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PM8:30 男の子の部屋
……ベッドに机。作り付けのタンス。きちんと整頓された、部屋。
子供部屋……というより、客室、よね……。
(何だか、和也さんのマンションみたい……)
……冷たい。温かい思いが、まるで感じられない。この子、こんなところで、暮らしてるの……?
ベッドに男の子を座らせる。不安そうな目で、私を見上げた。
「……台所に一緒に行く?」
……男の子は首を横に振った。
この子、何か、に怯えてる……?
(……そうだ)
私は、首の後ろに手を回し、銀の鎖を外した。
「これ、貸してあげるね」
彼の首に、鎖をかける。その先には……おばあちゃんの、メダル。
「……」
「……これはね、私がおばあちゃんからもらった、大事なメダルなの」
「……」
小さな手が、メダルを握る。
「このメダルが、あなたを守ってくれるから。だから、待っててくれる?」
少し考えた後、彼はこくん、と頷いた。
「じゃあ、美味しいもの、作って来るね」
私は微笑んで手を振り、部屋を出た。




