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299.【絶縁の精鋭と水の盾】

 シーバブルの入り口、膝元まで浸かった海水にアリスが両手をかざした。琥珀色の砂を巻き上げる海風が、彼女の指先に集まる魔力でパチパチと音を立てる。

「みんな、ちょっとだけ痺れてもらうッスよ! 天を裂く青白き霹靂よ、我が手に集いて不滅の尖塔となれ。貫け、『ライトニングスピアー』!」

 アリスが放った鮮烈な雷撃が、導体である海水を通じて街の通りを一気に駆け抜けた。水面に這う紫白色の火花が暴徒たちの足元を焼き、唸り声を上げていた住民たちが次々と糸の切れた人形のように泥水の中へ崩れ落ちていく。

「よし、道は開いた。一気に抜けるぞ!」

 イーグルが合図を出し、水飛沫を上げて駆け出そうとしたその瞬間――。

 ――バシャァァンッ!!

 目前の水面が爆ぜるように盛り上がり、三体の人魚が躍り出た。しかし、先ほどの個体とは明らかに雰囲気が違う。その身には、鈍い銀色に光る「魔導の鱗」が隙間なく纏われていた。

「なっ……!? 感電してないッス!?」

 アリスが驚愕の声を上げる。雷の余波が残る水中に着地しながらも、その人魚たちは平然とした顔で三叉矛トライデントを構えた。

「無駄だ、地上の者よ。我ら女王親衛隊の鱗は、あらゆる魔法の伝導を遮断する『絶縁の鎧』。貴様らの小細工など、この海には通じぬ」

 人魚の精鋭が冷酷に言い放つ。彼らが動くたびに、鱗の表面で火花が虚しく霧散していく。電撃作戦を予測していたかのような、完璧なカウンターだった。

「……絶縁体か。フェネカの言ってた通り、効率を求めると必ず穴が出るもんだな」

 イーグルはリボルバーを抜き放ち、撃鉄を起こした。強化鋼弾の装填は完了している。雷が効かないのであれば、残された手段は「物理的な破壊」のみ。

「アリス、魔法はやめろ。こいつらは皮の硬い魚だと思え。捌き方は教えたはずだぞ」

「了解ッス……! 刺身にしてやるッス!」

 アリスはナイフを逆手に持ち替え、腰を落とした。

 背後には未だ痺れて動けない住民たち。前方には魔法を無効化する水の精鋭。

 袋小路の街で、雨のように降り注ぐ水弾と銃声が交錯しようとしていた。

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