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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国大会

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76話 進む競技

沈黙。


石床に描かれた刻印が、じわりと光を帯びていく。

まるで、それ自体が返答を急かしているかのように。


リシェルは、こめかみを押さえながら、絞り出すように言った。


「いや、みんなでやってもだめなもんはだめです。」


「一理あるね。」


「一理じゃなくて、それが全てです!」


「でも」


 エルディアは、刻印の最後の一画を、静かに描き終えた。


「ごめん先輩。

もう、術式組んじゃった。」


「――は?

今、組んだって言いましたか!?

私が止めてる間に!?」


「うん」


「話、聞いてました!?」


「聞いてたよ。

聞いてたから、だからなんか例えを考えたの。」


「例えを考える暇があったら止まってください!!!

考える方向性が、完全にまちがってますから!!!」


石床がかすかに震え始め、支えの術式が、ゆっくりとしかし確実に解除されていく音。


ディオンが、深く息を吐いた。

彼は、床の中心に広がっていく光の輪を見下ろした。


「……リシェル。諦めろ」


「なんでですか!!ディオンまで!!」


「あいつが術式組み終えた時点で、もう遅い。

ダンジョンが組んだ罠を、俺たちで止められるならな。

悪いが、間に合わない」


「そんな……」


リリアだけが、この状況でいっそ楽しそうに笑っていた。


「まあまあ。

落ちてから怒ればいいじゃない。今は――」


 彼女は、足元の光を見つめながら、片手を軽く広げる。


「近道、いただいちゃおうよ」


「リリアまで!!!」


抗議の声が、最後まで響き渡る前に。

石床は、静かに――しかし、確実に、四人の足元から消えていった。






同時刻。


王都競技場。


中継石の観測範囲から、四人全員が一気に外れたのだ。

魔導板から、アーカムの光点が消失する。



「アーカム魔術学院、観測不能!

落盤か!?」


「違う!

あれは自然崩落ではない!

自分達で床を抜いた!」


「…………」


競技場中が、沈黙した。


「え?」


実況が間抜けな声を漏らす。

老魔術師は強く頷く。


「自分で?」


「自分でだ。」


「落とし穴に?」


「自分から。」


「…………」


再び沈黙。

そして競技場中がざわめいた。


「そんな攻略法があるのか!?」


老魔術師は、額を押さえながら、深く息を吐いた。


「意図的、かもしれん」


「意図的に、落ちた、と?」


「競技範囲内に留まる限り、規則違反ではない。

……だが、褒められた手段でもない」


――アーカム応援席。


「……また消えた」


アルトが、低く呟く。


「今度こそ、まずいやつじゃ……」


「アス。落ち着け。

信号の切れ方が、さっきの《北方要塞学院》の時と違う。

あれは、恐怖で乱れた切れ方だった。今回は明らかに意図的なものだ。

次に光が灯るのは、誰も予想していない場所からになるぞ。

エルディアなら、やりかねない。」


彼は、魔導板に浮かぶ、直前までの座標の軌跡を目で追う。


それは綺麗な、一直線。


まるで、最初から計算され尽くしていたかのような。




実況席の声が、切り替わる。


「――さて、迷宮探索戦は長丁場となっております。

ここで、同時進行中の他競技の様子も、簡単にお伝えしましょう」


空中の魔導映像板が、四分割される。

迷宮の闇とは対照的な、地上の光景が次々と映し出されていった。


「第二競技・陣地制圧戦】終了です!


そして現在進行中!【第三競技・護衛・救助戦】!

救助対象を最も多く生還させたのは《聖フィリア学院》!

負傷者ゼロという完璧な結果です!


さて、ここで一度、総合点数の推移を見てみましょう」


――《アーカム魔術学院》、順位、圏外。


「アーカムは、依然として厳しい状況ですね。

迷宮探索戦、討伐数はほぼゼロ。

信号も一時途絶していましたし……」


老魔術師が、話した。


「あの学院に限って言えば、"今、何もしていない"ことを、そのまま鵜呑みにしないほうがいいだろう。」


「……というと?」


「勘だがな。

もちろん、そのまま終わる事はありうる。」


 老魔術師の目が、わずかに細まる。






「ねえ!!どこですか!!ここ!!」


リシェルの声が迷宮内に響き渡る。


彼女達は普通に迷っていた。

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