20.闇の中の光
その時、BARの扉が静かに開いた。
「いらっしゃい。」
アリエルがぶっきらぼうに言うと、扉を開けたのは
1人の薄汚い少女だった。
「残り物でもいいので、何か食べさせてもらえませんか?」
アリエルは少女の言葉に眉をひそめた。
このBARは飯屋ではない。
ましてや、残飯を恵むような場所でもない。イーグルもまた、驚きを隠せない様子で少女を見つめている。
「…ここは BAR だ。飯屋じゃない。」
アリエルはぶっきらぼうに答える。少女はアリエルの言葉に怯えることなく、ただ静かに言った。
「知っています。でも、この BAR のマスターは、この街で一番優しい人だと聞いたので。」
アリエルは、その言葉に何も言わず、ただ少女の顔をじっと見つめる。
イーグルはグラスをカウンターに置き、少女に話しかけた。
「お嬢ちゃん、こんな時間に、こんな場所で何をしてる?親はいないのか?」
少女はイーグルの言葉に首を横に振った。
「…両親は、私が家にいると殴るので…。」
アリエルは少女の言葉を聞き、わずかに顔をしかめた。この街の闇は子供にまで牙を向く。
そんな現実に、アリエルは言葉を失った。イーグルもまた、グラスを握りしめたまま、何も言わない。
「まったく……、この街は。」
イーグルは、深い溜息をついた。その溜息には、この街の闇に対する絶望と、怒りが込められていた。
「その男の横に座れ……。」
アリエルは少女にそう言うと奥の部屋に消えていった。
暫くするとアリエルが両手に皿を持って、少女の前に置いた。
「……、当店自慢のフルコースだ。しっかり食えよ。」
アリエルが差し出したのは、決してフルコースとは言えない、シンプルな料理だった。
温かいスープと、焼きたてのパン、そして小さな肉団子が皿に盛られている。それでも、それは少女にとっては、この街で見たこともないご馳走だった。少女は目を輝かせ、震える手でスプーンを握り、スープを口に運んだ。
「…おいしい。」
少女はそう呟くと、涙を流しながら一心不乱に料理を食べ始めた。イーグルはそんな少女の姿を静かに見つめ、何も言わない。アリエルもまた、グラスを磨きながら、少女から目を離さなかった。
少女が食事を終え、ほっと一息ついたとき、アリエルが尋ねた。
「お嬢さん、両親はどこに?」
少女は首を横に振った。
「知りません。いつも殴られていたので、逃げてきたんです。」
少女の言葉に、アリエルとイーグルは顔を見合わせた。
「お嬢さん、お名前は?」
イーグルが優しく話しかけると、少女は答える。
「ミア……。」




