表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
MoonLight*Short*Story
64/88

和也SideのStory~魔女と出会った夜3

***二年後 満月の夜 レストラン


「ねえ、なに考えてるの?」

 甘えたような声。俺は向かいに座っている麻耶を見た。

 右手に赤ワインの入ったグラスを持ち、左ひじをついて、俺を舐めるように見ていた。真っ赤なネイルが人目を惹く。

「……仕事だ。まだ残ってる書類がある」

 はあ、と麻耶がため息をつく。


「食事の時ぐらい、別の事考えられないの? 和也さんって本当、仕事ばかりよね」

 すねたような瞳。

 ……麻耶ともここまでか。


「すまない。まだまだ、ひよっこの会社だからな」 

 フォークとナイフを置き、ミネラルウオーターを一口飲んだ。

「……先に失礼する。会社に用事を思い出した」

 ちら、と麻耶の瞳に苛立ちが映った。

「なら、和也さんの家で待たせてもらおうかしら。確か会社近くのマンション住まいよね?」

 ……あそこか。

「いいわよねえ、最上階のペントハウスでしょ? 一度そこからの夜景、見てみたいと思ってたの」

 ……本当にあの場所がいいと思ってるのか。

「……仕事がいつ終わるかわからないから、待たせるのは悪い。タクシーに送らせるから」

 むっとしたような表情。

「……わかったわ。折角だから、デザートまで頂いて帰るわね」

「ああ」

 もう連絡が来る事もないな。伝票を持って席を立つ。

「じゃあ、失礼する。ゆっくりして行ってくれ」

 麻耶はちらと手を振り、ワインを口にした。


 ……俺はタクシーの手配をして、駐車場に向かった。


***社長室~屋上


 ……これで、終わりか。後は、明日、美月に頼めばいい。


 背を伸ばす。窓から外を見る。

 ……今日は満月、か。やたら明るいと思った。


 ……ちり……ん……


 何か、が鳴った音がした。辺りを見回す。何もない。


(……ん?)

 首元から銀の鎖を引っ張りだした。半分に割れた、銀色のメダルを右手で持つ。

 ……熱い? 今までこんなことはなかった。


『……大事に持っていて。……いつかまた、きっと会えるから』

 声が……聞こえた気がした。


 メダルを戻して、社長室の鍵をかける。秘書室を抜けて廊下に出た。


(……非常階段の扉が開いてる?)

 扉を閉めようと近寄った時、ふわっと風が流れた。階段を覗き込むと……屋上の方から風が入ってきている。


 誰か、屋上にいる?

 階段を上って、屋上に出る、鉄の扉をゆっくりと開けた。


「……!?」

 俺は目を見張った。

(何……!?)


 ……少し赤みを帯びた、大きな満月。


 その中に……


 ……長い髪をなびかせ、こちらに背を向けて空に浮かぶシルエット……があった。



「おねえ……ちゃ……」

 思わず声が洩れた。


 影が、こちらを向いた。


「きゃ……っ!!」

(……え!?)

 バランスを崩したように、影が落ちる。俺は咄嗟に駆け出し、両手を伸ばした。


 ……ふわっと柔らかい身体、が空から手の中に落ちて来た。


 ……薔薇、の匂い……だ……。


 目を瞑ってる、この……顔……は……。


「……大丈夫か?」

「しゃ、社長っ!?」

 瞑って目を開けて、彼女が叫んだ。


「お前……」

 言葉が出ない。確かに空を飛んでた。

(『彼女』と、関わりがある……のか……!?)


  目の前で、あたおたしている彼女。入社してから、ずっと見てきた彼女。

「……総務部の、内村 楓……」

 名前を呼ぶと、ぎくっとしたように、俺を見た。

「……なんで、空、飛んでた?」

 そう聞くと、彼女は一層落ち着きを無くしてたが、やがて俺を真っ直ぐに見た。

「あ、あの……」

 彼女の髪が風になびき、俺の手に巻き付いた。

「……!!」

 ふっと、彼女がふらついた。

「おいっ……!?」


 ――崩れ落ちるように、彼女は気を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ