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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
MoonLight*Short*Story
68/88

和也SideのStory~楓と『彼女』2

 ***三日後 PM1:20

 

 一度、家に戻り、シャワーを浴び、ひげを剃った。伶子が差し入れてくれてた、サンドウィッチをかじって、また病院に。


 楓の診察と昼食が終わるまで、外で待っていた。


 ……何を言えばいいのか、わからない。

 安堵と怒り。もう頭の中がごちゃごちゃだ。


 俺は、すうっと大きく息を吸った。

 ……そして、楓の病室のドアをノックした。


***


「気分は……どうだ」

 やっと絞り出した声。

「は……い、大丈夫……です……」

 楓がおそるおそる言った。落ち着かなさげに、身体をひねった。


 ……ん?


 楓の首元から、銀の鎖が外に出た。


 ……え……!?


 俺は目を疑った。手を伸ばして、楓のメダルを手に取る。


 ……完全な楕円形だったメダルが……




 ……半分、になっていた。


「お前……これ……」

 声がかすれた。


「あ、の……これは……」

 つっかえながら、楓が言った。

「あの火事の時……魔力が暴走して、どこかに飛ばされて……で、そこで会った男の子、にあげました」

「……」

「心を閉ざしてて……悲しい事があったのに、それを誰にも言えなくて……」

「……」

「また会える? って聞かれたから……」

「……」

「おばあちゃんが言ってたんです。このメダルは二つに分かれても、一つになろうとするから、どんなに離れてても、半分ずつお互い持っていれば、必ずまた会えるって」

「……」

「だから……また会う約束をしました」

「……」


 楓……が……?


 ……あの時の『彼女』と


 ……完全に、重なった。



 俺は、自分の首の後ろに手を回し、銀色の鎖を外して、楓の右手のてのひらに置いた。

 その先についているのは……


 ……半分の、銀のメダル。


『大事に持っていて』


 ……そう、『楓』が言った通り……

 ……ずっと、大事に、持っていた。


 ……一つに戻ったメダルを見て

「え……え……ええええっ!?」

 楓が驚いたような声を上げた。

「ど……うして……」

 ……呆然と呟く、楓。


 ……お前が、俺に渡したから。

『きっと、また、会える』

その言葉通り……また、会えた。



……だから、俺は、楓にこう言った。

「……薔薇の……」

「薔薇の……あざ、まだ背中にあるのか?」


 ……そう聞いたら、

 えっ!?、とびっくりしたような顔をした。


 ……やっぱり、楓、だ。


 その事実に、呆然としていた俺の目に……窓ガラスに映る、女性の姿、が入ってきた。

「お、おばあちゃんっ!?」

 楓が叫ぶ。

「……楓の……『おばあちゃん』?」

 呆然と、俺は言った。

「確か……亡くなった……と……」


 ガラスに映った、楓のおばあちゃんは、今は魔女の村にいることと、このメダルのいわれ、について話してくれた。


『そのメダルはね、魔女が「自分の魔力と心の半分を、大切な人に捧げる」のに使うのよ?』

『そのメダルを渡すってことは……私と人生を共にして下さいって事。つまりプロポーズね、魔女の』


 ……プロポーズ!?

 俺は目を見張った。


 ……楓が? 俺に?


 当の楓は、どうも知らなかったようで、ビックリ仰天、真っ赤になっていた。


 ……心の底から、強い想いが湧き上がってくる。

 ……お前は……俺のもの、だ。


 だから、『おばあちゃん』に、こう言った。


「……楓の体調が良くなり次第、すぐ手配します」

「えええええっ!?」

 目を白黒させてる楓にも、こう言った。

「……俺のファーストキスを奪って、プロポーズしたのは、お前の方だぞ」

 その言葉で、真っ赤になった楓を、俺は見つめた。


 ……俺の魔女。もう俺から、解放されることはない。



 ……なにせ

 ……二十二年前から、俺は


 

 ……お前の事が、好きだったんだから。


<MoonLight*ShortStory 完>

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