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タコジュは今、複製中だった。この期間をタコ星人は「ゾータコ」呼んでいる。
タコ星人は細胞だけで複製を作れる。もともとタコ星人の足は切れても無くなっても再生可能だった。だが、完全な一個体を復元できるようになったのは最近で、2年前に完成された培養方法だった。
タコジュは一番新しい個体だったので、複製主任に選ばれ、複製室でタコジュイチ、タコジュニ、タコジュサン、タコジュシ、タコジュゴの5個体の複製に成功し、当のタコジュが教育主任にもなっていた。
不思議なことだが、複製元になった個体は、自分の複製個体に対して、テレパシーのような効果を発揮できる。この効果は「タコネン」と名づけられていた。タコジュはタコネンをもって自分の経験を新しい5個体に伝え終わったところだった。
「やあやあ、新しい仲間が増えたね」
とタコニがうれしそうに複製室に入って来た。
「しかも、今、タコネン完了しました」
とタコジュが言った。
「あ、そう。じゃあ、ちょうど良かった」
「どうかしたっすか?」
と聞くタコジュ。
「うんうん。航海時間が長いとね、混乱する個体が増えるんだよね。もうそろそろそういう時期じゃないか、とは思っていたんだけどね」
「あらら。そりゃ大変すね」
「ま、いいんだ。そういう個体には眠ってもらえばいいんだけどね。でも一度に3個体だめになったんだよ。しかも、あと2個体もちょっとトンチンカンになっていて、怪しい。ただ、完全な混乱と記憶障害とも違うようなので、まだ様子を見る必要があるが…」
「ひょ~。5個体複製しといて、正解だったっすね」
「そうね。あと30年くらいはこれで持つかな」
「だといいっすね」
「もう次のゾータコの用意を始めた方がいいかも知らんな」
「え?」
「一番新しい個体という意味では…、ゾータコの使命を受けるのはタコジュゴになると思うが…、タコジュゴは大丈夫かな? 今度テストせんとな」
「あ、そうすね」
「ま、焦りは禁物だな。数年の実務を経て、またテストせんとな」
「そうすね」
タコニはタコジュの言葉にちょっとイラっとしながら
「若い奴とは、話がかみ合わんな」
と言い、
「そういうもんすか?」
というタコジュをギロリとにらんだ。
翌日、運転スペースで、運転しながらのミーティングが開かれた。
タコジュはしばらくぶりにそのミーティングに参加した。
「もともとこのタコタッコ号は、新資源確保のためにタコ星を出発しましたが、今のところ、新資源は確保できていません。それについては、引き返し地点に到達するまで捜査し続ける必要があると思います」
とタコニが報告した。
「一方、タコジュのゾータコには成功しまして、これは先週も報告しましたが…、昨日、タコジュのタコネンが完了したとの報告を受けました」
ここまでの報告で、それまでの緊張感が少しほぐれた感じだった。
「次のゾータコですが…、一番新しい個体、タコジュゴが複製主任にふさわしいと思われますが…。いかんせん経験不足が心配されますんで、タコゴあたりも合わせて複製に入ってですね、複製元二個体で、複製と教育を行った方が良いのではないか、と思われます」
「え? ぼく? ぼくでいいの?」
というタコゴの、返事で一同また緊張状態に入った。
「ううむ。タコゴ? 昨日のタコイチの混乱について説明できるか?」
とタコハチがタコゴに尋ねた。




