第12話 残された1日
あと1日。晴人は元に戻れるのか!?第12話スタート!!
朝。
目を覚ました晴人は、ぼんやりと天井を見つめていた。
少女「……あと、一日」昨日、謎の少女に告げられた言葉。
――あと1日。その意味だけが頭から離れない。洗面所へ向かい、鏡を見る。そこにはもう、少年の面影はほとんど残っていなかった。肩より少し長い黒髪。細い首。柔らかな頬。制服を着ても、完全に女子用が自然に似合ってしまう体。胸もさらに膨らみ、男子制服では隠しきれなくなっていた。晴人は制服のリボンを見つめる。
晴人「……いつから、これが普通になったんだ」違和感はある。でも身体は、それが当然だと言っている。
心だけが必死に抵抗していた。
学校。下駄箱には「春香」と書かれた名札。
教室へ入ると、
「春香、おはよー!」
「今日も可愛いね!」女子たちが笑顔で迎える。
男子たちは誰一人として晴人を男子だったとは思っていない。晴人も、もう否定しなかった。
否定しても誰も信じない。
教科書にも、出席簿にも、卒業アルバムにも、
すべて”春香”と書き換わっていた。先生までも自然に呼ぶ。
「春香さん、答えてください」
「はい」自分でも驚くほど自然な高い声。
クラスは何も違和感を抱かない。
昼休み。屋上。美琴だけがいつものように待っていた。
「お疲れ」
「……お疲れ」二人でお弁当を開く。少し沈黙が流れる。
美琴がぽつりと言う。
「今日で終わるのかな」晴人は苦笑した。
「終わるって、元に戻るって意味ならいいけどな」
「もし……」美琴は言葉を飲み込む。
「もし戻らなかったら?」風が吹く。晴人の長い髪が揺れる。晴人は少しだけ空を見上げた。
「……その時は、その時だ」美琴は俯いていた。
「晴人がいなくなるなんて嫌」
「……」
「春香になっても好きとか、そういう話じゃない」
「私は……」言葉が止まる。涙が零れそうになる。
「晴人だから好きなの」晴人の鼓動が止まりそうになる。
「美琴……」
放課後。神社。神主は鏡の前に立っていた。
「時間が来た」鏡のひびはさらに広がっている。
少女も現れる。
「最後の日」神主が静かに語る。
「鏡は今夜零時、完成する」
「完成?」
「世界から”晴人”という存在が消える」晴人は息を呑む。
「消える……?」
「誰の記憶にも存在しなくなる」
「美琴さえも」美琴は顔を上げる。
「嫌……」神主は続ける。
「そして鏡は完全な世界になる」少女が静かに言う。
「でも」
「鏡には一つだけ弱点がある」晴人と美琴が同時に見る。
「互いを本当に想う二人の心」
「鏡は姿も過去も変えられる」
「でも、心から生まれた想いだけは偽物にできない」
美琴は晴人を見る。
晴人も美琴を見る。
少女は微笑んだ。
「だから最後の鍵は、あなたたち」
神社の帰り道。夕焼けが街を赤く染めていた。
二人はゆっくり歩く。美琴が立ち止まる。
「ねぇ…」
「ん?」
「もし全部忘れちゃったら」
「私が晴人を忘れちゃったら」晴人は少し考える。
そして笑った。
「また友達になればいい」
「また最初から」美琴は涙を流した。
「そんな簡単じゃないよ」晴人はそっとハンカチを差し出す。
「泣くな」美琴は首を振る。
「泣く」
「今日は我慢しない」そのまま晴人の胸に額を預けた。晴人は少し戸惑いながらも、優しく頭を撫でる。
「大丈夫」
「絶対戻る」そう言った本人ですら、
その言葉に確信はなかった。
その頃――
鏡の世界。無数の鏡の破片が浮かぶ空間。黒い霧が集まり、一人の女性の姿を形作る。長い銀髪。閉じられた瞳。口元だけが静かに笑う。
「あと少し」
「あと少しで、この世界は完成する」
彼女の周囲には、消えていった人々の記憶が無数の光となって漂っていた。
その中に、幼い晴人の記憶も吸い込まれていく。
「最後の抵抗も終わる」彼女は静かに鏡へ手を伸ばす。
その瞬間。鏡の奥に、美琴と晴人が手を繋ぐ姿が映る。
女性の笑みが初めて消えた。
「……また、その想いか」鏡全体に大きな亀裂が走る。
女性は低く呟く。
「ならば今夜――」
「二人まとめて、消してあげる」
鏡の世界が大きく揺れ始めた。
さて、なんかやばいやつ出てきてますが、そろそろクライマックスですね。第13話お楽しみに!!!




