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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
MoonLight*HoneyMoon
75/88

AM8:00 和也さんの部屋~本社会長室

「ん……」

 まぶ……しい?

 うっすらと目を開ける。ここ……?


 艶のある木目の天井。薄グリーンのカーテンから、陽が部屋に差していた。

「……っ!!」

 がばっと起き上がる。枕元の目ざまし時計を見る。

 え!? もう八時!?


 ええええええっ!?

(わ、私、思いっきり寝坊してるっ!!)


 ……ふと、隣を見ると、枕に凹んだ跡。そこに……メモ? 白い紙を手に取った。


『おはよう。今日は大事な会議があるから先に行く』

――和也さんの綺麗な字。


 か、和也さん、もう会社……?

 

(き、昨日……は……)

 かああああっと頬が熱くなった。

(と、途中から覚えてないっ!!)

 な、なにがどうなって……。


 ベッドから降りようとしたら、身体に鈍い痛みが走った。

 う……なんだか、感じが、変……。


 と、とにかくシャワー浴びよう。

 上掛けを身体に巻き付けたまま、私はシャワールームへと歩いていった。


*** AM9:30 本社会長室


「……緊張しとるのか、和也?」

「え?」

 じーさんの声に、俺は書類から顔を上げた。


 じーさんは、今日も羽織袴姿だ。

「いつもはもっと五月蠅いお前が、今日はやたらと静か、なんでな……」

 いつも五月蠅い……って。なんだ、それは。

「別に……考え事をしていただけです」

 ……じーさんの目がきらりと光った。またこの表情(かお)か。悪だくみをしてる時の顔。


「……そうそう、楓さんにお礼をせねばならんなあ。昨日も夕御飯までご馳走になったことだし」

 ……楓……

 じーさんが探るような目でこちらを見ている。俺は表情を変えなかった。

「……楓も疲れるでしょうから、押し掛けるのは、ほどほどにして下さい」

 そう言うと、ほー、としたり顔でじーさんが言った。

「えらく態度が違うもんじゃな。昨夜は途中まできりきりして、全く余裕のない顔じゃったのに」

「……」



 昨日は……


 ……ムーン・スター・ローズの魔法にかかってた、としか言いようが、ない。


 止まらなかった。楓に……溺れた。


 今朝起きたら、楓はまだ眠ったままだった。 

 ――初めてじっくりと見た。俺の腕の中で眠る楓、を。いつも俺より先に起きてるからな……。


 長い髪が白い肌に巻き付いてた。薔薇色に上気した頬。ぽてっとした唇。 


 ……たまには、寝坊してもらうのも、いいか。

 そう、思った。


「……この会議さえなければ……」

 思わず、ぼそっと口からこぼれた本音をじーさんに拾われた……ようだ。

 くっくっく、とじーさんが笑う。

「……余裕、じゃな。九条コンチェルンで手掛ける、初めての巨大プロジェクトじゃから、お前と言えども気負ってるかと思っておったが……」

「……まあ、それもあって、イライラしていたのかも、知れませんが」

 ――今は落ち着いてる。


『ずっと、傍にいます』

『私、いつだって和也さんの元に戻ってこられます』

 楓……。

 楓がいてくれるなら、他に怖いものなどない。


 コンコン。ノックの音の後、ドアが開いた。

「……会長。会長代理。お時間です」

 よっこらしょ、とじーさんが腰を上げた。

「……では、行くかの? 和也」

「はい」

 俺は、書類を小脇に抱え、じーさんの後ろを歩いて行った。

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