表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/88

PM9:20 男の子の部屋

「ごめんね、遅くなって」

 トレイにマグカップ2つ。部屋の真ん中のテーブルに置いた。


 ベッドに寝ていたあの子は、身体を起こして、足を床に下ろした。

 ……パジャマに着替えたんだ。バスローブがベッドの足もとに、ちゃんと畳んで置いてあった。


「……はい。魔法のスープよ」

 湯気の立つマグカップを、彼に渡す。私もマグカップを片手に、彼の隣に腰を下ろした。

「……いただきます」

 私がお辞儀すると、彼も頭を下げた。

 一口、マグカップに口をつけた男の子は、驚いたように目を見張った。

「……おいしいでしょう?」

 私も、こくん、とスープを飲む。身体の隅々まで、月の光で満たされるのが、分かる。

「どんなに元気がない時でも、これを飲むと元気になるの。月の魔力が入ってるのよ」


 スープをかき混ぜながら、魔法の呪文を唱えた。お鍋から、湯気と共に魔法がキッチンに広がった。

 ……少しは、温かくなったかな、あのキッチン。


 黙ってスープを二人で飲んだ。

 おばあちゃんのスープ、効果絶大……。

 あんなに弱っていた力が、ゆっくりだけど回復してる。新月なのに。


「……ごちそうさまでした」

 マグカップをテーブルに戻す。

 ふと……隣を見ると、男の子が半分ぐらいスープを飲んで、じっと固まっていた。

「……どうしたの?」

 声をかける。

 ぽたり……彼のマグカップを持った手に、何か、が落ちた。


 ……涙?


 そっと、彼の手からマグカップを受け取り、テーブルに置いた。彼は、じっとしたまま、だった。

 ……私は男の子の傍に行き、ぎゅっと抱きしめた。

「……悲しかったら、泣いてもいいのよ?」

 ぴくり、と肩が動いた。

「我慢、してたんでしょ?」

「……」

「大丈夫……。だから、自分の気持ちを隠さないで」


「……っ!」

 男の子がいきなり、私に抱きついてきた。

 ……声にならない、嗚咽が漏れる。震える小さな肩。身体に合わないぐらい、強い力。

 そっと頬ずりする。涙の感触がした。

「……大丈夫よ。あなたは、私が守るから」

「……」


 心に溜まっていたものを、全部出すように、そのまま彼は泣き続けた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ