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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
一ヶ月後
55/88

AM12:00 パーティー会場

「これは……!」

「こんな美味しいスープ、初めて……」

 テーブルのあちらこちらから、感嘆の声が上がった。


 食堂と玄関ホール、庭の一部を解放して作られたパーティー会場。

 お食事の一番初め、におばあちゃんのスープ。


 昨日、大きな寸胴鍋3つ分煮込んでおいた。よかった、皆に喜んでもらえて。

 私もスープを口に運ぶ。おばあちゃんの魔法が身体に染みわたる。

 ……私の右隣で食べていた和也さんが、私の方を向いた。


「……楓」

「はい」

 和也さんがスプーンをテーブルに置く。私も同じように、置いた。


 ……そして、和也さんが、言った。


***


 会場のあちらこちらで上がる、ため息のような声。

 ……相変わらず、心に沁みるような、味。


 俺は隣に座っている楓を見た。おばあちゃんのウエディングドレスに身を包んだ楓は……本当に、綺麗、だ。

 

 ……楓の最大の魔法。それは、空を飛んだり、風を操ったりすることじゃない。

 誰かを大切に想う気持ち。幸せになってほしい、と願う心。

 それが、楓の魔法、だ。


『……元々あるところに働きかける力、です。何もないところからは、何も生まれません』


 楓の心の中にある、強い想い。それに、俺も皆も……きっと風も応えているんだ、と思う。


(俺は…)


 俺に出来ることは……。


 俺は、スプーンを置き、楓の方を見た。楓も、同じようにスプーンを置いて、こちらを見た。


「……楓」

「はい」

 ……俺は、楓の左手をとり、真新しい結婚指輪、にキスしながら言った。


「お前が、そのままのお前でいられるように


 ……その魔法をずっと使えるように、


 ……俺が、お前を愛するから」


***


『お前が、そのままのお前でいられるように


 ……その魔法をずっと使えるように、


 ……俺が、お前を愛するから』


 ……そう、和也さんが言った。



「そ……の、言葉……」

 胸がいっぱいになった。涙が……ぼたり、とこぼれた。

「楓!?」

 和也さんが慌てたように、私の顔を覗き込んだ。私は、首を横に振って、涙を拭いた。

「和也さんの……言葉、が……」


「……おじいちゃんが、おばあちゃんに結婚式で誓った言葉……と、同じ、なんです……」

 和也さんの瞳が大きく見開かれた。


 私は真っ直ぐに和也さんを見て言った。

「私……祖父以上の男性に会った事がない、って言ってましたけど……」

 自然にこぼれる笑み。和也さんの驚いたような表情。


 この人を、ずっと、愛していこう。

 ……そう、心の中で誓った。



「……ちゃんと会えました。


 ……おじいちゃん以上に素敵な、男性に」

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