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四十一話 汐音への誕生日プレゼント③

汐音の可愛らしさに悶えそうになったとはいえ、汐音へのサプライズは成功したと言っていいだろう。

汐音がプレゼントを気に入ってくれたことに安堵の息が漏れる。

後は、バースデイケーキを食べて貰うだけ。


「柏木、そろそろケーキを切り分けようと思うんだが」

「……ケーキ?」


一瞬、なんのことか分からないと首を傾げかけた汐音だったが、チョコレートケーキの存在を思い出したらしく、バッとケーキに視線を向けた。


「柏木がチョコ好きらしいから、チョコレートケーキにしたんだが、違うケーキのほうが良かったか?」

「……これが良いわ」


黒目がちな目をキラキラと輝かせる汐音の言葉に偽りはないだろう。

ケーキを切り分けるためのナイフを手に戻ると、汐音は未だにケーキと見つめ合いを続けていた。

その様子が餌の前で待てをされる犬に見えて、プレゼントは猫ではなく、犬のぬいぐるみでもよかったかもしれないと頭の片隅で思った。


「とりあえず、八等分に切っていいか?」


ケーキに完全に魅了されている汐音に一応、確認を取ると、心ここにあらずと言った感じで、「……ええ」とだけ返事が返ってきた。


ひとまず、半分に切るかとホールケーキにナイフを当てたところで、ふにょん、と柔らかい感覚が腕を包み込んだ。

次いで、ナイフを握る手も柔らかい感触で包まれる。


汐音が悠希に抱き着くような形で身を寄せていた。

突然の汐音の接近に、驚いたのか心臓がドキリと跳ねた。


「……柏木?」

「矢城君が綺麗に八等分できるか不安だから、手伝うことにしただけよ」

「そ、そうか」


いくら悠希が料理ができないとはいえ、ケーキを八等分にすることぐらいはできる。

……多分。

特に汐音の手を借りるまでもないのだが、真剣な表情で汐音が手伝うという意思を見せてきたので、思わず頷いてしまった。

が、何分、体勢が良くない。

右腕が汐音の豊かな胸に包み込まれているのが特によくない。


他人にあまり関心がないとはいえ、悠希も男だ。

同級生の胸の感触を意識するなと言うのが無理な話だ。


人間、意識しないようにと意識すればするほど、逆に、意識が高まってしまうもので、いつの間にか、悠希の頭の中は汐音の柔らかな胸の事でいっぱいになった。


悠希の考えていることに気づく様子すらなく、ホールケーキを切るシュミレーションを終えた汐音がナイフの位置を調整する。

ほんの少し動いた程度。

それでも、かすかな振動で汐音の胸が波打ち、ふにょん、と柔らかな感触が腕を跳ねた。

ほのかに感じる汐音の体温と甘い香りが脳を激しく揺さぶる。


ただ、ひたすらに心を無にして、やましい感情を追いやろうとしたところで、悠希は気づいた。

汐音としている行為がまるで結婚式で新郎新婦が行う、ケーキ入刀に近いことに。

いや、正確にはケーキ入刀は男性が右側にいるはずなので完璧に同じというわけではないが。


そんなことを考えているうちに、汐音の手の動きに合わせて、ホールケーキは綺麗に八等分にされていた。

汐音の身体が遠のいたことでようやく悠希にも余裕が戻ってくる。

悠希をドキドキさせた張本人は切り分けられたケーキに満足そうに頷いた後、いつの間にか用意している皿にケーキをつぎわけている。


ひょい、と汐音からチョコレートケーキを差し出され、悠希は汐音の方をまじまじと見つめた。


「矢城君?」

「いや、俺にもケーキくれるんだなと思って」

「……当然でしょう、一人でこんなに食べたら太ってしまうもの」


そこまでオシャレに頓着していないように思える汐音もさすがに体重の事は多少、気にしているらしい。

年相応の少女らしいことを言う汐音への認識がまた少しだけ、和らいだ気がした。


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