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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
次の日
19/88

PM11:15 それぞれの部屋

 窓から洩れる月明かりに、水晶の薔薇をかざす。花びらの一つ一つに、月の魔力が宿る。


 綺麗……。


 枕元に水晶の薔薇を置く。ベッドにもぐりこんで、今日の出来事を思い返した。


 和也さん……武田様と何か、あったのかなあ……。

あの方の悪意、は本物だった。それに……私を見て、とても怯えて……。


 上掛けを引っ張り上げる。


 ……よく……わからないけど……。


 いじわるでドSで我がままな人、だけど。


 ……和也さんを、守ってあげたい。


 その気持ちは、本物だった。


 だから……自分に出来る限り……頑張ろう……


 ――私はゆっくりと、夢の中へと入って行った……。


***


 ……武田の叔父に会うと、いつも眠れなくなる。『あの時』の悪夢、に襲われるから。


 ……のはず、なんだが……。


(別の意味で、眠れなくなりそうだ……)

 俺はベッドに寝転がって、天井を見ていた。


 本当にうれしそうに、笑った。……初めて見た、楓の本当の笑顔。


 ……正直、ここまで胸にくる、とは思わなかった。

それに比べたら、叔父のあの目つきなど、どうでも良くなった。


『物静かで、優しくて、博学で、芯が強くて……』

 それが、楓の理想の男性。

 ……もういない、しかも祖父、に嫉妬してどうする。敵うわけないだろうが。

 俺は自嘲気味に笑い、目を瞑った。

 

 ……叔父が来た時、真っ先に心に浮かんだのが、楓だった。楓を呼んでほしい、と伶子に頼んだ。伶子は何も聞かずに、そうしてくれた。

楓は……ただ、そこにいてくれた。

それだけで……


『悪意を祓いました』

 叔父の悪意は、今に始まった事じゃない。そう……『あの時』も。

(楓を見た時の……あいつの、顔)

 思わず、歯をくいしばった。


 やはり……『あの時』、『彼女』を……


 ……殺そうと、していたのか。俺と共に。


 ふっと、薔薇の香りが漂ってきた。過去に捕らわそうになった心が、戻って来る。

 悪夢が……消えて行く……。


 この家にいて……よかった。

家とも呼べなかった、あの部屋だったなら、いつまでたっても、過去に捕らわれたまま。


 ……楓……

 楓の笑顔を思い出すと、……胸が温かくなった。


 ……喜んでくれて、よかった……本当、に……


 ……次第に、俺の意識はぼんやりと薄れていった……。

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