魔人の住処続き9
その頃、アデルたちは野営の準備が終わり、鍋に入れたお湯が沸くのを待っていた。
お兄さん「ルークのやつ飲めない割にはいい酒持ってきてんな。」
お兄さんはルークの持ってきた荷物を物色していた。
ヒデミさん「お兄さんは飲んでもいい年齢ですか?」
お兄さん「俺?25だから大丈夫だし。」
25?うちの妹の二つ上か。と、アデルは思った。
ヒデミさん「25才だったら当然お付き合いされてる方とかいらっしゃるんじゃない?ルークの話ではだいぶ消息不明だったと聞きました。彼女をほったらかしにして大丈夫なんですか?」
出た出た!出ました!恋バナ!!アデルは自分にその話題が降りかからないように音もなく気配を消した。
お兄さん「俺はこう見えて人見知りが激しいんだよね~。それに家業が家業なだけに俺なんかと付き合いたいと思う女はいないと思うけど。」
アデル「ルークは絶対継ぎたくないって言ってましたね。」
ハッ!しまった!つい口を挟んでしまった!!静かに黙っておかねばヒデミさんに突っ込まれるぞ!と、アデルは思った。
お兄さん「あーー、わかる!」
ヒデミさん「ところでお兄さんのお名前は何とおっしゃるの?」
お兄さん「シゲル。」
ヒデミさん、「じゃあ、しげルンルン!にしましょう!」
お兄さんが沈黙してしまった。
ヒデミさん、本当にそう呼ぶの?と、アデルは思った。
シゲルは少し間をおいてから
シゲル「ウイスキーでいいかな?」
と言った。
アデル「いいと思います。」
ヒデミさん「氷がないからお水でわりますか?」
シゲル「俺基本ストレート派」
アデル「私もストレートで。」
ヒデミさん「お二人ともお強いんですね!」
アデル心の声「いやいや、せっかくの高いお酒を何かで薄めるなんてもったいない、だって木の箱に銘柄ががちゃんと書いてあるではないですか!」
アデルはお兄さんが手に持っているウイスキーの木箱をちゃんと見ていた。
シゲルはデキャンタ、アデルはお椀。ヒデミさんはどんぶりでウイスキーをいただいた。
アデル「うん、杏とレーズンをはちみつで煮詰めたような甘さ、そしてシングルモルトのはずがなぜかワインも含んでいるような・・・さらにその奥に薪を焚いている里山の香り、いや五右衛門風呂の煙突から出る煙の香りか?フルーツケーキに会いそう!」
アデルは思ったことを食レポした。シゲルはその横で、頷きながら、
シゲル「悪くないスコッチだな。」
と言った。そして、その横で二人の話を聞いて何のお酒かと木の箱を手に取ったヒデミさんが
ヒデミさん「あらこれ、ロイヤル〇ッホナガーセレクテッドリザーブって書いてある。お湯割りが美味しいというやつでは?」
シゲル「そういえばうちの母親ががそういう飲み方してたな。シナモンか何かハーブ系を煮出したお湯で。」
アデル「お湯なら鍋に・・・。」
三人の目の前で鍋のお湯が沸騰していた。
そして二時間後。
アデル「シゲル、あたしたちと同期なの覚えてる?」
シゲル「同期ッて?わははははは!!?」
ヒデミさん「ちょっと!そういえばあなたわたしのことを・・ルークに『幽霊!』って、言ったわよね?」
酔ったヒデミさんがシゲルに絡んだ。
シゲル「幽霊なのぉ?わははははは!!」
どうやら覚えていないようだった。
アデル「あたしのことは、ええーっと、なんだっけ?そうだ!ヒョロヒョロヒョロヒョロ・・・・」
シゲル「ヒョローーーーー?って、わははははは!!」
全員、悪酔いしていた。すでに鍋のお湯は使い切っていた。
シゲル「あっれ?」
シゲルが鍋の蓋を開けるとお湯が無くなっていた。
アデル「ヒョロヒョロ!!ゆるさんぞぉ~もぉおお怒ってるんだからね、あたしはお・ん・な・の・こ!だ、ってえの!こぉぉぉの、、ばぁかちんがっ!!」
そう言うと、アデルはシゲルに一般人には使用禁止の『魔人ハンター気合いビンタ』を入れてしまった!
その瞬間、胡座を組んで座っていたシゲルは
シゲル「ぶぅぉおおっ!!」
と言って鍋の蓋を持ったまま横に吹っ飛んで顔面を引きずるように地面に沈んだ。
ヒデミさん「あでぇるさん、お強いですぅ・・ねぇ。」
アデル「あれれぇ、やぁ~だぁもおぅ・・シゲルぅ~わざと飛んだふりしないでよねぇぇ。あはははは!!」
シゲルは地面から顔を起こすと
シゲル「強っ!何今のぉお!わははははははは!!!」
と言った。
そしてシゲルはそこから起き上がり元の場所に戻ると、アデルの首の後ろから肩に腕を回して乗せた。そしてうんうんと頷きながら、鍋の蓋を戻し、近くに置いてあった自分のデキャンタを取るとアデルのお椀につけて乾杯した。
それを横から見ていたヒデミさんがアデルに乗せたシゲルの腕を取り払って
ヒデミさん「シゲル!お酒!!」早く持ってこい!」
と言った。シゲルは
シゲル「お酒~?後ろだよぉ・・好きなのどうぞぉ?」
と言った。アデルは
アデル「お酒?どこどこ?あっれー、シゲル~お姉さんも飲みたいなぁ~。」
アデルとシゲルはお互いの顔を見ながらうんうんと頷いて
シゲル「みんな待っててね~わははははは!」
結局シゲルが後ろの荷物をごそごそやって出してくれた。
さらに二時間後。
全員、爆睡。
そこへ野獣豚とルークが帰ってきた。野獣豚の子供がしっぽを小刻みに振りながら嬉しそうに出迎えた。
ルーク「お前だけかぁ~。起きて待っててくれたのは。ありがとな!」
そう言うとルークは野獣豚の子供を抱き上げた。そして三人を見た。
三人は薄暗い場所で白目を剝いて寝ていた。そしてあろうことか、お兄さんは白目を剝きながら口を開けて笑っていた。
「兄貴!怖っ!!怖すぎだろっ!!」
夜の帳も降りている。暗がりの恐怖映像。
ルークは気を取り直すと足元を見た。
ルーク「あーあ、まったく全部飲んじゃったの?」
足元には空き瓶が転がっていた。
瓶を片付けていると、ルークはアデルがお腹を全開に出して仰向けで寝ているのに気が付いた。
ルーク「マジかよ、寝相くそ悪いな。あれっ?すげえ!アデル姉さん腹筋割れてんじゃん!」
その時、ルークは衝動にかられた。女子の腹筋が割れているなど、実物を見たのは初めてだった。とても触りたくなった。ルークはそっと手を伸ばした。鼓動が早くなる。しかし、理性が勝った。
ルーク心の声「ダメダメ!」
ルークは頭をくっつけて寝てる女子たちに自分用に持ってきた毛布を掛けてやった。
お兄さんには自分の替えの服をかけた。そしてルーク自身は野獣豚の親子とくっついて寝た。




