猫耳と彼シャツとめぐる
かなり前に拍手で公開していたと思しき小話。
時系列的に「新しい使い魔」の後ですが、綺麗に締めたと思った後にこれを入れるのはちょっとなーと思い、拍手お礼を変えた後はお蔵入り状態でした。
時を経て結局これを締めにしているというね……。
ある日、俺が部屋に戻ると、
(ごしゅじんさま、みてみてー!! めぐ、みーとおそろい~!!)
猫の耳と尻尾の生えたメグがへたり込んでいた。
しかも、身につけているのは俺のものと思わしき白シャツ一枚だ。
「や……っ、見ちゃダメです……っ!!」
耳と尻尾を必死で隠す彼女の、恥じらいの表情もいい。だが、下着をつけていないらしいことも気になる。
隠れる場所を探す彼女を追い詰めようと進めた足に、何かが引っ掛かった。襤褸切れかと思いきや、よく見るとブラジャーだった。ミーの噛み痕と爪痕でもはや本来の役割を果たせる状態ではなくなっているが。
「きゃああ! それっ、返して下さい!」
俺の見ていたものに気づいたメグが悲鳴を上げる。そんな風に必死で言われると、かえって渡したくなくなるな。
「返したってどうせもう着けられないだろ」
「う、うう……そうですけど」
もはや襤褸切れと化したものを放ると、ミーが素早くキャッチしてじゃれつき始めた。
メグは悲愴感溢れる面持ちでそれを見つめる。「気に入ってたのに……」という呟きが聞こえた。
俺はと言えば、今すぐにでも彼女に襲いかかりたくてうずうずしていた。
「ところで、メグ」
「はい? あっ、なんでこうなったか説明しますね!」
そんなこといいから早く抱かせろという俺の視線を軽く無視して、彼女は語り始めた。
「アレックスがいない間、私はこの部屋のお風呂を借りていました。ちょうど体を洗っている時にですね、ミーちゃんがお風呂場の戸をとんとん叩いてまして。せっかくだからミーちゃんも洗ってあげようと思って、入れてあげたんです」
「……一緒にお風呂?」
「はい。ミーちゃん、ピカピカになったでしょう?」
一人と一匹が仲良く風呂に入っている光景が、容易に想像できてなんか腹が立つ。
「――あとで俺の背中も流してもらうからな」
「ええと……、話の続きをしますよ。お風呂からあがってみたら、脱衣所に置いておいた着替えが無くなっていました。ミーちゃんにここにあった服を知らないかと訊いたら、ミーちゃんはアレックスのベッドの下に駆け込んで……」
「で、ミーが出してきたのはボロボロになったお前の着替えだった、ってワケだな」
「そうなんです。私もう、リアルにorzってなっちゃいましたよ」
「ああ、久しぶりにその体位でスルのもいいな。ちょうど猫耳と尻尾が生えてて、獣みたいだし」
「……えー、それで私は仕方なく、アレックスのシャツを借りたんです。もう、すぐにでも服を取りに、一度自分の部屋に戻ろうと思いました。でも、その前に襤褸切れ化した服を回収しなきゃと振り向いたら、ミーちゃんが私のブラジャーをくわえてて……。『返して』とお願いしても返してくれないので、追いかけっこになりました」
メグが、「誰かさんにそっくりですね」と言いたげな目で俺を見た。俺は別に、逃げも隠れもしないぞ? むしろお前を追うし、追い詰めたい。
「その途中で、私、転んでしまったんですよ。へたり込んじゃったら、ミーちゃんがすり寄ってきてくれて、『めぐ、いたい、ない!』って言ってくれたんです。嬉しくてミーちゃんを撫で撫でしてたら、何故か頭とお尻のあたりがムズムズしてきて――」
「で、気づいたら耳と尻尾が生えていた、と」
それは十中八九、ミーの魔力の影響だな。
しかしまあ、結論から言えば、
「ミー、グッジョブ!!」
俺の言葉に、メグの下着と戯れていたミーが尻尾をピンと立てた。
(みー! めぐ、みー『ぐっじょぶ』だって!)
「な、何がグッジョブなんですかアレックス!」
そんなこと、説明するまでも無い。メグの両腕を掴むと、それまで彼女が必死で隠していた耳と尻尾が顕わになる。どちらも白くてふわふわだ。
「ま、前にもこういうことありましたよね。……なんでこうなっちゃうんですか」
メグが言うのは、正月のバニーガールの一件だろう。そういえばあの時、メグの耳はかなり高感度だったな。
「なんで、も何も。こういうのが似合いすぎるお前が悪いんだろ」
ふ、と耳に息を吹きかけると、彼女の体がびくっと震えた。尻尾がゆらゆら揺れている。その動きが示す感情は、「快」だ。
頬を染めながら尻尾を揺らす彼女を見ていて、閃いた。
「よし、今日は一日、語尾を猫っぽくして喋れ」
「な、なんでそんなことしなくちゃいけないんですにゃ!?」
メグがハッと口元を押さえ、頭をぶんぶん横に振った。
(みー、ぐっじょぶ~)
ミーは機嫌良さそうにゴロゴロ言いながら、メグの下着で遊んでいた。メグが無意識のうちに語尾に「にゃ」を付けてしまったのも、ミーの魔力の影響のようだ。
「ミー、今日一日だけ、メグが猫みたいに啼くように出来るか?」
(できる! めぐ、にゃんにゃん、する!)
大きく目を見開いて、メグはとんでもないと言いたそうな視線を送ってきた。
けれど既に俺の頭の中は、どうやってメグを啼かせるかで一杯になっていた。
一晩中響きわたった猫の啼き声が、翌日、寮内で密かに話題を呼んだのは、彼女にだけは秘密の話だ。
自主的に没にしたネタを出す気にならない限りは、今度こそ本当におしまいです。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。