21.謎の地図
アリエルは名前を聞いた直後、電話を掛け始めた。
イーグルはミアがボロボロの紙切れを持っている事に気づいた。
「……、その紙切れは?」
ミアがイーグルに見せた紙切れには、手書きの地図が描かれていた。それは、この街ブラックボックスの地図であり、特定の場所が奇妙なシンボルで示されていた。
「…これは…?」
イーグルは地図をじっと見つめた。
「宝の地図……。スラムのおじさんにもらった。
ここのBARなら食べ物をくれるって言ってた。」
ミアが地図をイーグルに手渡す。
そうしているうちに、アリエルは電話を終えた。
「ローズがこれからBARにくる。ミアはローズに預かってもらう。お嬢さんもそれでいいかい?」
ミアは頷く。
ローズがBARの扉を開けたとき、その場の冷たい空気は一瞬で変わった。
彼女は街の喧騒とは無縁な洗練されたスーツに身を包み、鋭い眼光を放っていた。
その手には上質な革のブリーフケースが握られている。
「こんばんは、アリエル。電話、ありがとう。」
ローズの冷ややかな視線が、イーグルとその横に座るミアに向けられる。
アリエルはグラスを磨く手を止めず、軽く会釈した。
「ローズ、悪いな。急で。」
「構わないわ。まさか、あなたが子供を助けるなんてね。明日は雪でも降るんじゃないかしら。」
ローズの皮肉に、アリエルは鼻で笑う。
「ふん……、俺はただ飯を食わせただけだ。
それより、コイツを頼む。今は、安全な場所にいてほしい。」
アリエルはミアを指差した。ローズは無言でミアに近づき、しゃがみ込む。
「ミアちゃん、ね。私のことはローズと呼んで。一緒に、安全なところに行きましょう。」
彼女の冷たい口調とは裏腹に、その瞳はほんの少しだけ優しさを宿していた。
ミアは不安そうにアリエルとイーグルを見つめる。
イーグルは地図をポケットにしまい、ミアに静かに語りかけた。
「心配ない。ローズは、この街で一番頼りになる女だ。大丈夫だ。」
ミアはゆっくりと頷くと、ローズの手を握った。
ローズは立ち上がり、アリエルに視線を戻す。
「アリエル、この子を助けた理由、聞いてもいい?」
アリエルは、タバコの煙をゆっくりと天井に吐き出した。
「…この街にいる人間は、誰も彼も汚れてる。俺も、アンタも、そこのイーグルも、な。だが、こいつは違う。だから、助けたいと思った…それだけだ。」
ローズは、アリエルの言葉に何も言わず、静かに微笑んだ。
「そう。それじゃあ、この子を預かるわ。後で、今日の分の請求書を送っておくわね。」
ローズはミアの手を引くと、BARの扉を開け、夜の街へと消えていった。
「……ったく、しっかりビジネスしやがって。」
アリエルはクックッと笑うと、溜息をついた。




