31『新年会の夢物語』
真夏ダイアリー
31『新年会の夢物語』
白いネコが路地から駆けてきた。
続いて黒いネコ。
そのあと白黒のネコが来たら面白いだろうなと思った。
思ったことが、本当になるのは面白く、楽しいものだけど、ちょっと不気味だった。
黒いネコのあとには、本当に白黒のブチが、そして、まさかと思ったら三毛猫までもが、そのあとに続いた。
三毛猫というのは、そんなにはいない。だから、こうやって、パソコンでダイアリーをつけていても、黒いネコはネコと片仮名で出てくるけど、三毛猫は、あっぱれ漢字三文字だ。
正月から、縁起が良いというか、不気味というか……最後に、三毛猫が道を渡りきるところで、こちらをみてニャオーと鳴いた。「どんなもんだ」と言われたような気がした。
今日は、クリスマスと違って、昼からの集合ということになった。
あまり省吾のうちに面倒かけちゃいけないという気持ちもあったけど、みんなお正月の不摂生がたたっている。頭と体が本調子になるのは午後からだろうという予想が先にたったというべきだろう。
「今日は、親父出勤で、なんにも出来ないけど、まあ、スナックとソフトドリンクは揃えといたから」
テーブルの上には、スナックが体裁良く、お皿の上に並べられて、リッツクラッカーの上には、おせちの残りだろうか、チーズや、ハムの細切れなんかが乗っかってカナッペになっている。
「ちょっと。いじらせてもらっちゃった」
玉男がエプロンを外しながら言った。やっぱ玉男は、ただのオネエではない。
みんなが揃うまで、みんゴル・5の体感モードで遊んだ。ちゅら海リゾートのハーフだったけど、この手のモノはわたしの得意。そのうち、由香とうららも集まったけど、みんゴルは続いた。省吾が案外ダメで、10オーバー。優勝は言うまでもなく、わたしの3アンダー。
罰ゲームになんかやろうよ!
由香が提案。しばし思案顔の五人だったけど、わたしが提案した。
「初夢の発表会やろうよ!」
「あの、わたし、グッスリ続きで夢見てない」
うららの発言で却下になりかけたけど、将来の夢でもOKということになって、始まった。
「おれ、なんだか金太郎になって、熊にまたがって鬼退治する夢」
省吾の初夢にみんなが笑った。
「でもさ、鬼退治してるうちに、熊がナイスバディーのオネエチャンになってんの、それも裸のスッポンポン」
「わ、省吾ってリビドー高すぎ。鼻血出さないでよね」
わたしは、タイムリープの暗示が夢になっているのかと思った。
「わたしはね、夢じゃないけど、感動したお話」
由香が続けた。
「テレビで観たんだけど、映画監督の黒澤明が号泣した映画って、なんだか分かる?」
「スターウォーズかな。あれ、ダースベーダーの出演依頼断ったって、話だから、悔し泣き!」
玉男が、かき混ぜる。
「それは、三船敏郎でしょ」
「それがね、『となりのトトロ』なのよ。偉大な作家って、やっぱ感受性が違うのよね」
「なるほど……」
由香の話し方には説得力があり、みんな感心した。
「そういや、今月は『ハウルの動く城』と『コクリコ坂』テレビでやるんだよな」
「あ、『ハウル』今日よ。録画しとかなきゃ」
玉男が、スマホを取りだし、自分ちの録画機の予約をやりだした。玉男は、意外に最先端なので驚いた。
「あたしはね、こういう映画とか、音楽がいっぱいの、お気楽な飲み屋さんやりたいなあ」
「新宿とか赤坂?」
と、茶化してみる。
「そんなスノッブなとこじゃ、やんないわよ。渋谷か、高齢化社会ねらって巣鴨とかいいかもね」
意外と堅実。
「わたしはね……」
うららが始めた。てっきりダレかさんのお嫁さんになりたいとかじゃないかと思った。
「わたしは、うちの野球部を甲子園につれていくこと!」
「お見それしました……」
玉男が、一同を代表して感動した。
「でも、その前に、部員を二人は増やさなきゃ。七人じゃ、野球はできないわよ」
由香が、ヤンワリ釘を刺す。
「あ、なんか勘違いしてない。わたしは、甲子園に連れて行くって言ったのよ」
「それって……」
「まずは、直に観て感動するところからだと思うの。今年はみんなで甲子園の決勝戦を観にいく!」
で、みんなは大笑いになった。
わたしの番になった。
なんで優勝者が罰ゲームなのか分からなかったけど、なんだかのってきて、雰囲気になってしまった。
わたしは、昨日の『桃子の大冒険』の話をした。桃太郎が腐りかけて桃子になったところは大いに受けた。
わたしは、密かに省吾の反応をうかがったが、アハハと口を開けて笑っているだけ、やっぱ、タイムリープしたときの記憶はないのだろうか、それとも、わたしが、まだ夢を見ているのだろうか……。




