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謀婚 帝国編  作者: 樫本 紗樹
おまけ Web拍手再録とおまけSS

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オリバーの日記 その一

シリーズを通しての、オリバー視点の日記になります。

帝国編だけではわからない事もあります。何卒ご了承下さい。

 今日から正式にエドワード殿下の近衛兵として務める事になった。

 あの方は親しい人以外に名前を呼ばれるのを非常に嫌う。

 私達は従兄弟という関係上、名前で呼びかけても問題はないが今後の為に殿下と呼ぶ事にする。




 クラウディア様が亡くなられた。殿下は気丈に振る舞っておられたが心配だ。

 殿下は幼い頃、両親から愛される事なく育った。

 それでも殿下が五歳の時にクラウディア様が王宮へ入られ、少しずつ笑顔が増えていった。

 クラウディア様が向けた家族愛を、殿下が恋愛感情と混ぜてしまった事は誰も咎められない。

 殿下に対しあくまでも一個人として接したクラウディア様に惹かれるのは当然ともいえる。

 だがクラウディア様は誰よりもウィリアム陛下を愛していた。

 そしてそれは殿下もわかっている。

 わかっていても感情の整理が出来なかったのだ。

 だからこそ心配だ。殿下を精一杯支えなければ。



 殿下が自分だけを愛してくれる女性を探し始めた。

 王太子ではない、素の自分に興味を持つ女性を探しているようだ。

 殿下に声を掛けられて断る女性はいない。

 側室を持つ事も出来るので何人声を掛けても構わないのだが、少々多すぎる気がする。



 気になって調べた所、女性達は皆エドワード王太子殿下としか見なかったようだ。

 殿下の王太子としての振舞いは作り物で、実際は少々面倒なのがいけないのだろうか。

 それともレヴィ王太子妃、将来のレヴィ王妃という肩書が魅力的過ぎるのかもしれない。

 殿下は普段平然としているが内面は脆い。絶対に表には出さないが。

 それに誰かと相思相愛になれるのを夢見ている。

 王太子としては正しくないのだろうが、私も殿下を心から慕ってくれる女性が現れてくれる事を切に願う。



 殿下に政略結婚の話が持ち上がった。

 陛下も殿下が相手を選べないと見切りを付けられたのだろう。

 話はシェッド帝国とガレス王国から持ち込まれたが、殿下は迷いもせずシェッド帝国を選んだ。

 情勢を考えれば当然であり、誰も文句を言わなかった。

 シェッド帝国の考えなど私にもわかる。絶対にレヴィ王国は渡さない。

 だから近衛兵が皇女の行動を監視する事に決まった。

 殿下はレヴィ王国の将来に必要だ。命を奪わせたりはしない。



 嫁いでこられたナタリー様は何も知らない様子だ。

 拍子抜けするくらい何も知らない。常識が一部欠落している感じさえする。

 自己主張する事もなく、与えられた事を黙々とこなすだけ。

 殿下が相変わらず唯一の女性を探している事に対しても決して文句を言わない。

 ナタリー様が何を考え暮らしているのか、暫く様子を探ろうと思う。



 ナタリー様の視線に殿下への思慕が含まれているのは間違いない。

 しかしナタリー様はその視線を決して殿下の前では見せない。

 遠く、庭などで女性に声を掛けている所を見つけた時にだけ不意に浮かぶのだ。

 帝国人にしては珍しい、遠慮がちなナタリー様ならと少し期待してしまう。

 ナタリー様なら殿下を救ってくれるかもしれない。



 殿下とナタリー様が仲睦まじいと評判だ。

 殿下は次から次へと女性に声を掛けているのに、何故そうなるのか不思議だ。

 夜会における殿下のナタリー様に対しての振る舞いがいい夫らしいのだが、いい夫なら他の女性に声を掛けないと思う。

 一夫多妻が認められている王族だから、貴族達はそれでもいいのかもしれない。

 だがナタリー様が不安だ。殿下に見切りを付けられないといいのだが。



 今回の視察も特に問題がなくて一安心した。

 殿下の人使いの荒さはどうにかならないだろうか。

 それでも国内の情報を集める為に的確な視察指示なので文句は言えない。

 殿下夫妻の関係性が変わっていない事に関しては残念の一言である。



 第二王子チャールズ殿下が亡くなった。

 正直私は彼をよく思っていない。殿下から母親を奪った存在だからだ。

 オルガ元王妃殿下は最初から殿下には興味を持っていなかった。

 それだけならまだ良かっただろう。

 だがチャールズ殿下にだけ向けられる愛情は殿下の心を抉ったに違いない。

 弟と自分で何が違うのか、当時の殿下にわかるはずがない。

 オルガ元王妃殿下の秘密を知った時、私はやるせない気持ちになったものだ。

 何故罪のない殿下が苦しまなければいけないのか。

 しかもチャールズ殿下は実父を毒殺という置き土産をして命を絶った。

 殿下が脆い事を知らなかったとはいえ、何という仕打ちだと文句を言いたくてもチャールズ殿下は既にこの世にない。


 だが、チャールズ殿下に感謝もしなければいけない。

 殿下は政略結婚と完全に割り切っており、夫婦仲を良くする気がない事は近衛兵に知らされていた。

 それ故に王太子の寝室を整える女性は近衛兵の娘と決められた。

 口の軽い女性にシーツ交換を任せれば、何を言い出すかわからないからである。

 騎士の娘ならこのような使用人の仕事をしなくてもいいだろうに、彼女は真面目に務めた。

 その彼女が今朝、近衛兵の休憩所に入ってきた。

 いつもは大して乱れていないシーツが乱れていて、破瓜の証があったと。

 余計な世話極まりないが、近衛兵達は密かにこの日を待っていたのだ。

 ナタリー様が殿下を一人の男性として思慕していると言うのは近衛兵の中では共通認識。

 帝国の思惑はこちらで片付けるので、ナタリー様には是非殿下を愛してほしい。




 やっと夫婦として歩み出すと思ったのに、その後寝室のシーツが乱れる事はなかった。

 一夜の過ちと思っているナタリー様と、初めての感情を持て余す殿下。

 夫婦間に口出しするのは良くないだろうから、しばらく様子を見よう。



 様子を見ていたら拗れたようだ。

 ナタリー様が殿下に側室を薦める意味がわからない。 

 殿下もそれを真に受けて落胆している意味がわからない。

 殿下は結構大胆で時に無情な判断も下すが、傷付くのが苦手な方。

 夫婦喧嘩は犬も食わぬと言うが、喧嘩さえ出来ない場合はどうしたらいいのだろうか。 



 シェッド帝国の皇帝即位祝賀会へ出かける事になった。

 私は従者に変装してついていく。

 一緒に行く弟はシェッド帝国へ置いて、そのまま間者となる予定だ。

 殿下がナタリー様に好意を持った故に任務が変わったにもかかわらず、弟は乗り気だ。

 弟の視線の先を考えれば、これでいいのかもしれない。

 いや、弟ならもしくは。まぁ彼女に同情する義理はないからいいか。



 ナタリー様が殿下を受け入れなかった。

 正しくは殿下の気持ちをナタリー様が汲む事が出来なかった。

 私の目から見ても殿下は特別な感情を持ってナタリー様に優しく接しておられた。

 ナタリー様は急に変わった殿下の態度が理解出来ないのかもしれない。

 あの夜に何があったかまではわからないが、殿下の何かに触れたのだろう。

 ナタリー様もそれが思い当たらないのかもしれない。殿下は少々面倒だから。



 無事にナタリー様が女児を御出産された。

 女児で一安心だ。男児でも何とかなったが、女児なら帝国は動かない。

 あとは夫婦として歩み寄るだけなのだが、殿下は未だに女性に声を掛けている。

 殿下は賢いのだけれど、恋愛に関しては鈍い。

 ナタリー様が相思相愛の相手なら、他に探しても見つかるはずがないのに。

 ナタリー様も殿下への思慕を表に出して下さればいいのに、必死に隠していらっしゃる。

 私はこの夫婦を見て恋愛結婚はしないでおこうと決めた。面倒臭すぎる。

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