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extra scene 創造の記憶

※本内容はメインストーリーとは関係のない外伝となります。

 第一章の内容を踏襲していますが、第二章の内容には続いておりません。

 あの戦いから幾らかの月日が経った。


 穏やかな生活を送っているセフィリアとセレーネに、珍しい客人が来たのである。


「ルシフェル……?」

「ああ、お前達に話をしておきたい事があって来た」


 かつてもう一人のセフィリア、デストラクターを相手に私やセレーネと共に戦った天使。先代セラフィムを愛し、謀殺された結果、天界全てを敵に回した存在である。

 一体何の用だろうか?

 ルシフェルは相変わらず無表情かつ冷たい眼差しな為、吉事か凶事がすら読み取る事が出来なかった。


 とりあえず、ルシフェルを小屋の居間へと通し、セフィリアとセレーネは話を聞く事にする。


「セフィリアよ、お前がデストラクターに目覚めた時、声が聞こえなかったか?」

「……ええ、聞こえました」

 セフィリアも予想していなかった質問内容に、戸惑いつつも答えた。

 確かにあの時、声が聞こえた。全てを破壊し、狂気に身を委ねるように促され、そして私は委ねてしまった。

 結果、村に居た命ある者、形ある物を破壊しつくしてしまった……。


「私が絶望のどん底に落とされ、私自身の心が弱かったせいであのような事が……」

「セフィリア様、そんなに思いつめないで、悲しい顔しないで」

 忌まわしき過去、最初の罪を思い出し表情が曇るセフィリアに、セレーネは優しい笑顔と声で励ました。セフィリアもセレーネの笑顔を見て安心し、ゆっくりとセレーネの手を握って笑顔で返した。


「果たして、本当に己の弱さだけであれだけの力を持った存在が生まれるのだろうか?」


 今までデストラクター誕生はセフィリアの負の感情の産物だと思っていた、しかしルシフェルはそれを真っ向から否定してきたのである。


「その声の主は、セフィリア自身ではないのかもしれん」


 セフィリアにとっても、セレーネにとっても、興味深い仮説であった。

 では、本当にそうだとして、一体誰が何の為にあんな破壊の権化を生み出したのだろうか?

 その疑問を払拭せん勢いで、ルシフェルは淡々と語りだす。


「デストラクターは主として覚醒する以前のセフィリアを全てにおいて凌駕していた。つまり、セフィリア以上の存在がデストラクターを誕生させたのだとしたらどうする?」

「私の絶望が、私自身の力の限界を超えたという考えはないのですか?」

「それはきっかけにすぎない……、とするならばどうだ?」


 そこにいる三人は考え、少しの間を置いた後、全員は共通の答えを見つける。


「天界の主以上の存在、でもそんな存在いるのかなあ」

「それが私にも解らないのだ、故に主の力に目覚めたセフィリアならば何か解ると思って来たのだが……」

 セレーネは頭を少し掻いた後、頬杖をし、ルシフェルは目を閉じ腕を組んで二人は物思いに耽ってしまう。

 しかし、セフィリアだけは違っていた。


「全ての母であり、父である存在」

「どういう事だ?」

「本当にそんなのいるの?」

 セフィリアは一度だけだが対面していた。デストラクターとの戦いが熾烈を極めた時、七色に輝く少女の姿として……。

 あれこそが、ルシフェルやセレーネが言う、天界の主以上の存在なのであろう。

「私が主の力に目覚める直前、確かにいたのです。七色に輝き、自身を全ての母と呼ぶ少女の姿を……。ぼやけててはっきりとは解らなかったのですが、対峙している時は、まるで全てを見透かしているようでした」

「あの時、全員気を失っていたんだよ?」

「変な夢を見ていた、と言いたいが、本当ならば……」


 セフィリアの話を聞き、ルシフェルは再び熟考する。

 少しの間、沈黙と緊張感がこの場を支配していた。


「一度、確かめる必要があるだろう」


 目を開き、ルシフェルは事の真相を確かめるべく提案する。

「デストラクターと同じ状況を再現するのだ、そうすれば再び、その七色の少女に出会えるかもしれん」

「はい……」

「やって見よう」

 セフィリアとセレーネは一つ頷き、返事を返す。

 三人は、全ての罪が始まり、そしてデストラクターと戦った場所へと向かった。



「あの時の状況を再現するのだ、良いか? セフィリア、セレーネ」

 ルシフェルの指示により、セフィリアとセレーネはあの時と同様に手をつなぎ、互いの力の全てを解き放つ。

 セレーネは月の女神の力である白銀の光を、セフィリアは主の光である七色の光を纏う。

 二つの力が混ざり、合わさり、やがて周囲は二人の光によって染められてしまった。

 セフィリアは、力が高まる事で、全身を何かに強く引っ張られるような感覚だった。そして、力の解放の度合いによって意識が遠くなっていき、それでも解放し続けていく。




 あまり近くない過去に、同じ感覚を味わっていた。

 水の中をたゆたうような、地に足がつかない様なふらふらと、ふわふわとしたような曖昧な状態に身を委ねている。

 それはとても温かく、まるで優しく包まれているような心地よさを感じる。

 セフィリアはゆっくりと目を開けていく、左手にはセレーネの色白い手が握られていた。

「起きて、セレーネ」

 翼を広げ、体勢を整えようとした時、セレーネも目を開き我を取り戻した。

「うーん……、ここはどこだろう?」

「どうやら、私たちは成功したようです」

 不慣れな感覚にセフィリアと同じく翼を広げて体勢を整えようとするが、いまいち上手くいかない様子である。それでも四苦八苦の末、なんとかセレーネが自身のコントロールを取り戻した時、目の前には七色に輝く少女が立っていた。


「また、あなたに会えるなんて……」


 今度はしっかりとはっきり見えていた。

 七色の光を全身から発しており、同様の光を身長とほぼ同じ長さの髪からも発している。

 生まれたままの姿をした、華奢な少女の姿がそこにあった。


「あなたが、天界の主を超える存在なの?」

 セレーネは声を震わせながら問いかける。それは憧れや恐れや複数の感情が入り混じったような感じであった。

 七色の少女はセレーネの質問に対し、優しい笑顔で答え始める。

「私が天界の主を創りました。天界の主だけではなく、魔界の主も、天界や魔界そのものも……。全て私の創造物です」

「ほ、本当ににいたんだ……」

 セレーネは声だけではなく、全身震えていた。セフィリアの握る手はより強さを増していた。


「もう一人の私を生み出したのは、あなたですか? 生み出したのならば、何故です?」


 セフィリアはセレーネの強く握る手を握り返して、遂に核心へと迫る。


 七色の少女はその質問を聞いた瞬間、今まで見せてなかった悲しげな表情をした。そして、真っ赤な涙……、恐らく血なのだろう。血の涙を流しながらセフィリアに答えた。

「私の創った物は失敗作でした。だから、私にはこうするしかなかったのです……。ごめんなさい、ごめんなさい……」

 七色の少女は何度も謝り続けた、まるで全ての所業は自分のせいと言わんばかりだった。


「もう一度、全てを壊します。そして次こそは皆が幸福な世界を創るのです。もう一人のあなたは、その為に生み出された存在」

 七色の少女の輝きがより一層増すと、少女の背中から白と黒の翼が生え、七色の光を放つ瞳は片方が濃い紫色、もう片方が明るい銀色となっていく。


「ジェネレーション:秩序と混沌(トゥルースオ)を携えし存在(アファルス)


 それはまるで、天使と悪魔を融合させたような姿であった。


「もしかして……、私たちを殺そうとしているの?」

 セレーネの体の震えはとまるどころかより激しくなっていた、姿を変えた七色の少女を見た事と、あの姿は私たちを倒すためのものである事、それを直感で確信した事をセフィリアは理解していた。

「セレーネ、全力で戦いなさい! さあ、早く!」

 セフィリアは主の力を解放し、セフィリアの声で我に返ったセレーネも銀の十字架の剣を出して構える。

 今までの柔らかい印象とはまるで違う、目があっただけで凍結してしまいそうな冷たい視線と、見下した表情をしつつ、七色の少女は手を広げた。


「メギドの終焉極光(イニシャライズライト)、ディヴィジョンブレイク」


 右手には白き光の力、左手には黒き闇の力が集約していく。

 力がある程度溜まった事を確認した少女は、両手を合わせる。

 すると、交わる二つの力が飛び散り、セフィリアとセレーネに雨の如く降り注いだ。


 かつての天使最強と言われたミカエルが使用する禁断の天空術、メギドの滅光ハイブレイクと同じ原理の天空術である事は、セフィリアは解っていた。しかし、破壊力も速度も物量もハイブレイクの比では無い。

 白と黒のエネルギーの雨は着弾し、セフィリアとセレーネの居た場所を同じ色の爆煙で覆い隠してしまう。


 七色の少女は無言のまま、爆煙を見つめていた。その時だった。

「滅亡の破光、カタストロフィ!」

「全てを穿つ貫通の神光、ピアシングオブディバイニティ!」

 光の速さを伴ったセレーネと、巨大な光のエネルギー体が七色の少女に向かってきたのだ。

 セフィリアの放った光のエネルギーは、セレーネの銀の十字架の剣と交わり、そして七色の少女の黒き翼を貫いた。


「これが私たちの力を合わせた天空術……」

「二人だったら何だって超えられるよね」


 心の中で、セフィリアとセレーネは会話した。二人の絆の深さが、七色の少女、創造主の力に打ち勝ったのだ!

 セレーネは光の速度を保ったまま、セフィリアの所へ戻ると、そのまま倒れるようにセフィリアの胸へ顔を埋めた。

「やったよ! 私たち勝ったんだよね!」

「ええ……」

 二人は先ほどの攻撃で満身創痍であった、互いのぼろぼろな顔を見て、くすりと笑い出す。

 これで世界の破滅を防ぐ事が出来たのだ、再び穏やかな生活が戻る。


 翼を射抜かれた衝撃で、片翼の少女は倒され、微動だにしない。


「ここを出ましょう、外でルシフェルが待っているはずです」

 セフィリアとセレーネは、再び互いの手を握り、その場から去ろうとした。



「ジェネレーション:何者も寄せ付けない(アブソリュート)絶対的な存在(ワードオフ)



 七色の少女が突っ伏したまま謎めいた言葉を発すると、辺りの景色はどろどろと溶ける様に変化していき、あっという間に赤黒い石壁に覆われた広間になる。

 それと同時に、七色の少女も変化していく……。

 少女はゆっくりと立ち上がり、残った白き翼は抜け落ちると、全身を分厚い金属で覆っていき、オッドアイだった瞳は両目とも灰色に変色し、暗き闇を湛える。

 片手には自身の身長の数倍はあろう巨大な剣が握られていた。


「お、終わってないんだよね……?」

「セレーネ、今一度だけ力を貸してください」

 二人はふらふらになりながらもしまった武器を再び取り出し、七色の少女、今は鋼鉄の騎士とも呼べる存在へその切っ先を向けた。


「あなたも全てを拒むのですね。ならば、私が受けれましょう。たとえそれが……」


 セフィリアは目を閉じ再び力を解放する。栗色の髪は銀色へと染まっていき、七色の少女と同様の光を身に纏う。


「全ての母であったとしても!」


 目を見開き、神速を以って踏み込む、神剣サンクトゥスを騎士めがけて振るう。

 白銀の火炎を纏った剣は確実に騎士を捉え、その全てを拒まんとする意思毎斬り裂かんとした。


「……うう」

 セフィリアの剣撃は、騎士の重厚な剣の前に阻まれていた。

 細い腕が小刻みに震えている、この一撃にどれだけの力を注いだだろうか。しかし、通じなかった。傷一つつける事が出来なかった。

 鋼鉄の騎士は巨大な剣を大きく振るうと、セフィリアは体ごと大きく吹き飛ばされてしまう。


「セフィリア様!」

 セレーネが空中で無防備なままのセフィリアに急いで駆けつけようとしたが……。

 光の速度を上回る速さで鋼鉄の騎士は吹き飛ばされたセフィリアに追撃を加える。セフィリアは重厚な剣によって地面へ叩きつけられてしまった。


「セレーネ、わ、私は大丈夫ですから……」

 この子は守らなければならない、この子に余計な心配はかけたくない。

 その思いだけでセフィリアはなんとかふらふらになりながら立ち上がる。

「このままじゃ二人とも負けちゃうよ! セフィリア様ぁ!」

 セレーネは泣きそうになりながら訴えた。

 確かにこのままでは私たちは倒されてしまう、その後に来るのは世界の破壊、そして新たなる創造だろう……。

 私は誓ったんだ、約束したんだ!


「セレーネは、私が守るからね」

 セフィリアはセレーネの盾となるよう、セレーネの前に立った。

 セレーネはそんなセフィリアに後ろからそっと抱きつく。

「いったじゃない、私を頼って欲しいって……」

 優しいぬくもりが背中からゆっくりと伝わっていく、セレーネの温かさがセフィリアの消耗した体に僅かだが気力を送っているような気がした。

「今の私にはこれくらいしか出来ないけれど、少しでもセフィリア様の頼りになりたいの」 

「ありがとう、セレーネ」

 セフィリアはサンクトゥスをしまい、杖を出すと、大きく息を吸う。

 両手に残された自身の全ての力を集中し、……最後の天空術を解き放つ。


「主の光、万物を砕き滅ぼせ、崩界の至光アルティメットノーブルライトセイクリッドピュアネスディザスター!」


 七色の光は真っ直ぐ伸びていき、鋼鉄の騎士の鎧に直撃する。

 騎士はセフィリアの最後の抵抗にもまるで怯まず、攻撃を受けながら前進し手に持った巨剣で二人に引導を渡そうとしてくる。

 セフィリアは歯を食いしばり、自分の内なる力を全て絞り出していく。集中力は極限を超え、感覚は研ぎ澄まされ、はっきりと覚醒している事がわかった時だった。



「うう……、ごめんなさい……」



 自分の中で何かが音を立てて壊れた時、セフィリアが纏っていた七色の光は消え、銀色の髪は本来の栗色に戻る。

 まるで全身が重く硬い物質になったかのように、言う事を聞かない。

 セフィリアは手を下ろした後、前のめりになって倒れてしまった。


「セフィリア様!」

セレーネの悲痛な叫び声が聞こえる。私はもう動けない、約束を……守れそうに……。


「逃げて、セレーネ……、せめてあなた……だけは……」

「嫌だよ! ずっと一緒だよ!」

 セフィリアは最後の力を振り絞ってセレーネに逃げる様伝えたが、セレーネは泣きながら首を横に振り拒絶した。

 セレーネは立ち上がると、ゆっくりと迫ってくる鋼鉄の騎士めがけて恐らく残り最後であろう力を解き放つ。


「私がセフィリア様を守ってみせるから! 全てを穿つ貫通の神光、ピアシングオブディバイニティ!」


 光の速さを伴い、セレーネは騎士に向かう。

 何が何でも守りたい。その強い思いに答えるかのように、銀の十字架の剣を騎士の分厚い鎧に突き立てることが出来たが……。


 騎士は巨剣を振るうと、セレーネの体は軽々と吹き飛ばされてしまった。


 セフィリアはその全てを見ていた。だがもう指一本すら動かす事が出来ない。ただ無情な現実を直視するしか出来なかった。

 顔を伏せ、号泣しようとしたその時……。


 

 騎士の今までいかなる攻撃をも寄せ付けなかった鎧に亀裂が生じ、やがて亀裂は鎧全身に広がると、ガシャリと甲高い音と共に粉々に砕けてしまった。

 再び生まれたままの姿となった七色の少女は目を見開いたまま倒れていく。


「セフィリア様、今度こそやったのかなあ……」

「ええ……、もう大丈夫でしょう」

 互いが互いを守りあう、強い意志が今度こそ創造主に打ち勝ったのだ!


「ねえセフィリア様、家に帰ったら一緒に寝よう~」

「そうですね、ここまで消耗したのは久しぶりです。私も久しぶりに眠りたいですね」

 二人はお互いの体を支えにしながらなんとか立ち上がり、笑顔でこの場から去っていく。

 赤黒い壁に覆われた空間も、気がつけば自分たちが来ていた時と同じ状態に戻っていた事から、今度こそ勝利を確信した。

 これで再び穏やかな生活が送れる。またセレーネがいる幸福な日常に戻れるのだ。


  















「ジェネレーション:真なるアースマザー」



 背後から、再び声がした。

 セフィリアは酷く寒さを感じた、セレーネも同じ感覚だっただろう。

 二人は、恐る恐る振り返った……。


「う、うそでしょ……」

「そんな……」


 二人はただ愕然とした、そして恐怖した。

 七色の少女は、未だかつてない程に虹色の輝きを放っている。見ただけで硬直し寒気がするほど力を感じるのに、表情は今までとは違う、穏やかで、優しそうで、そして物憂い。


「何故です? 何故、私の邪魔をするのですか?」


 悲しげにセフィリアとセレーネに問いかけた後、七色に輝く瞳がセレーネを方を向く。

 すると、一瞬の眩い輝きと共に、セレーネはまるで雷に撃たれたかの様に一瞬大きく痙攣した後、意識を失ってしまった。

「セレーネ!」

 七色の少女が何をしたのか、セレーネが何をされたのか、セフィリアには全く解らなかった。

 結果として、ぐったりとしたまま動かないセレーネが横に居るだけだった。


「こんな世界に何の意味があるのでしょうか?」


 七色の少女の声は、セフィリアには聞こえない。ただ、セレーネが致命的な攻撃を受けて危険な状態である事、もう少しの力も残っていないセフィリアにはなす術がない事の二つが深い悲しみと、憤りと、そして、七色の少女に対する怒りに変わっていく。


「うわあああ! あなただけは絶対に許さない!」

 セフィリアはセレーネをその場に寝かせると、大声をあげてサンクトゥスで七色の少女に襲い掛かる。

 怒りに身を任せ、七色の少女に何度も何度も攻撃するが、かつてデストラクターと戦った時と同様に、まるで何もなかったかのようにすり抜けてしまう。

 それでも何度も何度も、セフィリアは叫びながら斬り続ける。


「あなたのその思いも、愛情も、今まで生きてきた事さえももう無意味なのです……」


 七色の少女はセフィリアの方に目線を向けると、セフィリアは大きく吹き飛ばされてしまった。


「ごめんね、ごめんねセレーネ……」

 何度も何度も、セフィリアは物言わぬセレーネに謝り続けた。

 そして、セフィリアは泣いていた……。


「終わりにしましょう」


 七色の少女は手の平を動かないセレーネに向ける。セフィリアはもてる全ての力を使って疾走すると、翼を広げ、セレーネの盾になる様覆い被さる。

「もう一人にはしないからね、ずっと私がついてるからね……」

 セフィリアは力無く最後の言葉を言い残し、目を閉じた。



 もしも、命尽きた後があるならば、この子の大事な存在でありたい……。










「……ここは?」

 目が覚めるとそこはセフィリアとセレーネが住んでいる小屋の中だった。

 セフィリアの手にはセレーネの手と、一枚のメモがあった。


「セレーネ!」

 セフィリアは慌てて横になったセレーネの体を揺らした。

「う、うーん……、セフィリア様……?」

「良かった、無事で良かった……」

 セフィリアは泣きながらセレーネに抱きつく。

「あれ? 私たち戦っていたのに……?」

「よくは解りませんが、私もセレーネも何とか生きているみたいです」

 セフィリアは自身の敗北、即ち死を覚悟していた。あのままセレーネと共に消滅するはずだと思っていたのに、一体どういう事なのだろうか。

「セフィリア様、その紙は?」

 セレーネに促されるように手に握っていた紙を広げる。


 ”あの後、ぼろぼろのお前達が出てきた。

  とりあえず応急処置はしておいた、また回復した時にそちらへ向かう。

  その時、詳しいことを聞かせてもらう。            ルシフェル”


 二人は、お互いに目を合わせて、この不思議な出来事を考えたが答えは出なかった。一体、何だったのだろうか?


 結局、七色の少女は本当に全ての母となる存在であったのだろうか?

 そもそも、本当にそんな存在がいたのかさえ、今ではあやふやなままであった。


 しかし、セフィリアのセレーネに対する深き愛情が、彼女たちの一命を取り留めた事、七色の少女の最後の攻撃をしなかったきっかけであった事は、今後二人は知る由が無いのであった。


「あなたたちが、生まれてくれてよかった」


                                 第一章 完結

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