次の日 PM4:00 私の家
「……カエデたちは、もう帰ったの?」
訪ねて来たブレンダが、言った。
「……ええ。すぐに帰るって、和也さんが」
本当に、あの子は楓が好きなのね。もう楓を真綿にくるむような扱いだったわ。
「和也さんは仕事があるけれど、楓は一足先に日本に戻るって」
『仕事は超特急で終わらせて、帰るから。お前はあの家で、待っていてくれ。子どもたちと一緒に』
そう言った和也さんに、
『はい』
にっこり笑って、楓が答えてた。
……あの子にも、判ってる。自分が生きる場所は、和也さんの隣、だと。
ふうっとブレンダがため息をついた。
「カズヤの近くにいることができる魔女って、あなたとカエデぐらいでしょ? なにせ、彼は『魔力を無効化する』力の持ち主だから」
まあ、確かにブレンダも和也さんの目の前には現れなかった。他の魔女たちも、和也さんを避けていたから、居心地悪かったようね。
……同じ力を持っていたあの人も、同じ事を言ってたわねえ……。
「ねえ、ブレンダ?」
「何?」
私はにっこり笑って、言った。
「……私が、あの人と生きる選択をしなかったら、あんな風に、命が増えていく事も……愛する人が増えていく事も、知らないまま、だったわ」
「……」
「人間はね、確かに私たちよりも先に逝ってしまうかもしれない。でもね、一緒に過ごした時間は、永遠に消えないの」
……そうよね、あなた。
「……」
「だから、あなたも……」
「……怖がらないで、人と関わってみなさいな、ブレンダ。あなたにも、この幸せを味わってほしいの、私は」
……ブレンダはしばらく、黙ったまま、だった。
「……マリー……」
ぽつり、とブレンダが言った。
「私にも……いるかしら。
……魔女でも、私を、愛してくれる人、が」
「いるに決まっているでしょ?」
私はブレンダに言った。
「……私の水晶玉占いは、
……的中率100%よ?」
そう言って、私は、ブレンダの頭をよしよし、となぜた。
……あなた。
私は、あの人に話しかけた。
きっと、海人も菫さんも、あなたの傍で、あの子たちを見守ってくれているでしょうね。
近い将来、楓と和也さんが双子を抱いて、写真に写るわ。
……楓に渡した、あの、写真の様に、ね。
「ブレンダ、スープを飲んでいって?」
私はブレンダに椅子を勧めた。ブレンダが頷いて、椅子に座る。
……いつもの様に、魔法のスープ、を用意する。
私はブレンダと一緒に、スープを味わいながら、まだ見ぬひ孫のことを考えていた。
……そうそう、男の子と女の子だから、色を変えないといけないわね。かわいい布を探しましょう。
……楓と和也さんにそっくりな、かわいい子どもたち。
その子たちに会うまでに、仕上げないと、ね。
……水晶玉に映った、二人の未来。
双子を一人ずつ抱いて寄り添う、楓と和也さんの姿。
……きっと、この子たちは幸せになる。
……楓。幸せにおなりなさい。
魔女として生きるよりも
……人間として、和也さんの傍で生きる事を選んだ、私の可愛い孫。
私はね、いつだってあなたたちを、見守っているから。
それが、私の幸せ、でもあるから。
……私は、ここから、あなたたちの幸せを見守っていきましょう。
……いつか……
私が、あの人の隣に行く事ができるようになる
……その日まで。
<MoonLight*HoneyMoon 完>




