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冒険者の万華鏡  作者: 佐々木尽左
第35章 冒険者と貴族

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貴族らしい魔物狩り

 依頼人もようやく3人目の番となる。ユウとトリスタンは三の刻頃に町の南門の外側に向かった。検問所の様子を見ながら跳ね橋近くの原っぱで待っていると、門の奥から数日前に会った人物が現われる。イーモンとその従者ゴードンだ。


 貴族家の次男であるイーモンは質の良い剣と鎧を身につけている。また、従者であるゴードンも主人が恥ずかしくないと思える程度の武具を装備していた。


 これぞ貴族という装備の2人をユウは出迎える。


「おはようございます、イーモン様」


「出迎えご苦労。それでは森に案内せよ」


 ユウの挨拶に答えたのは従者のゴードンだった。下々の者とはなるべく言葉を交わさないという態度はある意味貴族らしい。


 合流した4人はユウの先導で解体場近くにやって来た。強烈な悪臭にイーモンとゴードンが顔をしかめる。


「貴様、なぜ森に行かんのだ?」


「僕たちはまだお2人の力量を存じ上げませんので、ここで1度模擬試合をさせてください。試すようで失礼ですが、お2人のことをある程度把握して正しく先導したいのです」


 渋る2人だったが、森で何かあるのはさすがに困るのだろう、最終的には模擬試合を受け入れた。気が変わらないうちにとユウは木製の武器を取りに行ってすぐに試合を始める。


 その結果、従者のゴードンはまだしも、主人のイーモンには問題があった。はっきり言って弱かったのである。


「イーモン様、従者殿、ありがとうございます。それでひとつ、懸念点があるのです」


「なんだ、申してみよ」


「ゴードン殿は問題ありませんが、イーモン様の腕前で森に入るのは危険です。このままですと、魔物と戦ったときにどうなるかわかりません」


「そのためにお前たちがいるのだろう」


「確かにそうですが、このままですと戦うのは危険だと申し上げているのです」


「その点は心配しなくとも良い。お前たちは森の中に案内し、魔物を誘導すれば良い」


 相変わらず無言のイーモンの代わりにしゃべるゴードンの言い分がユウには良くわからなかった。しかし、トリスタンには理解できたようで、とりあえず出発しようと促される。


 よくわからないままユウは依頼主の主従2人を先導する形で夜明けの森へと向かった。そして、町から離れて草原を歩いている途中でトリスタンに小声で話しかけられる。


「ユウ、イーモン様は最後にとどめを刺すだけだから気にしなくてもいいと、ゴードン殿は言っているんだ」


「とどめを刺すだけ? 戦うんじゃなくて?」


「そうだ。今回の依頼者の目的を思い出せ。戦うこと自体はどうでもいいんだ」


 初めて会った時のことをユウは思い返した。あのとき、イーモンはみんながやるから自分もやらないと馬鹿にされるからと言っていたはずだ。それで納得する。夜明けの森に入って魔物を倒したという形がほしいというわけだ。


 今までの依頼者とまったく異なる結果の求め方に若干戸惑ったユウだったが、それならそれでやり方はある。ようやくどうするべきか理解できた。


 森の際で虫除けの水薬を塗るか塗らないかで一悶着あった後、4人はようやく森の奥へと進む。イーモンは不機嫌になっていたが、羽虫にたかられることと天秤にかけて我慢してもらうしかない。


 戦う準備ができると4人は一塊(ひとかたまり)になって動いた。その状態で森の奥に進む。すると、犬鬼(コボルト)が2匹やって来た。


 そこでゴードンが叫ぶ。


「1匹は私が相手をする。もう1匹はお前らが倒せ!」


 指示を出されたユウとトリスタンは一瞬驚いたが命令通りに動いた。犬鬼(コボルト)との距離を一気に詰めたトリスタンがあっさりと倒す。


 一方、ゴードンは犬鬼(コボルト)相手に危なげなく戦い傷付けていた。何度か攻撃して弱らせて動けなくするとイーモンへと声をかける。


「イーモン様、とどめを」


「うん」


 当然のように前へと出てきたイーモンは手にした剣で犬鬼(コボルト)を何度か突き刺した。やがて動かなくなる。


 相棒の言う通りに依頼者2人が行動したことにユウは半ば呆然とした。本当に戦うことはどうでも良いらしい。


 魔物の討伐証明部位をそぎ取して袋に入れたユウはトリスタンと共に次の場所へと移るために歩き始めた。


 以後は同じことの繰り返しだ。ユウが体質を利用して魔物を誘因し、ゴードンが戦った後にイーモンがとどめを刺す。


 これで魔物狩りをしていると言えるのかユウには疑問だった。しかし、トリスタンによると貴族としてはやっている範疇に入ると言われたのでうなずくしかない。


 ともかく、この調子でイーモンとゴードンの主従2人は夜明けの森で魔物狩りをする。それは翌日も変わらなかった。




 いよいよ最後の依頼者を迎えることになった。ユウとトリスタンは三の刻頃に町の南門の外側でその主人と従者と会う。フランクリンと従者ホレイショーだ。


 貴族家の三男であるフランクリンは質の良い剣と鎧を身につけている。また、従者であるホレイショーも主人が恥をかかない程度の武具を装備していた。


 この辺りは前回の依頼者と変わらないなと思いつつもユウは2人を出迎える。


「おはようございます、フランクリン様」


「出迎えご苦労。森に案内せよ」


 ユウの挨拶に答えたのは従者のホレイショーだった。やり取りはイーモンと同じやり方のようだ。


 合流した4人はユウの先導で解体場近くにやって来た。強烈な悪臭にフランクリンとホレイショーが顔をしかめる。


「貴様、なぜ解体場に寄るのだ?」


「僕たちはまだお2人の力量を存じ上げませんので、ここで1度模擬試合をさせてください。試すようで失礼ですが、お2人のことをある程度把握して正しく先導したいのです」


 渋る2人だったが、森で何かあるのはさすがに困るのだろう、最終的には模擬試合を受け入れた。気が変わらないうちにとユウは木製の武器を取りに行ってすぐに試合を始める。


 その結果、従者のホレイショーはまだしも、主人のフランクリンには問題があった。はっきり言って戦いに向いていないのである。


「フランクリン様、従者殿、ありがとうございます。それでひとつ、懸念点があるのです」


「なんだ、申してみよ」


「ホレイショー殿は問題ありませんが、フランクリン様の腕前で森に入るのは危険です。このままですと、魔物と戦ったときにどうなるかわかりません」


「なんだと! オレだってやれる! 他の連中も森に入ったんだから、オレにも案内しろ!」


 てっきり従者のホレイショーが対応するとばかり思っていたユウとトリスタンはフランクリンが口を挟んできたことに驚いた。自分だけ町に帰されるのは我慢できないらしい。


 前回の依頼者とはまた違う意味でやりにくそうだと感じたユウだが、仕方なく出発した。


 町から離れて草原を歩き、その後に夜明けの森の際へとたどり着く。


 森の際で虫除けの水薬を塗るか塗らないかで一悶着あった後、4人はようやく森の奥へと進む。フランクリンは不機嫌になっていたが、羽虫にたかられるよりはましだと思って我慢してもらうしかない。


 戦う準備ができると4人は一塊(ひとかたまり)になって動いた。その状態で森の奥に進む。すると、小鬼(ゴブリン)が2匹やって来た。


 そこでホレイショーが叫ぶ。


「1匹は私が相手をする。もう1匹はお前らが倒せ!」


 指示を出されたユウとトリスタンは一瞬驚いたが命令通りに動いた。小鬼(ゴブリン)との距離を一気に詰めたトリスタンがあっさりと倒す。


 一方、残った小鬼(ゴブリン)の相手をしたのはフランクリンだった。従者のホレイショーではないことにユウは目を見開く。あの模擬試合の結果では少なくとも怪我をしてしまう可能性が高い。すぐ近くにホレイショーが槍を構えていつでも割っては入れるよう待機していた。


 そんな状況でフランクリンが声を上げて小鬼(ゴブリン)と戦い始める。


「やってやる! オレだって強いんだ! うぉああああああ!」


 不格好な構えから突っ込んでくる小鬼(ゴブリン)にフランクリンが真正面から突っ込んだ。そうして両者ともに自分の武器を振り回す。その戦いぶりは子供の喧嘩に近い。


 それでも、持っている武器は本物で殺傷能力がある。体に当たれば当然痛い。生身の体である小鬼(ゴブリン)は体中が傷だらけ、痣だらけとなってゆく。一方、フランクリンは防具で身を守っているので体に傷を受けてはいないが、気力を削られて徐々に押されていた。


 結局、最後はホレイショーの手助けを受けてフランクリンは小鬼(ゴブリン)を倒す。それを見ていたユウとトリスタンは敢闘精神こそ賞賛するものの、以後の魔物誘導をどうするべきかで頭を抱えた。


 その日1日かけて夜明けの森を巡った4人だったが、ユウとトリスタンは今までで最も困難な護衛及び補佐を強いられる。町に帰ったときはホレイショー共々疲れ果てていた。


 翌日も戦いの調子は変わらず、フランクリンは魔物に怯えつつも戦う。2人はお付きの従者共々最後までそれに振り回され続けた。

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― 新着の感想 ―
フランクリン様、今回貴族家の次男と書かれてますが初登場時は三男と紹介されてました、どちらでしょうか? 能力的には、やる気はあるけど長男次男ほどの教育を受けられなかった感がするので三男でしょう? で…
ゴードンとホレイショーだったら、ゴードンの方が仕事としてはやりやすそうですねえ。 ホレイショーはめっちゃ大変そう!
3人は難なくいったけど最後の奴が地雷でしたね
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