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真夏ダイアリー  作者: 大橋むつお
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41『二本の桜』

真夏ダイアリー


41『二本の桜』    




 まるで夢から覚めたようだった……。


 1941年12月7日のアメリカにタイムリ-プして、わたしは歴史を変えようとした。からっきしダメな英語がペラペラしゃべれ、習ってもいない歴史の知識が頭の中にある。


 そして、なにより、わたしは、ジョ-ジという若者に出会い、あっと言う間に死なせてしまった。そして、歴史を変えることはできなかった……その全てが夢のようだった。


――ジョ-ジなら生きているわ。Face bookで検索してごらんなさい――エリカが、言った。

 

 ジョ-ジ・ルインスキで検索してみた。五人目でヒット。プロフは、まさに、あのジョージであることを証明していた。シカゴ在住の99歳のオジイチャンだった。そうなんだ、この世界では、わたしはジョ-ジとは出会っていないんだ……いちおう納得した。


 この世界でもやることはいっぱいある。


 宿題は……そうか、やり終えた後に指令がきたんだ。



 わたしは、簡単に朝昼兼用の食事をとって、事務所に出かけた。午後からは新曲のレッスンだ。


 《二本の桜》

 

 春色の空の下 ぼく達の桜 二本の桜

 ぼく達の卒業記念

 ぼく達は 涙こらえて植えたんだ その日が最後の日だったから 

 ぼく達の そして思い出が丘の学校の


 あれから 幾つの季節がめぐったことだろう

 

 どれだけ くじけそうになっただろう

 どれだけ 涙を流しただろう 

 

 ぼくがくじけそうになったとき キミが押してくれたぼくの背中

 キミが泣きだしそうになったとき ぎこちなく出したぼくの右手

 キミはつかんだ 遠慮がちに まるで寄り添う二本の桜


 

 作詞、作曲は、AKRの会長、光ミツル先生だった。なんだか思い入れがあるようで、二本の桜は聞いていると日本の桜にも聞こえてくる。


「これって、言葉を掛けたんですか?」

「二本と日本……」


 クララさんとヤエさんが聞いた。


「オレが、そんなおやじギャグみたいなことやるもんか。マンマだよマンマ!」


 会長が、珍しく赤い顔をして言った。


「この春のヒットチャートのトップ狙うからな。まゆみちゃん、振り付け頼んだぜ」


 専属の振り付け師、春まゆみさんに、そう言うとスタジオを出て行った。


「会長、こないだ、48年ぶりに、小学校の同窓会に行って、初恋の彼女に会ったらしいよ」


 黒羽ディレクターが、新曲誕生の裏話をして、スタジオのみんなは弾けたように笑顔になった。


 実は、もう少し重い意味が、この新曲にはあるんだけど、それをわたし達に悟らせないために、光会長は、黒羽さんを通じて、こんなヨタを飛ばしたんだ。


 曲を覚えて、大まかの振りが決まり、休憩になってスマホをチェックしたときに、担任の山本先生からメールが入ってきた。


――よかったら、すぐに電話して欲しい――


 わたしは、折り返し山本先生に電話した。


「もしもし、真夏ですけど……」

『忙しいとこ、すまんなあ』

「いいえ、で、ご用件は?」

『真夏、学校のパンフレットのモデルになってくれないか?』


「え……!?」




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