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真夏ダイアリー  作者: 大橋むつお
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46『プロモ撮影の本番』

真夏ダイアリー


46『プロモ撮影の本番』    




 登校風景からだった。


 事務所で衣装の制服も着てメイクもすましていたので、乃木坂駅から、学校の校門に入るまで、いつものまま。


 事務所からの移動は、地下鉄という凝りよう。日曜の八時なんで、乗客の人は少ないんだけど、研究生を含め百人近くが「女子高生」のナリをして地下鉄に乗っていると、いつもの通学の雰囲気になってしまうから不思議だ。


「やだあ、わたしって、もう二十歳過ぎてんだよ(^_^;)」


 そう言っていたクララさん達が一番女子高生返りしていたのもおもしろかった。


 ブルブル


 駅の改札を出ると、一気に寒さがやってきた。


 設定は二月ごろなんだけど、女子高生らしさを出すために、コートとかは無し。さすがにセーラー服だけじゃ寒いので、ヤエさんの発案で押しくらまんじゅうをしてみた。さすがに全員でやると、真ん中の子が圧死しそうなので二グループに分かれて五分ほどやると、ポカポカと温まってきた。


 マフラーや手袋はOKだったので、なんとか寒さはしのげてる。


「女子高生らしくキャピキャピでいきます?」 クララさんが聞いた。


「まんまでいいんじゃない」 仁和さんが答える。


「寒い朝の登校って、あんまり喋らないでしょ。でも、アンマリも変だから、適当にやって。まずグループ分け」


 これは、あっさり決まった。選抜やら、ユニットやら、チーム別にまとまった。


 カメリハで、坂の途中まで下ってNGが出た。


「選抜、喋りすぎ。君らのグループは別れて研究生のグループに入って。で、ちょっとくったくアリゲに黙って歩いてくれる。それから、意外なとこでカメラが回ってるけど、カメラ目線にならないように」

 

 わたしは研究生のBグループに入った。


 なんたって、現役の女子高生、それも自分の学校にいくんだから、まったくマンマ。


 校門まで行ってびっくり。固定と移動のカメラが五台回っていたのはカメリハで分かっていたけど、校門前にドローンカメラが来ているのには、驚いた。でも言われたとおりカメラ目線にもならずOKが出たので嬉しかった。


 学校の看板がマンマだったので少し気になったんだけど、OKが出てから見に行くと、反対側の門柱に「桜ヶ丘女子高校」の看板が貼ってあるのに気が付いた。なるほど、これだと校門前のドローンカメラで登校する生徒たちを撮って、看板を舐めながら自然にクレーンアップして校庭を撮ることができる。


「校庭にカメラ移動するから、その間体冷やさないようにね」


「よし、ジョギングだ!」


 クララさんの提案で、グラウンドを二周走った。


 体を冷やすこともなく、暖めすぎないようにゆっくり走った。走りながら省吾たちお仲間が、他の生徒や先生達と見学に来ているのが視界に入った。


「AKRってのは体育会系のノリなんだ……」


 玉男の呟きが耳に入った。そう、アイドルってたいへんなのよ!


 カメラは、徹底して校舎を写さないように配置された。仁和さんのこだわりだろう。

 

 ここで演出が入った。


 別々のグループで来ていた選抜メンバーが、連理の桜の前で立ち止まる。やがて選抜メンバーだけのグループになる。そして、潤とわたしのソックリコンビが「あ……」と、声を上げる。


「そう、そこで桜が咲き始める。二三人指差して、ちょいお喋り、桜に注目!」


 黒羽さんが檄を飛ばすように指示。


 ここは、テイクスリーでOK。わたしたちの視線の動きにシンクロしてドローンカメラが動くのは、ちょっと感動だった。むろん、この時期に桜なんかは咲かない。あとでCGで合成するらしい。


 あとは、グランドで、曲をかけながら振りの収録。



《二本の桜》

 

 春色の空の下 ぼくたちが植えた桜 二本の桜

 ぼく達の卒業記念

 ぼく達は 涙こらえて植えたんだ その日が最後の日だったから 

 ぼく達の そして思い出が丘の学校の


 あれから 幾つの季節がめぐったことだろう

 

 どれだけ くじけそうになっただろう

 どれだけ 涙を流しただろう 

 


 さすがに、ここは本編なので、パートで撮ったり、全員で撮ったり、わたしと潤は、途中で桜色の制服に着替えて撮ったり。撮影は昼を回ったころにやっと終わった。


「真夏さん、ちょっと」


 仁和さんの声がかかった。


「はい、なんでしょう?」


 かしこまって聞くと、仁和さんは、友だちを、こっそり教えるような気楽さで言った。


「あの桜の下に、女学生がいるの……分かる?」

「え………」


「ようく見てご覧なさい……」


 うっすらと、セーラー服にモンペ姿の女学生の姿が見えてきた……!



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