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転猫  作者: 相川秋実
第一章
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4. 個人的に爬虫類は苦手です。

観察眼(アナライズ)を得たので、地上に出る足枷になっている敵の情報を集めることにした。


なるべく遠くから、まずは情報だけ入手して、その後で対策を考えよう。

方針を決めると、意を決してボスネズミがいる方へゆっくりと歩いていく。

アナライズで、奴の得体の知れなさを看破できるだろうか?

広場の真ん中あたりに来た時、発動させていたアナライズがボスネズミに反応した。


魔ネズミ族

ノーマルスキル:かみつき(貫通中)、毒かみつき

魔法:ホルフィズライズ


ふむ、小さいネズミと同じモンスターなのか。いや、族ってことは同じ系統だけど強い個体なのかもしれないな。

あ、しかもなんだこいつ。ネズミのくせに魔法使うのか。

とりあえず、どんな魔法なのかアナライズしてみた。


ホルフィズライズ:

 自分が仲間と認識するもの(自分含む)の物理攻撃力・耐性を上げる。


なるほど。こいつは厄介だ。

ただでさえ数が多いネズミが、物理強化された状態で攻めてくるわけか。

群れのリーダーらしい有用なスキルである。意図して得たのであれば敵ながら天晴れと言わざるを得ないだろう。

これは無策で突っ込んでたら死んでたかもしらんね。


正面からぶつかると、ちょっと厳しい戦いになりそうだ。

ボスネズミを攻略するには、やはり何らかの作戦は立てておきたい。

俺はくるりと踵と返し、元いた場所へと帰っていった。


さて、どうやって突破するか?

ボスネズミをアナライズした帰り道。俺は歩きながら、奴とどう戦ったら良いかをシュミレーションしていた。

なにか他のスキルや魔法を得てから戦いたいところだが、いかんせんそれらの入手方法がわからない。

・・・そろそろ出番なんじゃないですかね山田君?この状況を打開できるような、何か良いアドバイスをください。


ふと、思案にくれる俺の目の前を、ちっさいトカゲがトテテテテと横切っていった。

捕食者を前にして良い度胸である。

俺は素早く動くと肉球でトカゲをはたいた。

トカゲは俺の予想よりも大きく吹っ飛び、地面に着地すると勢いよくゴロゴロと転がっていき、最後には仰向けになって動かなくなった。

・・・もろいな。

小動物の儚さに思いをはせていると、俺の目の前をさらなる影が横切った。

それは、仰向けに動かなくなったトカゲに向かって慌てたように走り寄る、もう一匹の小さなトカゲだった。

新たに現れたトカゲは、微動だにしない同胞を両前足で揺り動かしながら、へにゃーへにゃーと必死に呼びかけている。

若干体が大きいので、おそらく俺がふっ飛ばしたトカゲの兄なのだろう。

・・・・・・・・・うん。なんか悪いことをしたな。ごめんね?


俺は、ゆっくりとトカゲ達に近寄った。

兄トカゲは近づく俺に気付いてハッとしたような反応をすると、俺の方に向き直った。

そして俺に向かって、へにゃー!へにゃー!と必死になって威嚇をしてくる。

・・・悪かったよ。てかトカゲってこんな声で鳴くんだっけか?

俺は兄トカゲを手(前足)で傷つけないように脇によけると、もう一方の手(前足)で仰向けになって動かないトカゲに触れた。

兄トカゲがそんな俺の行動を阻止しようと死にもの狂いで前足にかみついてきたが、とりあえず無視。

そんなに強く叩いてはいないから弟トカゲ君は死んではいない・・・はずだ。たぶん。触れてみた感触も、特に骨とか何かが砕けた感じはしないし、おそらく気絶してるだけだろう。・・・きっと。

「にゃ~ん(ヒール)」

俺の肉球が淡く緑色に光り出し、弟トカゲを包んでいった。

しばらくして、微動だにしなかった弟トカゲが仰向けの状態からくるりと回り起き上がった。

兄トカゲが感動したように、へにゃーっ!と声をあげて弟トカゲに抱きつく。

弟トカゲは状況が分かってないのか頭の上に?を出して呆けている。


うん・・・まあ、よかったね・・・?

俺は複雑な思いで、そんな感動的な場面を見ていた。


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