1.BAR【プラチナ】の夜
欲望と金が渦巻く街、ブラックボックス。
警報が鳴り響き、装甲車のサイレンが夜のスラム街を切り裂いていた。
「見つけたら即通報しろ!奴は危険人物だ!」
軍人の怒号が遠くから響く。
暗い路地裏を、一人の男が息を殺して歩いていた。
銀と白の中間のような長髪。鋭い眼光。軍用コートの裾は泥に汚れている。
男の名は――
イーグル・メタルバレット。
かつては国の為に銃を取り、街を蝕むテロリストと戦っていた軍人だった。
だが今、追われているのは――彼の方だった。
理由は一つ。
戦友の裏切り。
数時間前。
同じ部隊の伍長が、蒼白な顔で彼に告げた。
「軍曹……逃げろ」
「キラー曹長が、お前をレジスタンスと決めつけている」
「今夜、真夜中に処刑するつもりだ」
イーグルはその言葉を信じられなかった。
だが、軍の動きは異様だった。
通信は遮断され、監視が増え、そしてついに追跡部隊が動いた。
罠だ。
そう直感したイーグルは街を脱出し、スラム街へと身を隠した。
悪臭と喧騒に満ちた貧民街。
ブラックボックスの中心部とはまるで別世界だ。
そして、そのスラムの片隅で――
彼は一軒の店を見つけた。
錆びたネオン看板。
BAR【プラチナ】
場違いなほど静かな店だった。
イーグルは周囲を警戒しながら、ゆっくりと扉を押し開ける。
チリン――
ドアベルの音が静かな店内に響いた。
そこには、スラム街とは思えないほど清潔な空間が広がっていた。
そしてカウンターの奥で、男がグラスを磨いている。
坊主頭に眼帯。
がっしりとした体格。
その男は、入ってきたイーグルを一瞬だけ鋭く見た。
そして、低い声で言った。
「いらっしゃい」
イーグルは店内を一瞥し、カウンター席に腰を下ろす。
逃げ場のない夜だった。
だが今は――
一杯の酒が欲しかった。




