45話 エピローグ
それから4年が経った。
羽瑠32歳、
朔25歳。
朔が研修医の期間を終え、
正式に医師として働きはじめて少し落ち着いたころ。
私たちは結婚した。
白衣を脱いだあとも、
病院の外でも、
眠る前の静かな時間でも、
どんな日常の中でも、
隣にはいつも朔がいた。
「次はさ、生きているうちにやりたいことリスト…
3人になるね。」
そう言いながら、朔がそっと私のお腹を撫でる。
あたたかい手のひらが、服越しにじんわり伝わってくる。
「そうだね。あ、今お腹蹴った!」
「え、どこ?」
私が朔の手を重ねて誘導すると、
朔の目がふっと柔らかくほどけた。
「本当だ…
俺たちの声、聞こえてるんだね。」
「そうだね。名前なにがいいかな?」
私がそう言うと、朔は少し考えてから顔を上げた。
「うーん。
いいこと思いついた!」
「なに?」
「月羽。」
「つきは?」
「そう!
月ってさ、欠けてもまた満ちるでしょ?
だから、暗闇があっても未来へ羽ばたく光になるようにって。」
「すてきだね。
あ、でも男の子だったら?」
「あ!確かに!
一緒に考えよっか。」
「うん。」
二人で笑い合いながら、
まだ見ぬ未来の話をする。
窓の外では夕暮れがゆっくりと色を変え、
部屋の中には小さな明かりだけが灯っていた。
会えなかった時間も、
泣いた夜も、
失ったと思った日々も、
全部ここへつながっていた。
そして今、
私たちは“生きているうちにやりたいこと”を
これからも一緒に叶えていく。
ゆっくりと、
確かに、
同じ未来へ。
『万華鏡は月を戻す』完結。




