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幻姫と星空の国  作者: 立花柚月
湖の街
23/49

11

そうこうしているうちに、あっという間に時間が経ち、いよいよこの街を出発する日になった。レヴェンたちはしばらく氷の街に滞在するので、その間このお店は閉めることにしてあるらしい。前からそのことは客などには知らせてあり、そもそも毎年この時期に彼らがいないことはこの街の人のほとんどが知っているそうなので、特に問題はないようだ。

そんな話を思い出しつつ、エリカはかばんの中に全ての荷物を入れた。既にほとんどのものは入れてあったし、そもそも持ち物が少ないので、その作業はすぐに終わってしまった。忘れ物がないかを最後にもう一度確認した後で、エリカは小さなテーブルの上に乗せておいた本を手に取る。それは、最初ここに来た時からずっと借りたままの、星空の国の始まりの本だ。結局、自分が感じた気持ちや違和感の理由は分からなかったが、星術の始まりについて知ることができたので、個人的にはとても嬉しかった。もしかしたらこの話は、自分の力と何か関係があるかもしれない。

「…けど、さすがに借りたものですし、レヴェンさんに返さないといけませんよね」

もしどこかの書店に売っていたら買いたいな、と思いつつエリカは部屋を出て、レヴェンのところへと向かった。しかし、レヴェンの部屋に着いたエリカは目を丸くした。なぜなら、その部屋はたくさんの荷物で埋まっていたからだ。見たこともない形の物体や、用途の分からない品々が並べられている。また、床には幾つもの本の塔ができていた。エリカがどうすればいいのか困っていると、そこにレオもやって来た。どうやら支度ができたことを告げに来たらしいが、彼も部屋の惨状を見てぎょっとした。以前はしっかりと整理整頓されていたはずなのに、まるで泥棒が入った後のように物が散乱している。どこからこれほどの量の荷物が出てきたのだろう、と唖然とした。

すると、二人の気配を感じたのか、荷物の山の間からレヴェンが顔を出した。しかし、その姿はほとんど荷物の山のせいで見えていない。

「…あ、レヴェンさん。…色々と気になることが多いのですが、取りあえずこの本、お返しします。すみません、長い間借りてしまって…。でも、とても興味深かったですよ」

「あー…。その本か。それ、お前にやるよ。どうせ俺はもう読まないし、欲しくなったらそこら辺の本屋に大量に売ってるからな。それに、小さいから荷物の邪魔にはならないはずだ」

そう言うと、再びレヴェンは荷物の山の中に隠れてしまった。がさがさ、何かを漁っているような音が聞こえてくる。なかなか荷物の整理が終わらないようだ。恐らく、そろそろソアラがこちらに来るはずだが…。どうやら、探し物をしているうちにこのような状況になってしまったらしい。しかし、彼が物を動かすたびに床に放り出された品が増えていっているのは気のせいではないだろう。そんな中でエリカがその本をじっと見ていると、レオが言った。

「本人がいいって言っているんだし、貰ってもいいと思う。レヴェンの言う通り、この近くの古本屋でもたくさん売っていた」

「そう…ですね。それなら、頂くことにします。レヴェンさん、ありがとうございます。大切にしますね。…それと、何か手伝いましょうか?」

と、エリカが尋ねたちょうどその時だった。外で準備をしていたはずのソアラが部屋に入ってきて、むっとしたような表情でレヴェンに言った。

「ちょっと、レヴェン!さっさと来てくれない?そうじゃないと、色々困るんだけど。あと、全部の荷物を持って行くわけじゃないんだし、こんなに荷物を広げなくていいでしょう!何やっているのよ、もう…。いつも片付けを手伝わされるこっちの身にもなってよ…」

そう言うと、てきぱきと床に積みあがったものを分別し始めた。どうやらソアラはこういった状況に慣れてしまっているらしい。手際よくいらない物を端に避けていく。その様子を見たエリカたちも、手伝うことにした。そのおかげか、三十分ほどで部屋の半分ほどが片付いた。その間にレヴェンが探していたものは全て見つかったらしい。満足したような表情で袋の口を閉じた。残りの半分はまだ整理されていないが、それはもういいらしい。ソアラが非常に呆れたようにレヴェンを見遣った。

「ごめんね、二人とも。それじゃあ出発しようか。忘れ物はないよね?」

エリカたちがうなずくと、ソアラとレヴェンは二人を旅のための馬車へ案内した。馬車は後ろが荷物のための大きな車になっていて、たくさんの荷物が積まれている。しかし、中にはちゃんと荷物置き場意外にもスペースがあり、そこに座ることができる。また、小さな窓のようになっているところもあり、そこから外の景色が見られる造りになっていた。レオは馬車に見慣れていたのだが、エリカは馬車を見るのが間近で見るのが久しぶりらしく、じっとそれを見ていた。

「わあ…。すごく大きいですね…!私、馬車に乗るのは初めてかもしれないです。どんな感じなんでしょうか?乗り心地とか、すごく気になります!」

そう言って目をきらきらと輝かせていた。珍しくはしゃいでいるエリカの様子に、レオは少しだけ笑う。すると、ソアラが荷台の方に乗るよう二人に言ったので、レオはエリカよりも先に軽々とそこに上がった。そして、上に上がろうとして、乗り方に困っているエリカに手を差し出す。エリカが少し戸惑うと、レオは更にエリカの方へと手を伸ばして言った。

「エリカ、手を貸して。上るの手伝うから」

「わ、分かりました。お願いします……」

エリカはうなずいてレオの手にそっと自分の手を重ねた。すると、レオがぐっと引っ張り、エリカを上まで引き上げた。そのおかげであっという間に乗れた。エリカはお礼を言い、そっと手を離した。しかし、何故か胸がどきどきしている。思わずエリカは胸の辺りに手をあてた。その理由が分からない。謎の感覚に戸惑っていると、ソアラが上がってきて二人に言った。

「それじゃ、出発だよ!もし、盗賊とかに遭っちゃったらその時はよろしくね。例年通りなら、賊が襲ってきてもたぶん大丈夫だと思うんだけどねー…。警戒は怠らないようにしておかないと」

ソアラのその言葉に少し緊張したエリカだったが、これから始まる束の間の旅に思いを巡らせる。きっと、レヴェンやソアラと話せる日数は限られているから…。だから、別れるその日までは、この平穏が崩れないことを祈る。

こうして、四人の氷の街への旅が始まった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その頃、湖の街でエリカに接触した男はエトリセリア王城に戻っていた。反乱軍が押し入ったために壊れてしまった壁の装飾品やガラスが未だに片付けられておらず、透明な破片があちこちに散らばっていた。陽光を反射し、壁のあちこちに透明な輝きを落としている。それらを見つつ主の部屋に向かって歩いていると、不意に声をかけられた。

「…お帰りなさい。意外と早かったですね。フレイア国はどうでした?確かあなたが行ったのは、湖の街…、でしたか」

そこにいたのは、彼の主であり――、この反乱の首謀者である青年だった。今の時間なら、反乱によって崩された制度や、それぞれの土地などを立て直すために動いているはずの彼がここにいることに、男は一瞬ため息をつきたくなった。イオの行動はかなり気まぐれで、そのことをよく分かっていて、その上でいつも振り回されている人物こそがその男だった。彼は少し呆れつつ苦言を呈した。

「イオ様。自ら来ないでくださいよ…。護衛の仕事が増えるじゃないですか…」

「大丈夫ですよ。そもそも、彼らの仕事は主を守ることですし。…それで、どうでしたか?」

楽しそうな表情から一変して、イオの顔は真剣なものへと変わった。――刃のような、鋭い声。時々、その切り替えの早さが恐ろしい…。彼は目的のためならばいくらでも冷酷になれる人間だ。そのことも男は既に知っていた。そして、彼は、イオが最もその動向に注目している人間――、エリカに遭遇したことを報告した。

「そうですか。やはり、彼女はそちらへ…。で、何故ここに連れてこなかったんです?あなたなら簡単に連れてこられそうなのに。もしかして、何か予想外のことでもありました?」

「その通りです。エリカ様は…、レオ・ログナートと共に行動していました」

突然出てきたその名に、イオは一瞬驚いたような表情をした。基本的には何が起こっても動じない彼がこうした感情を見せるのは稀なことだ。しかし、何故か少し笑うとその男に引き続きそちらを追うよう命じ、下がらせる。そして、自分の部屋へと戻った。一人きりになると、イオは、窓から外を――、フレイア国の位置する方向を見つめた。

「まさか、レオが彼女と一緒にいるとは…。予想外ですけど、まあ、納得はできますね。これも、古の星の女神の影響(・・・・・・・)でしょうか?……けど、今回・・も、きっと」

イオはそうつぶやくと窓から離れ、今後どうするかを考え始めた。

イオさんの側近の名前をどのタイミングで出すか、そして、いつ登場人物に載せるか非常に迷っています。そうなると今度は、同じく登場人物紹介のイオさんの説明を書き換えたり、移動したりしなければならないので…。いつかはやらないといけないのですが、どのように変化させるかなど、かなり迷っています。

読んで下さり、ありがとうございました。

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