達が現れた。
「なんだてめえはっ!ゲオルグの手のモノか?」
ガイアが叫んだ。
「いかにも。紋章士ゲオルグ様が配下、幻影死剣士リセンとは我の事よ」
リセンと名乗った男が不敵に笑った。
「ちっ・・・、ご大層な二つ名だな。完全に名前負けしてやがるぜ」
「ふ、弱い犬程よく咆えるとは、よく言ったものだ。覚悟せよ。お前達はただでは殺さぬ。ゲオルグ様に歯向かった大罪、その身に地獄の苦しみを与えることにて贖ってやろう」
リセンがぶつぶつと何かつぶやくと、曲刀の刀身が青紫の光を帯びた。
「幻流か・・・厄介な。ガイアお前は周りの雑魚を殺れ。こいつは俺が引き受ける」
「おうよっ!まかせとけ!」
ガイアが叫ぶように応えた。
クラウスに雑魚扱いされた男達が静かにざわめく。
クラウスは長剣を抜くと、下段に構えてリセンと対峙した。
「ふ。サミダレ流か。剣を振るしか能のない貴様らが、我らがツヴァイフボーデン流に敵うとでも思っているのかね?」
「ふん。言ってろ」
クラウスは言うや否や体勢を落とし、低い体勢のままリセンとの間合いを一気に詰めた。
そして下段から一息に切り上げる。
「ふんっ!」
リセンは上段から素早く曲刀を斬り下ろしてクラウスの一撃を受けた。
しかし、受けたロングソードから曲刀をすり抜けて2つの刀身がリセンに襲い掛かった。
「っ!」
リセンは即座に背後に跳び、辛うじてクラウスの攻撃を避けた。
そして着地と同時に、追撃を駆けようとしていたクラウスに向かって曲刀を振り抜く。
「幻閃っ!」
リセンの声ともに曲刀に込められた雷の魔法が解放された。
雷の魔法は三ヶ月状の雷の刃となり、クラウスに向かって一気に突き進む。
「ちっ・・・」
出鼻をくじかれたクラウスは小さく舌打ちをすると、横に大きく飛んで雷の刃を避けた。
再び静かに対峙するクラウスとリセン。
「確か、無影刃とかいったか。連撃系のスキルと合わせて使うとは、雑魚流派のくせになかなか味な真似をするではないか」
「・・・くだらねえ。挑発のつもりか?どうやら幻流ってのは口だけ達者らしいな」
「・・・口だけかどうか、その身に刻み込んでやろう」
「できないことは言うもんじゃねえぜ」
互いに睨み合い隙を窺う。
渦巻く殺気は次第に強くなっていった。




