第六話『戦闘と埋葬』
7月4日 改変
変わったなら変わったと身体のことは一旦全て置いておくと、考えることと言ったら当たり前に霧のこと以外なかった。
「あんな変な霧と言うか森か?、出来そうなの魔法位だよな。まあ魔力がある世界なら変な自然災害もあるかも知れないけどさ、調べることも出来ない今は魔法位しか思い付かない」
あんな環境を変えられるような技術があるなら、ガッシ…ドカーン俺は死んだ。そんな簡単に片付けられるレベルの討伐対象一直線だ。
それに空間操作なんてうたってたスキルも何かを引き寄せたり力の道を作る位で、他はまだ手の近くの空間かき混ぜる位しか出来ない。近接は大丈夫かも知れないがそれ以外はキツイ。そりゃ悪魔で生きやすい職業が三つしかない訳か。いや、三つもあるだけ温情かも。
「今のところ、昼…いや前か?」
体内時計がおかしいのかも知れない。出来るだけ真っ直ぐ平坦な道を走っていったとは言え、森を横断したはず何だけど。腹は空かなかった。
「はぁぁあ……」
一つ大きなため息をこぼす、今は何も考えずにふかふかの柔らかいベットに入りたかった。そんな空想をしながら川を見ると。
「うん?…なんだあれ、…潰れた果物か?」
ここから見えないほど遠い上流の方から、落ちて潰れたよりも潰された様な果物や指の後が着いた小動物の死体なんかが流れてくる。
「飲み水を下水代わりにされちゃたまらないな、よし見に行くか」
見に行くと言いながらも、複数の道具を作っていく。前は生き物を傷つける道具とかあまり考えなかったが、最初に何も無しで追いかけられたからか今は準備できるのが楽しかった。
「こんなんでいいか」
作った道具は直径1センチ刃ばたり20センチ位の針5本と鞘、そして手袋とサンダルだ。
針は錬金術で何度も被せながら強く圧縮し、先から鍔までツルツルに研いた。使い捨てにしても結構な力作だ、多少は重いが頑丈で使いやすそうだ。
鞘は尾で針束を持つための物だ。片側は尾に巻きながら節を作って防具の様に。もう片側は蜂の巣の様になっていてひっくり返しても抜けないようになっている。どちらも何時でも作れるように木製だ。本当はベルトにしたかったが仕方ない、腰に下げたら邪魔になる。
手袋とサンダルは余った葉と枝からの有り合わせだ、爪や鱗で生半可な靴なんかは履けないから仕方ない。
マントも弄ろうと思ったが、元々かなりの自信作だ。錬金術で葉付きの杉の枝を纏め補助魔法である程度の強度もある。防御、隠れ蓑、枕、荷物運びと何にでも使える優れものだ。
何度か試した結果、全体的に補助魔法の強化がしやすい木材で作ってある、持っていればあんまり意識しなくても強化出来そうだ。それに、森の素材で出来た装備は外から見ればかなり分かりにくいだろう。
木に紛れる様に、上流に静かに向かった。
足音を立て無いようにと言うよりかは、足下に木や石が多く落ちているから足を怪我したり転ばない為と言うのが強かった。足の傷を治すのは今日はもう嫌だ。そうして歩きながら森の途中で何度か魔法を試して見た。
「応用力の強い程難しい。まぁでも使ってるうちになれるか」
闇魔法で生命力を吸収しようとすると吸いすぎて腐ったり、夢魔法ならぐねぐねする、他の機能まで出てる感じだ。
それでも時間をかけて集中することでなんとかなることも多かった。最初から比べれば、制御は感覚的には二から三割くらいか。
そして何十分か歩くと、木々が開いて滝の音が強くなってきた。
「森から出れたかな」
「ケヒッ」「グヒァ」「グギャァ!」
滝壺を見つけた。そう思って近付いた瞬間、鳴き声が聞こえた。その瞬間素早く本の林に隠れた、それにここは運よく風下だ。
隠れながらよく観察してみることにした、最初隠れるときに少し音がしてしまったからいつでも攻撃できる準備だけはしていたが、全く気づかれなかった。【ステータス観覧】なんかも使ってみたが、霧の様なものに覆われよくわからない。あの時のゴーストと何が違うのだろう。
素の力でよくみる限りかなりの化物だろう。赤褐色の肌。髪がなく小さい角が生えた頭。体は筋肉質でサイズは俺と同じくらい、腕の付け根から霧が漏れている。その腕は大股所か胴体に匹敵するサイズ、まるで無理やり付け足した様な腕だった。あんな腕よく使えるな、とつい口から出そうなほどアンバランスだ。それに汚い腰布一枚とまるで細めの木そのものな棍棒を振り回している。
まるで鬼だ。いや異世界だからか、ゴブリンか?よくわからないが、普通のゴブリンではないのかもしれない、歪だ。そんなことを考えながら見ると、腕の付け根だけでなく身体からも、微妙に霧が漏れているようだ。霧ゴブリンと言うことにしよう、安直だがわかりやすいだろう。
それにしても酷い。あの腕を使って周りの食べ物やガリガリの小動物を潰している、食べ物が勿体ない、理由を考えるよりも早く対処したい。
「(話は…出来なさそうだな)」
何がそんなに嬉しいのか、顔が不気味に弛んでいる。こんな状態の奴となんて話せないだろう。
どうやって追い払おうか、むやみに攻撃して仲間を呼ばれると怖いし。【死霊魔法】と【夢魔法】なら音もしない、イメージはさっきの狼と断末魔…いやダメだ。
もっと強くした方が良い。思い出すとあの狼は自分より少し頭が高い位で、ガリガリだった。俺を殺しかけた奴だがこの森では弱いのかもしれない、もっと強く大きくするか。多少時間がかかったとしても構わない。
幻影の完成させるのに何分している間、霧ゴブリンどもは何かを探したり水を棍棒でぶん殴っている。その理性の無さを見て、少し気を抜いた。
だが。相手に理性が無いからと言って、外套と風上にいるだけでは足りなかった。異世界…いや霧のことをもう少し考えておくべきだった。
サァァと風の流れる音が変わる。少しすると、薄い霧が周囲を覆いあのムキムキどもの動きも止まった。
瞬間はね跳び、枝に飛び乗る! ジェットによって林は吹き飛ぶがそんなことは気にも止めなかった、それは三つの剛擊が林ごと地面を抉ったからだ!吹き荒れる木の粉片をマントで弾くと、息を吸い。
「隠れてた俺も悪いけど、いきなり攻撃なんて。ずいぶんな挨
――パッッ――
話しも出来ないのか?」
小動物の遺体が木の幹に散る、それは強い握力で握られ木で弾けたもの。食われもせずにこんな最後。何故だろう、ひどく悲憤の気持ちが湧いて。尾鞘から二本両手に構えた時も、無駄な力を抜くのに苦労した。
良く目を凝らす、相手の根元に向ける一撃その隙を狙う。気配察知は上手いだろうがアンバランスな身体の為かなりの大振りだ。やはり化物にも個人差はある様で一番細い腕のゴブリン━━それでも大股ほどの腕━━の振りは、不気味な初動の速さだった。
「それでも遅い!」
だが横に向けていたその軌道は俺に修正することは出来ない。
声に釣られたゴブリンが頭を向けるそのまま重力に身を任せ、押し倒しながら、二本の針で両肩を貫く! 貫いた針はゴブリンを地面から剥がさずにいる。針から手を離し、動きの止まったゴブリンからすぐに降りながら針を一本抜刀する。
「おいっ! このまま戦ったってなんの意味もっ」
「ゲッギャ!」「グギァ!」
鳴き声と上から襲い来る二つの風。針を瞬時に手放す選択をしたことは、運が良いのかそれとも今までで本能が研かれたのか。それでも少し間に合わなかったが、ゴブリンが壁になっていたことと魔力放出に慣れていたことが幸いだった。それと上からの叩きつける攻撃、これで二体とも棍棒に針が食い込んで一纏めになった。
「「グギギギ」」
でかく筋肉が盛り上がり声を漏らすほど力を込めて針をへし折り抜こうとするが。
「油断し過ぎだな、隙だらけだ」
後ろから狼の幻影を生み出す、それは正夢が如き現実感と死を煽る断末魔を纏った化物だ。長く留めたイメージはそれだけ深い闇の重圧を含む。
ゴブリンどもは声すらもなく棍棒を放り投げ、幻影に殴りかかるがすり抜け大きく転ぶ。それでも大腕で身体を持ち上げようと力を籠めるが、転がる臓腑に滑る。
「その腕、やっぱり邪魔じゃないかな。今度はちゃんとしたの付けたら良いと思うよ」
そう嘯きながら簡単な吸収と劣化の魔力圧を放つ。只放つだけでもそれなりの攻撃力があるが、それ以上にすぐには動けなくなる程度の脱力感を与える。
少し逃がそうとも考えたが、ここまでやっても快感に濡れた表情、何一つ変わらなかった。こいつらは、何もわからない様になってるんだ。
「酷いな。……今、楽にしてやるからな」
少し息を整え針を頭部に突き刺す、それと同時にゴブリンの体は異様な音と共に溶けていく、素早く引き抜いたが針も4/1程溶けていた。
「心を弄られて、身体もこんな風にされて。こいつらいったいなにしたんだよ!」
気づけばもう一体のゴブリンも棍棒ごと溶けていて、少しの骨の残骸しかそこにはなかった。あっという間のこと、まるで湿気たクラッカー見たいな、そんな味気ない光景だった。
戦闘も終わったと自覚したその時、体内に染み渡るような感覚とパズルのピースがはまったような感覚がする。この感覚、気づけなかったが多分二回目なんだろうな。
【未設定】年齢:【0】
レベル:【15/8】種族:【悪魔族】階位:【下級子悪魔『1』】
職業:【ダンジョンマスター】【夢使い】【錬金術師】【死霊術士】
種族スキル:【肉体再生】【契約】【魔力耐性】【闇属性】
ステータス
筋力:【51】耐久:【57】俊敏:【76】
体力:【76】精神:【104】魔力:【118】
器用:【91】
スキル:【肉体再生】【契約】【魔力耐性】【闇属性】【空間操作】【補助魔法】【夢魔法】【夢渡り】【錬金術】【死霊魔法】【呪術】【精密操作】【解析】【呪物作成】【精神耐性】【ステータス観覧】【記憶保持】【言語理解:多】【迷宮核作成】【迷宮領域作成】【放出】
称号:【転生者】【諦めし者】
「ステータスも上がっているけど」
と大雑把に身体を動かすが、劇的と言えるほど身体能力は上がっていない。
「ステータスはそのまま身体能力を表しているわけではないのか。それに放出か、説明は放出することに補正をかけると。…ほとんど何も書いてないと一緒じゃないか」
魔力の回復を待ってから、大きめのソナーを木々の隙間や岩を抜く様に打った。
確かに前よりは細かく打てるそれに長々と音を立ててドンパチやってたんだ、いつ何が起こるか。
「なんだろう、今ソナーに何かが」
ソナーにおかしな感覚が走った、滑る様なすり抜ける様な物だ。何度も力がそらされて、ぶつかり合って消滅するからわからない場所が広くてわかり辛い。問題はそれくらいと、あとは霧だ。この霧のなかはまるで何かのマーキングの様なものなのかも知れない、何処にも動物なんかが全く感じ取れないからだ。
「このまま考えてるだけじゃ、意味ないか。とりあえず何日かは草食生活になるなぁ」
頭には色々取り留めもない考えが浮かぶが全ては後回しにすることにした、何もわからないならわかるやつを見つける。それよりもまず。
「埋めるか、こんな最期でも野晒しはどっちも嫌だろう」




