885いちいち順序を守りたくない時もある
「もぐ、よかったね〜♪」
一心不乱にメロンゼリーを頬張るオレに、嬉しそうな声でことりが言う。
買ってきたかいがあったと頷くことりにお礼をたっぷりしようと心に誓うが、今は待て。
残りメロンゼリーが先だ。
「もぐもメロン好いとーと?」
自分とオレの好物が一緒なのが嬉しいのか、優しい目で見てくるおじいちゃん。
実はこの短い間にオレからおじいちゃんへの好感度は爆上がりしてる。
それは何故かって?
おじいちゃんはオレが『お手』をしても『ちょうだいポーズ』をしても『待て』をしても「凄か。」「偉か。」と拍手して褒めてくれるんだ。
正直、めちゃくちゃ嬉しい。
メロンゼリーを完食した後、前足を揃えて高速で上下させて、ちょうだいちょうだいとおかわりをねだる。
みのりに「お腹壊すからダメ、あかん。」とあっさり断られたが、おじいちゃんが「もぐはおかわりも出来るんか、本当に賢かね。」と褒めてくれたから良しとする。
・・・みのりとことりも初心を思い出して『おすわり』だけで褒めてくれていいんだよ。
『おすわり』→『ふせ』→『おすわり』→『お手』をワンセットにしなくていいんだよ(泣)。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日の晩ご飯は、おじいちゃんの希望でダイニングテーブルではなく、昼間トランプしたお部屋でとることになった。
みのりとことりが料理を運ぶために、往復するのを追いかけた。
ちょっと楽しい。
テーブルに並べられた料理を見ようと、テーブルに前足をかけて立ち上がる。
ごはんとおでんと明太子と、ことりが言っていた『おきゅうと』と思われるものが一人一皿ずつ用意されていた。
「「「いただきます。」」」
声を揃えて言った後、それぞれ食べ始める。
おじいちゃんは一口サイズに切られた明太子をそのまま食べて、みのりとことりは明太子の薄皮を取ってごはんに乗せる。
食べ方にそれぞれのクセがあるようだ。
気になっていた『おきゅうと』は海藻加工食品で、見た目は平打ち麺のこんにゃくだ。
それから白ごまをかけて、九州特有の甘さのある醤油をひと回ししてちゅるるとすする。
「ん〜♪これよこれ!」
「ホンマ美味しいわ♪お取寄せした時に専用のタレも使ってみたけど、わたしはやっぱり醤油派やわ。」
ことりとみのりが頬に手を当てて、幸せそうな表情をしていた。
・・・美味しそう。
海藻加工食品なら、ワンチャン貰えるのでは?と思ったオレは、必死に前足揃えて高速で上下させて『ちょうだい』を連発したが、笑顔で「あかんよ。」と言われた。
それでも続けたオレに、ことりはしょうがないなぁとでも言うようにため息を吐いて席を立って部屋から出ていった。
おきゅうとはダメだけど、またメロンゼリーがもらえるかもしれないと期待して、無意識にしっぽが揺れた。
閉ざされた障子をガン見して、ことりが戻ってくるのを待つ。
戻ってきたことりが、「もうすぐごはんやから、ちょっとだけやで。」と言って、手のひらを見せてきた。
・・・ドッグフード3粒。
おやつですらないッ!!
「もぐ、おすわり。」
オレは先回りをして、『おすわり』しながらドッグフードがあることりの手に『お手』をした。
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