続き12
話は戻り、洞窟の中ではベア・ハンターおじいさんが熾した焚火をそのまま利用してヒデミさんとルークが鮭の丸焼きにチャレンジしていた。
ヒデミさん「なんか、火が消えかかってませんか?」
ルーク「やっぱ、焚火の上にドンってそのまま置いちゃったのがまずかったかな~?」
二人は何とか火を熾しなおそうと鮭の下の炭をほじった。
ヒデミさん「いったん鮭をどかしましょうか?」
消えかかった焚火の上で鮭は口から泡を噴いていた。
ルーク「うぅーん、棒でぶっ刺して立ててみるか・・。」
そこから少し奥に入ったところでは、アデルとシゲルが毛皮の山から毛皮を1枚ずつ引っ張り出して大きさと枚数を確認していた。
シゲル「これ、茶色いやつ、何の毛皮かわからないけど結構たくさんあるね。」
アデル「カモシカかも。」
シゲル「鹿、かも?」
アデル「ん?カモシカ~。」
シゲルは少しイラっとした。
シゲル「鹿だよね?」
アデル「カモシカ。」
シゲル「アデル姉さん、JK風に言わずに普通に鹿って言ってよ。」
アデル「だから、カ・モ・シ・カ。」
シゲル「・・・・・。」
そんな二人のやり取りをチラッと見て気がついたルークが
ルーク「兄貴、カモシカ知らないの?鹿の種類の名前だよ。」
と、教えてくれた。すると
シゲル「え?何?知ってるよ?お前何言っちゃってんの?うん、これはいい毛皮だな。」
と、知らなかったことが見え見えであるにも関わらず、誤魔化した。
二人で五枚くらい引っ張ったところで、奥の方に黒い毛皮が出てきた。
シゲル「ん?こいつは熊の毛皮かな~?」
そう言ってシゲルが引っ張ると
熊「ガゥワウ!」
と、いきなり生きた熊が出てきた。驚いた四人は生命の危機を感じて悲鳴を上げた。
4人「きゃーーーー!!」
その時だ。4人と熊の間に勇者の如く野獣豚が立ちはだかった!野獣豚と熊はにらみ合いの末、交渉が成立したのか熊はまたそのまま眠りについた。野獣豚はアデルたちに結果の報告をした。
野獣豚と熊のやり取りは以下の通りである。
野獣豚「グルルルル(森の神々に無礼を働くでない!)」
熊「ブ、ゴォ・・ゴゴゴゴグぅ(え?森の神?あんたバカ言いなさんな。ここに住んでいるのはあたしと、奥さんに家を追い出されて行くところが無い人間の爺さんと犬だけだよ。)」
少し寝ぼけた様子で熊は答えた。
野獣豚「ググゥ(あのベア・ハンターのことか?)」
熊「ガフ(そうだよ。)」
野獣豚「グォグォ(それなら先ほど大きな熊を追って出て行ったぞ。)」
熊「グぅ・・ガグォゴゴゴゴ・・グォッグォ(何だいあの男、まだ冬眠してないのかい?まあったく・・起きてる間奴らは年がら年中追いかけっこしているから、放っておけばいいさ。無視、無視。そんなことよりあたしゃお腹がいっぱいで眠いんだから春が来るまで起こさないでおくれ。)」
野獣豚「グルルグォ(そうかい。ところであんたの彼氏、村人100人以上食らったって本当かい?)」
熊「ガゥ、ガゥガウゴゥゴゥ(あんた、また、何冗談言ってんのさ。あの男は図体はでかいけど気は小さくて臆病だから、そんなこと出来ようはずがないさ。人間の村では野菜と柿しか食べてないよ。人間の作る野菜は美味しいから食べたいだけバクバク食べてあんなに太っちまったんだ。本当にみっともないよ。)」
野獣豚「グォグゴッブフゥ(そうかい。彼氏には山から出ないようにと言っておくのだな。ところでそこにある毛皮、貰ってもいいかい?)」
熊「ゴぅッ(好きなだけ持っていきなよ。)」
そういうことで、
ルーク「へえ~ここはそこの熊とベア・ハンターおじいさん達の家だったんだ。」
と、ルークはほっといてくれと言わんばかりにこちらにお尻を向けて寝ている熊を見て言った。
アデル「そっか。・・・では別の場所を探して移動しましょうか。ベア・ハンターおじいさん達すぐに帰ってきそうだし。」
アデルはこのままここにいると、ベア・ハンターおじいさんの武勇伝という厄介な長話に付き合わされる可能性が高いと推測し、別の場所を探そうと思った。
ヒデミさん「アデルさん、ごはん、ベア・ハンターおじいさんたちの分残しておきますか?」
アデル「そうですね。残しましょう。」
さすがに全部もらっていくのは申し訳ない、とヒデミさんとアデルは思った。
そしてここに先住民がいるとわかった四人と三匹は食後、洞窟を去ることにした。
四人と三匹が洞窟の外に出てみると景色は一変していた。
シゲル「なんか雪酷くなってない?」
彼らが巣穴で作業をしている間に雪は本降りになっていた。四人は早速、熊に分けてもらった毛皮を頭から被り身を包む様にして歩いた。
ヒデミさん「アデルさん、毛皮って防寒力凄いですね。全然寒さを感じないです。」
アデル「うん、重たいけど暖かいですね。」
ルーク「これ貰ってホントよかったよ~。」
すると、突然
シゲル「あ!」
先頭を歩いていたシゲルが大きな声を上げた。
シゲルが見ている方向を三人も目を凝らして見た。そこには小さな山小屋のようなものが見えた。
四人「山小屋だ!」
四人と三匹は山小屋へと急いだ。山小屋の前につくと意外に大きくてしっかりした造りであった。丸太で出来たその山小屋には人の気配はなくルークが扉に手をかけると鍵が開いていた。
ルーク「あれ、鍵空いてんじゃん。」
アデル「ほんとだ。」
ヒデミさん「もしかしてなのですけど・・・ここは登山客用に開放されているロッジでは?」
アデルとシゲルとルークは、それなっ!ラッキー!という感じで納得すると
外のテラスに馬を繋ぎ、早速四人と二匹で中へ入った。
山小屋の中は16畳くらいの広さで暖炉と薪があった。そして長方形の食卓用テーブルが1脚と椅子が2脚あった。アデルは早速暖炉に火をつけた。その間ルークとシゲルが馬から荷物を下ろして中へ運んだ。アデルはリュックの中からロウソクを取り出して火を灯すとランタンに入れテーブルの上に置いた。ヒデミさんは暖炉の横に積まれている薪を暖炉の中に火の大きさを見ながら入れた。
四人が暖炉の前ですっかりくつろいでいると、外にはアデルたちに気が付かれないように気配を消し、玄関ドアの隙間から中の様子を静かに覗く黒い人影があった。
そして黒い人影は確認が済むとドアを開けた。
ギィイイ・・。
突然ドアの開く音がしたので4人はそちらを見た。すると扉の横には眉毛ともみあげが異様に太くそして目だけが異様に細い、ピチピチの黒いトレーニングスーツ姿のザ・筋肉おじさんが、仁王立ちしていた。
おじさんは中に入り扉を静かに閉めると四人と二匹を気にするでもなくテーブルまで進み、椅子に座ると両腕を前に組んだ。
その姿に4人はざわついた。
ルーク「ちょっと、知らないおじさんが入ってきちゃったけどいいのかな、俺たちここにいて。」
アデル「山小屋って通常はみんなで使うもののはずだから大丈夫じゃない?」
ヒデミさん「でもなんか、気まずい感じがしませんか?おじさん、着ているお洋服が変ですし。」
ルークとシゲル「それなっ!」
彼らは自分たちのことは棚に上げてそう言った。
と、ひそひそと話すアデルたちの会話を聞いていたザ・筋肉おじさんが
ザ・筋肉おじさん「ここは私のプライベートトレーニング用の小屋だ。明日には出ていけ。」
と言った。
アデル「えっ?あ、はい。すみません、ありがとうございます。」
どうやら私物の小屋だった。
既に外は暗くこの大雪の中、別の場所に移動するのも難しかったので何ともビミョーな空気の中、やることが特にない4人は寝袋を用意して眠ることにした。寝袋を広げながらアデルが何気なくチラッとザ・筋肉おじさんを見ると、おじさんは両目をかっ開いて寝ていた!鼻からはスピースピーと寝息のような呼吸音がしていた。
アデル「ひいぃっ!」
アデルは恐怖のあまりつい声を出してしまった。その横から先に寝袋に包まったヒデミさんが小声で
ヒデミさん「アデルさん、なんかランタンの明かりが良い具合に下からおじさんの顔を強調してますよね。」
と囁いた。
アデル心の声「それなっ!」
アデルがヒデミさんの方を見ると更にその横から寝袋に包まったルークが小声で
ルーク「ねえねえあれ、超ヤバイよね、何んで目がガン開きなの?怖いよね、おじさん起きてるの?」
と言ってきた。そして奥の方からシゲルが小声で
シゲル「おい、ルーク、静かにしろ。失礼だ・・・・うわっ!」
と言ってきた。三人は寝袋を開いて出てくるとひそひそ話を続けた。
ルーク「ちょっと、もしかしてだけどおじさん実は宇宙人なんじゃないの?」
アデル、ヒデミさん、シゲル「宇宙人?」
シゲル「そうだな。細いはずの目があんなにかっ開いているのが不自然だよな。」
アデルはこの兄弟は突然何を言っているのやら、と思った。そんなはずはないよと言おうとしたその時ヒデミさんが
ヒデミさん「宇宙人だったら耳から飲み物を飲むのでは?」
と、危険な発言をした。
シゲル、ルーク「試してみるか。」
アデルはやはりそうなったかと思いながら止めに入った。
アデル「それはまずいよ、やったらダメでしょう。」
アデルに反対されたルークがそれを否定するようにまじめな顔で
ルーク「アデル姉さん、もしおじさんが宇宙人だったら俺たち食われてしまうかも知れないんだぜ。」
と、不安を煽るように言った。アデルはどうしてそうなる?おじさんはエイリアンか?と思いながら
アデル「やめましょう。」
と言った。が、既にシゲルが
シゲル「ルーク、これ。」
と言ってお酒を荷物から出していた。
そしてそのままルークとシゲルは音をたてないように静かに立ち上がるとおじさんの方へ忍び足で近づいた。二人はおじさんの傍に立つとルークがおじさんの頭を両手で挟んで、シゲルが立っているのとは逆の方にゆっくりと傾けた。そしてルークが頷くとシゲルが耳からお酒を少しずつ流し込んだ。すると、なんとおじさんの鼻からお酒がタラーっと出てきた。それを見たアデルとヒデミさんが
アデル、ヒデミさん「ひぇぇっ!」
気持ち悪さのあまり悲鳴を上げた。
シゲル「おいルーク、なんかおじさんの鼻から酒が出てきてんぞ。」
ルーク「えっ?まじで?どれどれ?」
ルークはそう言うとおじさんの頭を傾けたまま手を放し、おじさんの正面に回った。
ルーク「うわっ!きっも!なにこれ?ヤバイ!」
ルークは左手を口に当てて言った。
シゲル「もっと入れてみようぜ!!」
ルーク「ぎゃははいいね!!」
そんな、口で言っても聞かない二人の悪行を止めるため、アデルは素早く動きシゲルとルークの後頭部にハンター手刀チョップを食らわせると二人は白目を剥いてその場に崩れた。アデルは気絶した二人を寝袋に入れた。
その後、片付けのためおじさんの頭を元に戻すとおじさんの鼻の下と床に垂れたお酒をふき取った。
ヒデミさん「宇宙人?ではなかったようですね?」
と、ヒデミさんがアデルに聞いてきた。
アデル「人間です。」
アデルはそう言うと寝袋に入って寝た。後を追うようにヒデミさんも寝袋に入った。
翌朝、アデルたちが目を覚ますとそこにおじさんの姿はなかった。テーブルの上にはかんじきが四足置かれていた。
アデルは悪さをしたのに親切にかんじきを用意してくれたおじさんに感謝した。そしてアデルがおじさんの姿を追うかのように窓の外へ眼を向けると馬がじとーっとこちらをガン見していた。
アデル「うわっ!馬君にもご飯あげなきゃ・・。」
夜の間に降っていた雪は止んでいて窓から陽の光が差し込んでいた。朝食のあと身支度を整えると4人と3匹は山小屋を後にした。
外は辺り一面真っ白の雪景色に変わっていた。
アデル「おじさんのかんじきのおかげで雪道も歩ける。めっちゃ助かるな~。」
ヒデミさん「最初は宇宙人かと疑ってしまいましたが、以外と良い方でしたね。」
アデル「そうそう。みんな反省してね。」
シゲル「ところでおじさんどこで鍛えてるのかな?」
しばらく歩くと森から雪原に出た。そこはスキー場のような傾斜が続いていた。アデルたちのいるところから20メートルほど上の方は大きな段差になっていた。
ヒデミさん「アデルさん、あれ見て!」
ヒデミさんの指すそれは、大気中を太陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。
アデル「スノーダストだ!初めて見ました。すごく綺麗!」
ルークとシゲル「すご!めっちゃ綺麗じゃん!」
四人と三匹はいったん足を止めその光景を眺めた。
その時、パーンと空気を切り裂くような乾いた音と共に、森の木々の中から鳥が悲鳴を上げて飛び出した。銃声である。その後も連続するように4人のいる雪原の上の方から、銃撃戦のような音が響いてきた。
シゲル「なになに、どこでドンパチ始めてんの?危ないから一回木陰に・・。」
と、シゲルが言いかけた次の瞬間、雪原の上の方からスノボに乗ってリュックを背負った黒いトレーニング姿の昨日のザ・筋肉おじさんがジャンプしてアデルたちの頭の上を、雪をまき散らしながら飛び越えて行った。
四人に数多の雪のしぶきが降り掛かる。四人は頭を隠し「うわあああっ!」と叫んだ。何という災難だろうか。
叫び声など物ともせず、おじさんの後を追うように7人の銃を持った、これまた何故ここにいるのかよく分からない黒いサングラス&黒いスーツ姿?の男たちが四人と三匹の横をスノボに乗り猛スピードで雪をまき散らしながら降りて行った。
四人は自分たちにかかった雪を頭から叩いた。
そしてそれぞれが
アデル、ヒデミさん「ちょっと!なんなの?失礼しちゃうわね!!」
シゲル「おじさん追われてる?」
ルーク「そう見えたね。」
と言った。
しかし本当の悲劇はこの後だった。
ゴォォォォォーという音と共に大量の雪が四人と三匹を目掛けて降りてくるのが見えた。
4人「あれ?雪崩じゃね?」
その時だ、シゲルが素早く馬に乗せた毛皮を二枚取ってルークに投げ、そのあとすぐに馬に荷物を乗せるようにヒデミさんを抱えて投げ乗せた。
ヒデミさん「うえっ!」
アデルは野獣豚が乗れというので野獣豚の子供を抱いて乗った。すると馬と野獣豚は全力疾走で雪崩に追いつかれないように、雪原の斜面を横道にそれるように斜め右へと走りながら下降した。ルークとシゲルは毛皮をおひとり様専用のソリ代わりにして雪崩の上に乗った。
やがてヒデミさんを乗せた馬と、アデルを乗せた野獣豚は無事に雪崩を回避して横の森へ入った。ルークとシゲルはそのまま下に流されていった。
アデルは野獣豚から降りると野獣豚の子供を地面に降ろし、ヒデミさんが馬から降りるのを手伝った。ヒデミさんは目を回していて馬から降りると地べたにしゃがみこんだ。
アデル「ヒデミさん、大丈夫ですか?」
ヒデミさん「*******」
ヒデミさんの様子を見てこれはダメだと判断したアデルは、どうせ後でシゲルとルークも雪崩の終点から上がってくると思い、そこで待機することにした。だいぶ下って来たので、雪は少ししかなかった。しかし、地図の道からはだいぶ離れてしまった。




