315、一瞬なる者
●【No.315】●
ここはレギザス王国の廃墟の奥にある王宮跡地…その奥にある "玉座の間" にて。
その玉座の間らしき部屋に入るヴァグドーたち一行。 扉がないので、そのまま中に入る。 ここに一体何があるのか…?
「「……」」
「「「………」」」
―――中は意外に広く明るい。
…というより、屋根がない。
…壁はあるが、屋根がない。
その壁も所々がヒビ割れて崩れていて、瓦礫となって床に落ちてる。 床が屋根や壁の瓦礫で散乱している。 本当に酷いもんだよ。 ここが…かつて "玉座の間" だったとは、到底思えないんだが…な…。 そして…奥にあるはずの玉座もない。 …というより、よく見えない。 その前に…なんかバカデカイ…何が立っていて塞いでいるのか、その後ろが…よく見えない。
そこでワシらが、さらに奥へと歩いていくと、ようやく「何か」が見えてきた。
「ふむ、見えてきたぞ。 アレじゃな?」
「「「……」」」
「へぇ~~、アイツかぁ……」
「何アレ?」
「……嘘?」
「スゲエ!」
「「「………」」」
あの… "玉座の間" の一番奥にあるはずの玉座の手前で、山ほどの大きな身体の男が立っておった。 コヤツがおそらく賊徒共の親玉……その名も "賊徒王" じゃろうて。 ワシ以外の他の者たちの中には、その巨大な姿を見て、恐怖して戦慄する者、または唖然して立ち尽くす者、それと呆れて無言になる者、様々いるが―――遂に見つけたぞ。 コヤツを倒して、この地を手に入れるのじゃ。
そこでワシがみんなより、さらに前へ出ていき、その賊徒王に近づく。
すると…賊徒王が静かに語り始める。
『何しに来た?』
「無論、この地を手に入れる為に来た」
「へぇ~~、そ~なんだぁ~~」
「一目見て、気に入ってのう。 ここを拠点にするつもりじゃよ」
「なるほど、それはそれは…」
「……」
『ならば、この俺様を倒すしかないな。 今まで倒してきた雑魚共とは、比べ物にならんほどの強さを持っているぞ。』
「ほっほっほっ、構わん構わん。 むしろ臨むところじゃ」
「へぇ~~、さすがだねぇ~~」
「……」
『ふっ、命知らずの愚か者め。 覚悟しろ』
「ふむ、よかろう」
「ちょっと待った!」
「……」
『?』
ワシと賊徒王の会話に割って入るようにして、あの悪魔神オリンデルスも前に出てきて、ワシの横に並ぶ。
「なんじゃ?」
「今回もキミが戦うのかい?」
「いかにも、そうじゃが?」
「おいおい、たまにはボクにも戦わせてくれよ。」
「お前さんも十分戦ってきたみたいじゃが…?」
『……』
「まぁ…そう言わずにさ…今回は譲ってくれないかい? せっかく新型必殺技ができたんで使用する機会を窺っていたんだよ。 試させてよ?」
「まぁ…好きにせい」
「悪いね、恩に着るよ」
『……』
「あれ、もしかして…キミごとき相手にボクとヴァグドーが二人がかりで相手にすると思った?」
『ふん、愚か者め。 後悔してもしらんぞ』
「勿論、後悔するのは……キミの方さ」
「……」
『ほざけ!』
そこでオリンデルスがさらに前に出てきて、賊徒王と対峙する。 果たして…オリンデルスのいう新型必殺技とは、一体何なのか…? さすがのワシでも少しは興味がある。
《賊徒王》
〇レベル:330・ランク:C
●容姿:山ほど大きい巨体に両手には鉄のグローブ、両足には鉄のブーツを装備している。
◎攻撃方法:主に拳や蹴りによる打撃。 ごくたまに口から怪光線を放つ。
グアッ!
賊徒王が片足を上げて、すぐ下にいるオリンデルスを踏みつけようとする。
ブゥゥゥンン、ズドォーン!
しかし、オリンデルスは持ち前のバリアーを張って、その攻撃を防ぐ。 あのバリアーは…いつも使用してるバリアーとは、少し様子が違って見えた。 なんというか…なかなか異質なバリアーだった。
「《ノーブル・バリアー・アウト》」
ブゥゥゥゥンンン、ズドォッ、ズガァッ、ドゴォッ!
『ムッ!?』
「……」
あの賊徒王が、どんなに拳を振り下ろそうが、蹴り飛ばそうが、踏みつけようが、全くビクともしない頑丈・強固なバリアーになってる。 おそらくいくら最強の男でも…破るのは容易ではないだろう。 それが…あの《ノーブル・バリアー・アウト》というヤツなのか…?
「?」
「……」
『クッ!?』
何度も何度も拳を振り下ろし蹴り飛ばし踏みつけて、あの《ノーブル・バリアー・アウト》をなんとか破壊しようとするけど、なかなか破壊できないでいる。 慌てて焦る賊徒王と疑問に思う最強の男。 そして…静かに何かを思う悪魔神。
―――おかしい。
今のところ、防戦一方じゃな。
まさか…アレが新型必殺技なのか? 否、そうではないじゃろ? 何か他に凄い技があるじゃろ…? さすがにアレではないだろう? これで終わりではないだろう? まだ何かあるじゃろ…?
やれやれ、やっぱり…コレには時間がかかるな。 あとは…エネルギー消費も激しい技なんだよな。 とてもじゃないけど…連続して使用できる技ではないな。 それに変色するのも…なんだか…何かの前触れだと思わせてしまうだろうね。
「!」
『!』
すると…《ノーブル・バリアー・アウト》の色が少しずつ黒く変色していく。 最初のうちは無色透明で中にいるオリンデルスの姿もよく見えていたが、だんだんと灰色になっていき、今は薄い黒っぽい色になってる。 これは一体・・・?
あのバリアー―――何かがヤバイッ!!
さすがは最強の男。
長年の経験と冴え渡る勘が…あのバリアーを危険と判断する。 普通、バリアーをヤバイと判断するのもおかしなこと。 バリアーは使用者の身体と生命を守ることに特化されており、それ以上のことはないと思われていたからだ。 だがしかし、ヴァグドーの直感は危険と感じていた。 そこでヴァグドーは、今いる場所から…かなり後退して、勇者アドーレや大魔女シャニルがいる所まで戻った。
"あの最強の男が………後退したッ!?"
一方の賊徒王は、確かにバリアーの色が黒っぽくなったのに疑問を感じていたが、そんなことは特に気にせず、どんどんとバリアーに攻撃していく。 つまり今、オリンデルスにもっとも近い場所にいるのは…あの賊徒王だけである。
ズドオオオオォォォーーーーーッ!!
遂に賊徒王が口から怪光線を放って、目の前にあるバリアーを破壊しようとするが、そのバリアーは全くビクともしない。 そのうち、バリアーの色が漆黒の球体に変化。 それはまるで漆黒エネルギーの球体が収束・凝縮したように見えており、その中にいるオリンデルスの姿がもう見えない。
ザッ、ガッ、ボッ!
次の瞬間、一瞬で漆黒エネルギー球体バリアーが怪光線を放ってる賊徒王めがけて飛んでいく。 口から怪光線を放ってる賊徒王は…もはや回避も防御もできず、その漆黒エネルギー球体バリアーが巨体に直撃。 次の瞬間、一瞬で賊徒王が消滅して、背後にあった壁も跡形もなく消滅した。
ニヤリ♪
「《ダークネス・デスボール》」
もう既に技は完了しているが、不敵な笑みを浮かべながら、改めて技名を言う悪魔神。




