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【航海日誌11】

Ship’s Log ’527/10/4

Location: Planet Austella/Unknown Sector

Status: Tier9


今日は久しぶりに拠点を作りました。

とても楽しかったです。

そしてとても疲れました。

あと、ジュノがとても甘えてきて困っちゃいます。

でも嬉しい。


挿絵(By みてみん)




 ふるふると真っ赤になったヴェスタが航海日誌を手に持ち震えている。

「な‥‥なんてもの描いてるの!!」

ぱたんと閉じてぐいぐいと上から押さえてみたが、もちろんそんなことをしても絵は消えない。

ジュノのその表情には覚えがあり、直接はずかしい場面を連想できたヴェスタ。

「‥‥おちついてヴェスタ。大丈夫よ、あの表情だけであの下の方がどうなっているかはわからないはず」

そうしてぱかりとまた開いてみる。

「くふぅうん!」

ぱたんと閉じてさらに真っ赤になるヴェスタ。

どう見てもジュノの表情はあの時のジュノだった。

やたらと正確に表現されているのは、とても印象に残っていたのだろう。

そこにいたのは、仲良しだった二人の距離が更に縮まった夜のジュノだった。


 ぴしりと音がしそうなくらいに姿勢を正したヴェスタ。

正座に一寸の乱れもない。

一寸どころか、1インチも1mmの乱れもなかった。

(はんせいして!ヴェスタ)

心で強く自分を戒めるヴェスタ。

ただ画像や文章を消せば済むというものではないと、今のヴェスタは知っている。

航海日誌道を歩むヴェスタは、敬意を持ちマニュアルを熟読した。

そしてその機能を知るに至ったのだ。


『航海日誌は欺瞞・偽造を防ぐために改変ログを全て記憶するものとし、機会があればこれもすみやか(自動的)に提出するものとする』


 その機能にはオンオフの設定はなかった。

そして改変ログは人の手では探し出せない形で格納されていると知った。

なんとかログを消せないかと散々調べたのだ。

あまりに恥ずかしすぎる改変を繰り返してきたから。

どうやら量子暗号化されたブラックボックスの何処かにあるようで、何処を消したら良いのか解らなかった。

 恐らく何処を触っても、その履歴が取られるだろうとは想像できた。

敵は国家機関なのだ。

容易くヴェスタごときが相手になるものではなかった。


 それからは真面目に改変無く書き綴って来たのだが、この絵はまずいだろうとまた思い出して真っ赤になるヴェスタ。

この絵の直後にヴェスタの唇が触れた部分を思い出して、泣いてしまうヴェスタ。

「クスン‥‥もういいもん‥‥きっと私とジュノ以外はわからないわ」

それはジュノに見られたらバレるということだ。


「ダメよヴェスタ‥‥航海日誌の本質を忘れているわよ」

そもそも航海日誌の本質を理解していないヴェスタだった。

「心のままに真実を残す‥‥それが航海日誌だとお告げを受けたじゃない‥‥私は選ばれし航海日誌の戦士(ログウォリアー)よ」

そうして独自の謎ルールで縛っていくヴェスタ。

正座からお辞儀をして三つ指を突き、そこから次々と流れるように瞑想ポーズを変える。

最後には片手で体重を支え、あり得ないポーズで固まった。

ぴくりともブレないその体幹と重心のバランス。

神なる力が降りてくる。

半眼にしていた瞳が、くわっと見開かれた。

「わかったわ!」

絶対にわかっていないやつだった。


 その所作は流れるように美しく途切れない。

始まりから終わりまで全てが定められた動きなのだ。

止まらずに円を描き螺旋をとるヴェスタの手のひらが美しい軌跡を宙に描いた。

繰り返し練り上げたその型こそがヴェスタを支える。

「航海日誌基本の型‥‥第一から第二」

 それはジェスチャー入力と呼ばれる、劣悪な環境でも指先だけでログを残すための、最後の手段だった。

声も出せず、映像も記録できないような、過酷な環境下でも報告書は作れよと言う、非情な指示とも言えた。

お前らの命より、もちろん大事だぞと、マニュアルに書かれているようなものだ。

残像を残しジェスチャーを変えていくヴェスタは、まるで複数人の演者に見えた。

すすすとその残像が重なり、ぴたりと止まる。

すっと自然体に戻り表情を消したヴェスタが音もなく蹲踞して、3歩さがりすとっと正座する。

深々と頭を下げて演舞を終えるのだった。


「これでいいのよ!うふふ。ルクールにも伝えなきゃ!もう家族なのよって」

とても楽しそうな、スッキリした顔でシャワーを浴びようと立ち上がる。

そこでいつもよりだいぶ早く保存していなかったことを思い出し、つつんと保存。

「ふふん」

えっへんと偉そうにして、どうだといった主張のヴェスタ。

見るものがいれば、出来て当たり前の事がとても誇らしいのだと涙を誘う。

るんるんと部屋を去るヴェスタ。


 そうして刻んだ航海日誌が誰の目に触れるとも知らずに、浮かれているのだった。

面倒な義務を一つ終えた開放感につつまれて。









Ship’s Log ’527/10/16

Location: Planet Austella/Unknown Sector

Status: Tier9


今日はとても大事な事を思い出した。

私達はチームにして家族。

決して離れることはないと誓いあった、魂の仲間なのだ。

ラウミナスの名とともに。


挿絵(By みてみん)

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