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真夏ダイアリー  作者: 大橋むつお
55/72

55『ミリー人質になる』

真夏ダイアリー


55『ミリー、人質になる』    




 わたしたちは、ハドソン川を挟んだ小さな民間航空会社の飛行場にきていた。


 さすがのアメリカも、この時期、優秀なパイロットが欲しく、この航空会社も、若いパイロットを引き抜かれ会社も親会社に吸収され、飛行場は事実上閉鎖されていた。

 もう午後四時をまわっていたけど、夏も近い6月の太陽は、ほとんど空の真上にあった。


「……どうやって、ここに来られたの?」


 手にした銃が無くなっていることにも気づかずに、ジェシカが呟いた。事前にテレポの説明はしたが、実際やってみると、衝撃であるようだ。ミリーもショックで固まっている。


「トニーも、あなたと同じアバターとかいうにせ者なの……?」

「会ってみなければ分からない。コネクションを全部切られてるから、トニーが、ここに居るということしか分からない」


 ここを探り当てることも大変だった。インストールされた能力では探すことができず、教科書の中に隠していたアナライザーを使って、やっと探り当てたのだ。


 目星をつけた格納庫に向かうと、途中で格納庫のシャッターが開いた。わたしたちは駆け足になった。

 あと三十メートルというところで、エンジンの始動音がした。ダグラスDCー3が動き始めた。


「「「ストップ!!」」」


 わたしたちは、三人でダグラスの前に立ちふさがった。やがてトニーの姿をした省吾がタラップを降りてきた。


「あなたはトニーなの? それともトニーに化けたアバターとかいう化け物なの?」


 ジェシカが、銃を構えた。


「引き金は引かないほうがいい。そこのアバターと違って、僕はトニーの体そのものを借りてるからね」

「くそ……」


 悔しそうに、ジェシカは銃を下ろした。


「もう、ここまで来たら後戻りはできない。もうエンジン回しちゃったからね」

「……このダグラス、ミートボール(日の丸)が付いてる!」

「そう、この戦争で唯一、アメリカと日本で使った同じ機種。日本じゃ、ライセンス生産で零式輸送機っていうんだけどね」

「トニー、何をするつもり!?」

「戦争を終わらせる。多少強引なやり方だけど……おっとアバターの真夏君は大人しくしてもらおうか……ミリーおいで。いっしょにニューヨークの空を飛ぼう」

「だめよミリー!」

「だって……」


 意思に反してミリーの体は、トニーに近づき腕の中に絡め取られた。


「やることが終わったら、ミリーもトニーも返すよ。むろんトニー本人としてね」


 そう言うと、トニーはミリーといっしょにダグラスの中に消えた。

 そして、ダグラスは、そのまま速度を上げて、ニューヨークの空に飛び立っていく……。


「……これで、よかったの?」


 ジェシカが、ポツンと呟いた……。


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