和也SideのStory~魔女と出会った夜4
「ん……」
ソファに寝かせていた、彼女が動いた。
「……気がついたのか?」
覗き込むと……
「しゃ、社長っ!?」
ゴン。いきなり頭突きを喰らった。
「いたた……」
「痛いのはこっちだ、この石頭」
「で? 説明してくれ」
目の前に座る。……どう見ても、居心地悪そうだな。
……彼女は、何か、を決めたように、真っ直ぐに俺を見た。
「あの……信じてもらえないかも、しれませんが……」
「実は、私……魔女、なんです……」
『実は、おねえちゃん……魔女なの』
……同じ声。同じ言葉。一瞬、暗い海辺にいるような気が……した。
目の前の彼女、が
――『あの時』の、彼女と重なる。
……俺は、ため息をついていた。
「わかった。で?」
びっくりしたように、彼女が目を見開いた。
「え、えらく、あっさり、なんですね……」
……ニ度目だからな、とは言えなかった。
「目の前で空飛ばれたら、信じるしかないだろ」
代わりに、そう言った。
「あ、あの……しゃ、社長にお願いがっ……!」
必死な顔。そう言えば、こう言っていたな……。
『内緒にしてくれる? 魔女だってこと、バレちゃ、だめなの』
「別に人に言う気はないが」
「え?」
目を丸くしてる。
「誰でも、言いたくないことぐらいはあるからな」
……そう言えば安心するのか、と思ったが、まだ何か言いたそうだな。
「で、でも、お願いと言うのは、そうではなくて……」
「……」
「わ、私を解放、してくださいっ!」
「は?」
解放? 何の事だ?
「俺がお前を?」
「は、はい……」
「……別に捕まえたりしてないだろ」
「そ、そういう物理的な意味じゃなくて……」
「……」
「私、今……あなたに従属している状態です」
……一瞬、耳を疑った。何を言った、今!?
彼女が話を続ける。
「……魔女は、魔法を使うところを見られると……その人のもの、になってしまうんです……」
……俺の、もの?
この、目の前にいる、魔女が?
思考が止まる。
「……お前が……俺のもの……?」
頷いて話す、彼女を見ながら……俺は、ぐるぐると同じ事を考えていた。
……俺のもの。俺の。
……何だ……この気持ち、は……。
……やっと……手に入れた。
ずっと、探していたものを。
そんな想いが湧き出て来た。
……だから、彼女にこう言った。
「こんな面白そうな事、忘れるなんてできない」
「お前は、俺のもの、だ」
彼女が目を見開く。……信じられない、といった表情。
だが……もう……
(……手放すわけ、ないだろう?)
……そう、思った。




