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君のためなら、何でもできる。   作者: 足早ダッシュマン
第4章 ─錆びし黄金時代編─
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第9話 嵐の前の静けさ

※本作は一部に生成AI(ChatGPT)による言語補助を活用していますが、ストーリー・キャラクター・構成はすべて筆者が作成しています。

ご理解の上でお読みください。

1

ぬいぐるみだけが(ころ)がる会場(かいじょう)


 (おと)はない。

 呼吸(こきゅう)も、気配(けはい)も、すべて()えている。


 ケイは、その中心(ちゅうしん)()っていた。


「……最悪(さいあく)だな」


 吐き捨(は す)てるように(つぶや)いた、その(とき)


本当(ほんとう)に?」


 背後(はいご)から、(やわら)らかな(こえ)


 ()(かえ)るより(さき)に、()かっていた。


「――リン」


 そこに()っていたのは、いつもと()わらぬ微笑(ほほえ)みの(おんな)だった。


 場違(ばちが)いなほど、(おだ)やかに。


「あなたがやったのか」


 ケイの声は低(こえ  ひく)い。


「……あの男(ロスティスラフ)のために、(ボク)利用(りよう)したのか」


 リンは、くすりと小さく笑(ちい    わら)った。


利用(りよう)、なんて人聞(ひとぎ)きが(わる)いわね」


 ゆっくりと(ある)きながら、ぬいぐるみたちの(あいだ)()けていく。


順序(じゅんじょ)問題(もんだい)よ」


 足元(あしもと)(ひと)つを、(かる)()ける。


石蛇(いわへび)()(けん)があって――それとは(べつ)に」


 一拍(いっぱく)


(かれ)から依頼(いらい)()けていたの」


 ケイの()(ほそ)まる。


最初(さいしょ)から、か」


「ええ。あなたと契約(けいやく)する(まえ)から」


 さらりと()げる。


「“息子(むすこ)父の元(ちち  もと)()れてくること”」


 ケイの沈黙(ちんもく)肯定(こうてい)受け取(う と)るように、リンは(つづ)けた。


先払(さきばら)いで、大金(たいきん)もいただいているわ」


 指先(ゆびさき)空気(くうき)をなぞるようにしながら。


「ただし――」


 その()みが、ほんの(すこ)しだけ(ふか)くなる。


無事(ぶじ)であれば、さらに報酬(ほうしゅう)上乗(うわの)せされる契約(けいやく)


 ケイの視線(しせん)(するど)くなる。


「だからあなたに“身体(カラダ)”を与えたの」


 あっさりとした口調(くちょう)


(まも)れる(ちから)必要(ひつよう)でしょう?」


 沈黙(ちんもく)


 否定(ひてい)も、肯定(こうてい)もない。


「あなたからはお金は貰(かね  もら)っていないけれど」


 リンは(かた)をすくめる。


契約内容(けいやくないよう)(まも)っているわよ」


 指折(ゆびお)(かぞ)えるように。


追手(おって)攪乱(かくらん)身体(カラダ)授与(じゅよ)。――嘘偽(うそいつわ)りはないわ。」


 にこりと(わら)う。


「その身体(カラダ)だって、(やす)くはないのよ?」


 (すこ)しだけ、悪戯(いたずら)っぽく。


(われ)ながら、かなりのサービスだと(おも)うけれど」


 ケイは(なに)()わない。


 ただ、リンを睨み続(にら  つづ)ける。


 リンは気にも留(き  と)めず、あるぬいぐるみの前で足(まえ  あし)()めた。


 (くろ)い、(へび)のぬいぐるみ。


 それを、丁寧(ていねい)(ひろ)()げる。


 まるで壊れ物を扱(こわ  もの  あつ)うように。


「これは、(わたし)()っていくわ」


 (やさ)しく(かか)えながら。


 そして視線(しせん)だけを(うご)かし――


 (しろ)いカエルのぬいぐるみへ。


「それは、あなたが()っていっていいわよ。」


 軽く顎で示(かる  あご  しめ)す。


契約(けいやく)は、もう完了(かんりょう)しているもの」


 ケイの(まゆ)がわずかに(うご)く。


「“ユウをロスティスラフの(もと)()れていく”――それで()わり」


 (しず)かな断定(だんてい)


 リンはくるりと背を向(せ む)けた。


「この(さき)は、あなたの自由(じゆう)よ」


 数歩(すうほ)(ある)()す。


 その背中(せなか)()しに、


「ただ――」


 ふと、(あし)()めた。


()をつけなさい」


 ()(かえ)らないまま、()う。


「このあと、目覚(めざ)めるわ」


 ケイの視線(しせん)(するど)くなる。


 リンの(こえ)は、いつもと(おな)調子(ちょうし)のまま。


「“磯の女(ロッキーショア)”が」


 わずかな沈黙(ちんもく)


 そしてまた、(ある)()す。


 その背中(せなか)は、何も語(なに  かた)らない。


 ただ――


 すべてを()っている(もの)のそれだった。


2

一方(いっぽう)そのころ――ホステル。


 (よる)は、やけに(ふか)かった。


 窓の外(まど  そと)()(くら)で、昼間(ひるま)喧騒(けんそう)(うそ)のように静まり返(しず    かえ)っている。


 カケルは、窓際(まどぎわ)()っていた。


 ジェーンは買い出しに出(か だ  で)ている。

 何人(なんにん)かの同僚(どうりょう)一緒(いっしょ)に。


 (のこ)った(もの)たちは、食堂(しょくどう)のあたりで雑談(ざつだん)しているらしいが、どこか落ち着(お つ)きがない。


 カケルは、(そと)()たまま(うご)かなかった。


(……ユウ)


 ()れていかれた、あの背中(せなか)(あたま)から(はな)れない。


 ()められなかった。


 理由(りゆう)()からないまま、ただ見送(みおく)ることしかできなかった。


 胸の奥(むね  おく)に、(にぶ)いものが()まっていく。


 そのとき――


 ――ドンッ。


 (ひく)い、腹に響(はら  ひび)くような轟音(ごうおん)


 建物(たてもの)がわずかに(ふる)えた。


「……っ!?」


 食堂(しょくどう)の方から(こえ)()がる。


 ()らない言語(げんご)飛び交(と か)う。


「Did you hear that?」

「What was that!?」

「Outside! Something’s happening!」


 ざわめきが一気(いっき)(ひろ)がる。


 カケルは()(かえ)ったが、すぐに(まど)へと視線(しせん)(もど)す。


 (そと)は、(なに)()わっていないように()える。


 だが――


 (いや)予感(よかん)だけが、(たし)かにある。


 カケルは、ドアに()をかけた。


「……」


 一瞬(いっしゅん)だけ、躊躇(とまど)う。


 そして、()けた。


 外気(がいき)が、(つめ)たい。


 (とお)りには、(ひと)気配(けはい)がほとんどない。


 (しず)かすぎる(よる)


 さっきの(おと)が、(うそ)だったかのように。


 カケルは一歩(いっぽ)(そと)()る。


 そのまま、視線(しせん)()げた。


「……え?」


 言葉(ことば)が、()れる。


 (とお)く。


 ホステルからはかなり(はな)れた位置(いち)


 それでも、はっきりと分かる。


 ――巨大(きょだい)だ。


 (そら)から()()かって、()びている。


 いや、“()えている”。


 (とう)


 だが、それは普通(ふつう)建造物(けんぞうぶつ)ではない。


 表面(ひょうめん)が、ゆらゆらと()れている。


 (いろ)が、(さだ)まらない。


 赤、青(あか  あお)(みどり)――(にじ)のように()わり(つづ)ける、不気味(ぶきみ)(ひかり)


 (そら)そのものを()(やぶ)るように、存在(そんざい)している。


「え…え……え…?」


 現実感(げんじつかん)が、ない。


 ただ、()が離せない。


 (とう)は、そこにあるだけでおかしい。


 この(まち)の“(なに)か”が、(こわ)れている(あかし)のように。


 そのとき。


 (とう)表面(ひょうめん)が、(みゃく)()った。


 どくん、と。


 まるで()(もの)のように。


 カケルの背筋(せすじ)に、(つめ)たいものが(はし)る。


(……()てはいけないものだ)


 (おそ)すぎる直感(ちょっかん)


 けれど、もう視線(しせん)(はず)せなかった。

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