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Fly*Flying*MoonLight  作者: あかし瑞穂
次の日
17/88

PM7:00 私の部屋

「……というわけなんだけど、おばあちゃん」

『そう……ねえ……』

 水晶玉に映るおばあちゃんの顔は、前より若々しくなっていた。


 ……おばあちゃんが使っていた、直径二十cmあまりもある、大きな水晶玉。

おばあちゃんは、これで未来とか覗いていたけれど、今はもっぱらテレビ電話扱い、となっていた。


「……おばあちゃん、また若返ってない?」

 ほほほ、とおばあちゃんが笑う。

『あの人が天に召されるのと同時に、一緒に年を重ねる魔法が解けたからねえ……そのうち止まるわよ』

 うーん……。

「私と同い年とかにならないよね?」

『それはないわよ。多分、あなたの母親が生きていたら、ぐらいになると思うけれど』

 ……おばあちゃんは、若い頃、とある王様にプロポーズされた、という絶世の美女、だったらしい。今でも綺麗だもの。

 その、おばあちゃんの美貌の血は、私のどこに流れてるんだろ……不思議だ……。


『その、社長さん……和也さん、だったかしら。館に受け入れられたって言ってたわよね?』

「うん……迷ってないし」

(ここ、不用意に足を踏み入れると、迷路みたいに感じるのよね……)

 おばあちゃんはうーん、と考え込んだ。

『まあ……心当たりがないわけじゃ、ないのだけれど……』

「え?」

 おばあちゃんは、じーっと水晶越しに私を見た。

『……楓。あなた、和也さんをあの人の部屋に泊めたって言ったわよね?』

「うん。男の人が寝られる部屋って、あそこしかないでしょ?」

『……』

 ……あ、もしかして。

「泊めちゃ、いけなかった? おじいちゃんの部屋、だから……」

 おばあちゃんは、首を横に振った。

『そういう事じゃないのよ。まあ、従属してしまったのなら、仕方ないけれど……』

『……抵抗、なかったの? 和也さんを泊めることに』

「あったわよ? だけど……」

 ――高級な牢獄みたいな、冷たい部屋。あの部屋を……見たら。


「……あの部屋で、一人にさせたくないって思ったの」

『……』

「変よね? いい大人で、仕事できて、強引で……でも」

『……』

「なんだか……小さな男の子みたいに感じる時があるの。そうなると、ほうっておけなくて……」

『……』

 まあねえ、とおばあちゃんがため息をついた。

『あなたの魔力の特性ね。その人の本性が透けて見えるっていう』

「……そう……かな?」

『おまけに感応能力も高いから、多分和也さんの本当の望み、を無意識に読み取ってるのね』

 ……本当の、望み。和也さんの。

『あなたがそうなってしまったのは、私の責任でもあるのよ……』

「おばあちゃん?」

『私はずっと魔女として生きて来たでしょう? だから、魔法の扱い方や魔女としての心得は、あなたに伝える事ができたと思っているのだけれど』

「うん……?」

『……でも、人間としての心得は、教え損ねてしまったのかも、知れないわねえ……』

「……それって、私、人間としてはイマイチってこと??」

『未熟ってことよ。特に女性としてはね』

 じょ、女性として未熟って……。

「おばあちゃん、私もう二十二歳なんだけど……それで未熟って……」

『まあ、気をつけなさい。その館の中では安全だけど』

「うん……一応、暗い道は一人で歩かない、とか犯罪に巻き込まれないように、気をつけてるのよ?」

『あなたがそういう意味で気を付けないといけないのは、見知らぬ人じゃないと思うわよ?』

「そう……?」

『そろそろ切るわね。魔力の流れ(レイライン)の向きが変わるわ』

「うん、ありがとう、おばあちゃん」

『落ち着いたら、こちらにもいらっしゃい。そう……和也さんも一緒にね』

「和也さんが魔女の村(そっち)に行けるわけないじゃない。だって、普通の人間よ?」

 ふふふっとおばあちゃんが笑う。

『普通の人間でも、ある条件を満たせばここに来られるわよ? 多分、彼はその資格を持ってると思うわ』

「……そう……なの?」

 おばあちゃんの未来予知かなあ……。

 じゃあね、とおばあちゃんの影が揺れた。水晶玉から光が消える。


 ……ふう。おばあちゃんと話して、ちょっと落ち着いた……かな。


 今日、和也さんは打ち合わせや会議やらで外出したまま、だったから、先に帰ってきたけど。


 ……どうして、『守る』って言ったのか、自分でもよくわからない。


 でも、守りたいって思った。たった一人で悪意と闘ってる気がしたから。守られるべき時に、守られていなかった……そう、思ったから。

(顔合わすの、ちょっと恥ずかしい……かも……)

 ど、どんな顔すればいいのか、今更ながらわからなくなって……きた。心臓が……少し早くなってる。


 夕ご飯も一応作ってあるけど、食べるかどうかも分からない、よね……会食とかあったら……。

(……でも……)

 あれだけは、食べてもらおう。


 ……元気になって、ほしいから。

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